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失恋したら聖剣と魔剣を手に入れました  作者: 名無しの権兵衛


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発見

 ライとシエルはいよいよ聖国から抜け出そうとしていた。

 遠くに見える関所。そこを越えれば帝国だ。

 しかし、やはり聖女がいなくなったことが影響しているようで関所の守りは固い。恐らく、普段の倍以上の兵士を配置している。これでは、関所を強引に突破するのは不可能だろう。


「どうしますか?」

「う~ん……。迂回するしかないか~」

「ですが、迂回先は大森林です。あそこは一度迷えば二度と出てこられなくなるという噂が……」


 恐ろしいといった表情で語るシエル。ライはシエルが語った森を見詰める。一見すれば何の変哲も無い森だが、帝国の領地にまで続いており、広大な森である。確かに一度迷えば抜け出せないかもしれない。


 だが、迂回路はそこしかない。覚悟を決めなければならない。関所が通れないのなら森を通る以外の選択肢は無かった。


「仕方ない。あっちから行こうか」

「え……」

「もしかして怖い?」

「う……! はい……少し怖いです。もし迷って一生出られなかったらどうしようとか考えちゃいます」

「ま、まあ、いざとなったら俺が空飛んで見るから大丈夫だよ」


 障壁を足場にすればライは空中を移動することが可能だ。ただし、闘気を消費するのであまり使いたくない方法である。

 とはいえ、いざとなれば使わざるを得ない。森で迷って死ぬくらいなら多少闘気を消費してでも生還することが重要だ。


「それなら安心ですね。それにシュナイダーもいますし!」


 もっとも頼りにされてるのはシュナイダーであった。やはり、安心感が違う。ここぞという時に必ず助けてくれるシュナイダーへの信頼感は凄まじい。シエルも心なしかシュナイダーの名前を呼ぶときは声が大きかった。


「ハハハ……」

『まあ、シュナイダーは本当に頼りになるからな』

『マスターと一緒に数々の戦場を潜り抜けたおかげで今では魔族にも怯えないくらい逞しくなりましたからね』


 この旅で成長しているのはライだけではない。相棒のシュナイダーも随分と逞しくなった。出会った頃よりも体は大きくなり筋肉も増えた。恐らく、今のシュナイダーをゼンデスが見たら腰を抜かすだろう。ライに貸した時よりも遥かに変化しているのだから。


 ライとシエルは森へ迂回する為に移動を始める。それと同時にライ達を見張っていた一つの影がどこかへと消えていく。


 ◇◇◇◇


 ライ達を見張っていたのは獣魔部隊の鳥人であった。彼はサイフォスからライ達を捜索するように命じられており、ライ達を見つけたのだ。

 見つけ次第、報告する事になっている。今のライは獣魔部隊でもガレオンかサイフォスしか相手に出来ない為、鳥人は手柄欲しさに欲張ることなく忠実に任務をこなすのであった。


「ガレオン様! 白黒の勇者ライと聖女シエルを発見しました。場所は聖国と帝国の国境沿いの森です!」

「そうか。ご苦労であった。これから俺はカーミラ様に伝えてくる。お前はその間に鷲獅子グリフォンを用意してくれ」

「はっ!」


 鳥人からの報告を受け取ったガレオンはカーミラの元へ向かう。

 サイフォスからライを見つけた際にはカーミラに伝えるよう厳命されていた。カーミラはライに顔を傷つけられており並々ならぬ執着をしている。

 そこでサイフォスはカーミラとライをぶつける作戦を思いついたのだ。


 カーミラが勝っても負けてもどちらでも構わない。たとえ、カーミラが負けても厄介な存在であるライを消す絶好の機会が訪れるのは間違いないのだから。


「すまない。カーミラ様にご報告があるのだが」

「わかりました。少々、お待ちを」


 ガレオンはカーミラが休んでいる部屋の前に辿り着いた。その部屋の扉の前にはカーミラの世話役である吸血鬼のメイドが立っていた。ガレオンはメイドに声を掛けて、カーミラを呼んでもらう事にした。


 メイドが一礼すると部屋の中へ入っていく。


 それから数秒ほど待っていると扉が乱雑に開かれ、興奮しているカーミラが飛び出してきた。


「ガレオン! お主が来たということはライを見つけたのじゃな!」

「はい。今、白黒の勇者ライは聖女シエルと共に聖国と帝国の国境沿いにある森にいるとのことです。恐らくは帝国に向かっているかと」

「そのようなことはどうでもよい! そんな事よりもさっさと妾をライの元まで案内せい!」

「畏まりました。居場所を知っている者をお連れしますので、しばしお待ちを」


 一度ガレオンは鳥人の元へ戻る。彼はガレオンに言われていた通り、鷲獅子を用意しており、いつでも出撃準備が出来るようにしていた。

 ガレオンが来たことを知った鳥人は彼の元まで近寄り、準備が整った事を報告する。


「ガレオン様! 鷲獅子の用意は出来ました。いつでも出撃は可能です!」

「うむ、ご苦労。まずはカーミラ様の元へ戻るぞ。ついて来い」

「はっ!」


 ライを発見した鳥人と一緒にガレオンはカーミラの元へ戻った。


 待ちくたびれていたのかカーミラはガレオンの顔を見ると目を輝かせた。ガレオンはその目を見て少しだけ引いてしまう。まるで恋する乙女だと。


「カーミラ様。連れて参りました。彼がライを発見した者です」

「おお、そうか! 良くやったぞ! 後で褒美を取らせよう! じゃが、その前に妾をライの元まで案内せい!」

「はっ! 承知しました」

「カーミラ様。私も同行いたしますがよろしいですね?」

「構わん。ただし、ライを殺すのは妾じゃ。邪魔をしようものなら分かっておるな?」

「勿論ですとも。私は見ているだけですので」

「ふっ。分かってるならばいい。では、行くぞ!」


 そして、ガレオンとカーミラ、それから案内人の鳥人が飛び立つ。カーミラは今度こそライを殺すために。そして、ガレオンは見届けるために。

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