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失恋したら聖剣と魔剣を手に入れました  作者: 名無しの権兵衛


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118/150

同窓会で初恋の相手に出会ったら当時の事を思い出しちゃうアレ

「イテテ……」

「大丈夫ですか、クロイスさん」

「ん? ああ、まあ、聖女様のおかげでな」


 ライに一撃で沈められたクロイスはシエルの手によって復活している。とはいえ、先程のダメージが残っていたらしく、首に手を当てて顔を歪めていた。

 そこへ後輩であるアルが心配そうに声を掛ける。当然、クロイスは威厳を保つためにも強がるが、はっきりって意味はない。ヴィクトリアと同じく啖呵を切っておきながら、手も足も出せずに敗北したのだから威厳も糞もないだろう。


「はあ~……。凹むな~」

「だから、言ったでしょ? 無駄だって」

「ああ、そうだったな。いや、マジで訳わからんくらい強いな。でも、彼でも四天王は倒せなかったんだろ?」

「ええ。あと一歩のところで逃げられたわ……」

「信じられねえな……」

「こっちも万全じゃなかったけど次は逃がさないわ」


 次こそは確実に、そして絶対に倒すのだとアリサの目が語っていた。それはライも同じで、アリサの言葉を聞いて彼は頷いていた。

 そんな二人の目を見てクロイスは、この二人なら本当に世界を救ってしまいそうだと笑った。


「ハハ、お前等ならマジで世界救っちまうかもな」


 アルとの試合も終わり、クロイスも納得して、ようやく解散となるのだが、ライはアルとミクに捕まる。正確に言えばミクがアルを捕まえたのだが、嫌な予感がした彼がライを引き留めたのだ。


 他の勇者達は部屋へと戻っていく中、三人は稽古場に残っていた。いや、よく見ればアリサとシエルの二人も残っている。どうやら、ライに用があるらしい。


 しかし、ライが幼馴染の二人に捕まったので待っていることにしたようだ。


「ねえ、アル~」


 その瞬間、脱兎の如くライは逃げ出そうとした。だが、アルがそれを阻む。逃げ出そうとしたライの服を掴み、逃走を阻止した。そんなアルの額からは冷や汗が流れている。


「馬鹿! なんで止めるんだよ! あれ、どう見ても怒ってる時の雰囲気じゃないか!」

「だからだよ! 何一人で逃げようとしてるんだよ!」

「普通、逃げるだろ! 俺に関係ないし!」

「俺達、親友で幼馴染だろ! 死が二人を別つまで一心同体じゃないか!」

「馬鹿言え! 死ぬなら一人で死んでろ!」

「二人で何盛り上がってるのかな~?」

「ひえッ!?」


 幽鬼のようにゆらりと頭を揺らすミクに二人は揃って怯える。アレは本気で怒っていることを理解している二人はお互いを抱きしめる。


「あわわわわ……!」

「ミ、ミク? そのなんで怒ってるのかな~?」

「へえ~、分からないんだ~」

「えっと……その~……あッ!」

「なんだ!? 思い出したのか! それなら、さっさと謝れよ!」

「いや、えっと……もしかして、俺がライに嫉妬してるって話した時のことかな~?」

「ウフフフ、よく覚えてるね。そうだよ?」


 こてんと可愛らしく首を傾げているが、その瞳は深淵を覗いているかのようにどす黒い。恐らく、アレは見てはいけないものだ。ライは咄嗟に目を逸らしたが、氷のように冷たい視線は突き刺さったままだ。


「そ、それについては言葉の綾というかなんというか! 本心じゃないんだよ! たとえ話さ!」

「ふ~ん? ほんとう~?」

「ああ、本当だよ! 嘘じゃないさ!」

「ねえ~、アル~。アルがライのこと分かるように私もアルの事分かるんだよ? 嫉妬してたのは本当だってことくらい」

「……」


 最早、かける言葉が見つからない。ライは目の前で真っ青になっているアルの顔を見詰めるが、どうすることもできない。とりあえず、離してもらおうかとアルを引き剝がした。


「アル~。ちょ~っと二人っきりでお話しようね~」

「あっあっあっ!!!」


 首根っこを掴まれたアルはミクに引きずられていく。その際、助けを求めるようにライへ必死に手を伸ばし叫んでいたが、身から出た錆である。ライは涙を流して敬礼をした。

「お前のことは忘れない」と一人の馬鹿な幼馴染を思ってライは二人の姿が見えなくなるまで敬礼をしたままだった。


「まあ、なんていうかご愁傷さまって感じかしら」

「そうでしょうか? 彼女がいるのに他の女性の事を話すのが悪いのでは?」

「それもそうね」

「それで、ライさん。彼女がミクさんですよね」

「え、ああ、うん」


 猛烈に嫌な予感がするライは少しずつ後ろへ下がる。それに対抗するように二人がじりじりとライへ詰め寄る。いよいよ逃げ場が無くなったライは壁際まで追い込まれた。


「あ、あのなんでしょうか?」

「そのね、もうライは吹っ切れてると思うんだけど……」

「不安なんです。相手はなんといっても初恋の相手ですから、もう一度恋心が蘇らないかと……」

「それはないから大丈夫だよ」

「言葉だけじゃ足りないわ」

「私達を安心させてほしいんです」

「……それはつまり?」

『まあ、一つしかないな!』

『体に教えるしかありませんね!』

『むしろ、教えられるかもしれんな! ハーッハッハッハ!』


 明日から最前線へ移動するのだ。流石に今日は大人しく寝ていた方がいいだろうとライは逃げ出そうとしたが、回り込まれてしまった。

 引き返して別の方向から逃げ出そうと試みたが、囲まれてしまった。どこにも逃げ場がないライは捕まってしまう。


「あの明日から移動するので今日はお手柔らかにお願いします……」


 観念したライはせめて明日に響かないようにと頼む。勿論、それくらいは二人も分かっている。


「任せなさい」

「任せてください」


 鼻息を荒くして二人はそう言ったが、どう見ても嘘である。今日もギリギリ限界までライを搾るつもりでいた。それこそ、他の女の事など考えられないくらいにしてやるつもりだ。


『……死ぬなよ、主』

『私達では骨が拾えませんからね』


 契約者の身を案じる二人は両手を合わせて祈ることしか出来なかった。

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