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情報集め

 ライは宿屋を見つけて荷物を預けた後、情報集めのために街へ出た。大通りを歩き、多くの人に溢れかえっているのを見て驚いたライ。


「(うわっ、改めて見るとすごいな~)」

『そうか? 我としてはまだ少ないと思うが……』

「私もです。もっと大きな都市へ行けばこれの倍はいると思いますよ?』

「(ひえ~~~。都会ってすごいんだな)」

『それよりも情報集めと行こうではないか』

『やはり、定番の酒場ですね!』

「(定番なのか?)」

『ええ。多くの方が利用するのもそうなのですが、マスターのように街の外から来た者が多く集まるのです』

「(なんで? 酒場なんて酒飲むところだろ? そんな所に行くよりも宿屋の方が情報ありそうじゃないか?)」

『もっともな疑問ですね。マスターの言う通り宿屋にも情報は集まります。ですが、酒場は先程もマスターが言ったようにお酒を飲むところです。さて、マスターに質問です。人はお酒を飲むとどうなりますか?』

「(え……? 酔うんじゃないのか?)」

『はい。その通りです。大半の人は酔ってしまうでしょう。すると、どうなりますか?』

「(あ、あ~~~! 口が軽くなるのか!)」

『正解! 勿論、すべての人が酔って秘密を暴露するようなことはないと思いますが』

「(なるほど。だから、酒場は情報が集まりやすいんだな)」


 というわけでライは酒場へ向かうことになった。まだ昼間ではあるが、酒場では何人もの客が吞んでいた。すでに酔っぱらっている者までいる。ライはそういった人達を避けてカウンターへと向かった。ブラドとエルレシオンの指示だ。二人はまず酒場の主人から話を聞くのがいいと言っていたので、ライは言われた通りにした。


「いらっしゃい。見たところ、まだ酒を飲めるような年齢じゃなさそうだが、客は客だ。何を飲む?」

「え~っと、実はこういう店初めてなんだ。だから、おススメで」

「……少し待ってろ」


 そう言って店主は屈むと、ある物を取り出した。それをライに差し出す。


「これは?」

「オレンジジュースだ。飲んでみろ」


 差し出されたのはオレンジジュースだった。確かにこれならば子供でも飲める。だが、ライは一応子供と大人の狭間と呼べるような年齢だ。少し複雑な表情をしている。


「なんだ? 飲まないなら返してもらうが」

「いや、これでいい」


 若干不満そうにしていたライだが、いざ返せと言われるとムキになってしまう。


「それで、こんな場所に何の用があって来たんだ?」


 意外と気さくな人間らしく店主はライに話しかけた。


『主。どうやらこの店主は話しやすい部類の人間だ。今のうちに話を訊くといい』

「(わかった!)」


 店主が話しやすい人間だと分かったブラドは今が絶好の機会だとライを促した。


「あ~、実は訊きたいことがあって……」

「ほう? 言ってみろ。よっぽど変な事じゃなきゃ教えてやるよ」

「じゃあ、訊くけど魔王軍がいる場所知ってる?」

「……坊主。お前どこから来た? いや、いい。その反応見たらわかった。田舎から出てきたばっかだな。さては、お前……連合軍へ志願する気か?」

「えっと……全然分からないんだけど?」

「あ~、えっとだな。まず、お前は今の世界についてどこまで知ってるんだ?」

「確か、遠いところで魔王軍と人類の連合軍が戦ってることくらいは知ってるけど……」

「それだけか~~~」


 これは色々と教えなければいけないと頭を抱える店主。一度話を聞くと言った以上は責任を持って教えねばなるまいと店主はライへ世界の情勢を教えることにした。


「いいか? まずはこの国についてだがどこまで知っている?」

「えっと、アドルフ国王様が治めてるランギルス王国ってことくらいしか知らない」

「つまり、この街も知らないのか?」

「うん。領主様が住んでる大きな街ってことくらいしか知らない」

「まあ、田舎から来たばかりならそれくらいしか知らないか」


 とりあえず、店主はライがどれだけ知っているかを確かめて教えていくことにした。やはり田舎者の為、大したことは知らなかったが、これくらいが普通だろうと店主は嘆いた。


「よし、お前が知りたい魔王軍について教えてやろう。とはいっても、居場所しか知らないけどな。魔王軍はこの街から北の方に行った先にあるオルクス帝国と戦争している。最初はオルクス帝国のみで戦ってたんだが魔王軍が強くて敗戦が続いた。この事を重くみた帝国は周辺諸国に協力を求めたんだ。そして、連合軍が出来たわけだが、ここまではいいな?」

「大体わかった……」

「ホントか? まあいい。話を続けるが、この連合軍には大小様々な国が参加しているが、その中でも一際国力が大きいのは三つ。オルクス帝国、ランギルス王国、リンシア聖国だ。この三つが主軸と言ってもいい」

『どれも聞いた事のない国ばかりだな』

『そうですね。栄枯盛衰というべきでしょうか。私達が知っている国はもう無さそうです』

「ふむふむ……」


 と、いかにも理解しているように頷いているライだが、実は良く分かっていない。小難しいことは覚えられないのだ。だが、ライの代わりにブラドとエルレシオンが覚えてくれているので問題はない。

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