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第7話 ワキガ勇者が謁見する

レイに案内されて、いわく付きの屋敷に向かうワキガ勇者一行。


天然温泉付きの我らが拠点。

理想的だ。


ウッキウキで歩くヨシハルではあるが、どうしてもフェロモン脇臭オーラを抑えることが出来ずにいた。

レイとは、常に微妙な距離を確保して歩く。


ヨシハルはウォーレンの様子を見た。

一方のウォーレンは、何ら変わりなく平然と馬を引いて歩いている。


おかしい。

ウォーレンは同志おなかまだ。

それなのに平然としている。


もしかして、フェロモン脇臭オーラは俺だけなのだろうか?

右手を顎にあてて首を傾げるヨシハル。


童貞。


それが、ヨシハルのフェロモン脇臭オーラの原因の一つ。

勇者とはいえ、超イケメンとはいえ、男はエロいものはエロい。


女性が意中の男性と手を繋ぎたいと思えば、その相手の男性はキスがしたくて頭がいっぱい。

女性が意中の相手とキスをしたいと思えば、その相手の男性の頭の中はグッチョグチョである。


もう、仕方がない。

女性がそばにいるだけで意識してしまうのだ。


そんなこんなで、ヨシハルたち一行は目的の屋敷に到着した。

想像していたよりも悪くない。

オドロオドロした廃墟だろうと覚悟していたが、ここから見る限りは至ってまともである。


大きな門と屋敷の間には小さな庭園。

草木がボサボサではあるが、手入れをすれば済むことだ。


屋敷はかなり頑丈そうな西洋風の石造り。

外観は2階建てのシンメトリーであり、大きな窓が幾つもある。


全員で住むのに問題ないどころか、恐らく部屋が余ることは間違いない。


「思っていたよりも良い感じだな。」

「うむ。確かに悪くない。」


仲間たちもホッと胸を撫で下ろしていた。

THE お化け屋敷であろうことを全員が想像していたのである。


「こんな屋敷に庶民が住んでも良いのか? 貴族だけしか住めないとかいう決まりはないのか?」

ヨシハルはレイを見て尋ねた。


「そんな決まりなんてないよ。それにここに住みたいと思う人は誰もいないしね。ずっと売れ残り。」

ニヤリとするレイ。


本当に幽霊は出るのだろうか?


「じゃあ、勇者様には鍵を渡しておくな。」

レイから鍵を3つ受け取るヨシハル。


「合鍵は作る?」

「ああ。人数分頼むよ。」


「じゃあ、鍵を1つ借りておくね。合鍵代はサービスしておいてあげるよ。」

そう言って、ヨシハルに渡した鍵の中から1つ返してもらうレイ。


「じゃあ、これからもよろしくね。うちは裏が本業だから、きっと勇者様のお役にも立てると思うよ。」

「勇者だからな。悪いことをするつもりはない。」


「ハハハッ。そっちのデカブツは義憤のウォーレンだろ? それと同じ。うちも悪いことには加担しない。」

「ウォーレンのことを知っていたのか?」


「そりゃ情報屋だからね。合鍵は明日までに用意しておくから。これからもご贔屓に。」

そう言ってウインクすると、レイは立ち去っていった。


その身のこなしは軽やか。

やはり只者ではない。


ヨシハルたちは、屋敷の入口扉の鍵を開けて中に入った。

入口扉は若干重々しい音をたてて開く。


屋敷の中は壮観であった。

天井が高く、正面には左右に分かれて弧を描く階段が2階へと続いている。


床に敷かれたカーペットは変色して毛羽立っていることから、全部張り替えた方が良さそうだ。


基本は大理石を多用しているのであろう。

華美ではないが、所々で程よく細工が成されている。


ヨシハルが元いた世界では、西洋風の歴史的建造物として価値がありそうな建物である。


家具や調度品はほとんど無かった。

恐らくは、没落貴族が最後に売り払ったのだろう。


ヨシハルたち一行は、屋敷の中を探索して回ることにした。


1階のダイニングルームは社交界が開けるのではないかという広さ。

どの部屋を見ても、一つ一つ丁寧に趣向を凝らして作られている。


長い間、誰も住んでいなかったようで埃が目立つ。

ヨシハルたちは部屋に入るたびに窓を開けて換気をしていった。


何よりもヨシハルが驚いたのは室内の灯り。


それは蝋燭ろうそくの灯りではない。

まるで電気を使っているが如く、明るく室内を灯す石であった。

因みにその灯りは点けたり消したりと自由に出来る。


灯石あかりいしという、この世界では一般的に普及されている石なのだそうだ。

その原理や理屈について尋ねてみても、ウォーレンや仲間たちは答えられない。


この世界では当たり前のことであるようだ。

逆に何でヨシハルは知らないんだ?という顔をされた。


今日の夜にでも、俺が異世界から転移してきたことを皆には説明するとしよう。


屋敷の裏手には大浴場と露天風呂があった。

天然温泉である。


源泉かけ流し状態で温泉が常に湧き出ており、もうもうと湯気が立ち込めている。

なぜか露天風呂だけが和風のしつらい。


目を輝かしたヨシハルとウォーレン。

2階の探索は後回しにして、全員で入浴タイムにすることにした。


ラタの町でフクダンから購入した石鹸で、全身を隈なく洗うヨシハルとウォーレン。

真っ先に洗うのは、顔でも頭でもあそこでもない。


わきだ。


先に身体を洗い終わって、湯船に飛び込んでいく仲間たち。


チラッとその姿を横目で確認したヨシハルとウォーレン。

仲間たちが湯船でくつろぐ姿を確認するやいなや、改めて丁寧に両脇りょうわきを石鹸で洗うのであった。


きちんと二度洗い。

これが絶望の脇臭オーラ持ちの入浴の掟である。


ヨシハルとウォーレンも湯船に浸かった。


「ふう~。最高だな。これは良い買物をしたと思わないか?」

ヨシハルが仲間たちに聞いた。


「これが金貨1000枚は、ちょっと安すぎですぜ。破格すぎですよ。」

首を傾げる仲間たち。


因みにこの世界の通貨は、次の通りとのことだ。

青銅貨10枚 = 銅貨1枚

銅貨10枚 = 銀貨1枚

銀貨10枚 = 金貨1枚

金貨100枚 = 白金貨1枚


庶民が白金貨を目にすることは、かなり珍しいことらしい。


それをヨシハルが元いた世界の通貨価値に照らし合わせるとこんな感じになる。

青銅貨1枚 = 十円

銅貨1枚 = 百円

銀貨1枚 = 千円

金貨1枚 = 壱万円

白金貨1枚 = 百万円


異世界物語のお決まりパターンの基準だとヨシハルは思った。

覚えやすくて助かった。


それにしてもくれないの葉、深紅の奇跡クリムゾンリーフ1枚が200万円か。

そう考えるとエゲツない。

その1枚で猛獣から襲われる危険を回避できると思えば、金持ちからすると安いものなんだろうか?


少しのぼせてしまった仲間たち。

ヨシハルとウォーレンは、俺たちはもう少し浸かってから出るので、先に風呂から出ていいよと促した。


時間差は大事。


風呂上がりの制汗タイムを人に見られないようにする為には、皆との微妙な時間差をつくることが重要である。

こういう細かな点もワキガの努力だ。


「じゃあ、俺は皆の服を洗濯しておきますぜ。旦那方はゆっくりなさってくだせえ。」


ヨシハルとウォーレンは顔を見合わせた。

「ダメーーーーーーーーっ!!!!」


それを全否定するヨシハルとウォーレン。


【俺たちの決め事その1】

 自分の洗濯物は自分で洗濯すること


風呂場にて

早くも定めた

決まりかな


うん、駄作。


天然温泉は本当に気持ちが良い。

夜は露天風呂にもゆっくり入ることにしよう。


風呂から出ると、抜かりなく制汗タイムを終わらせたワキガ勇者とワキガ戦士。


仲間たちに掃除は任せることにして、王宮に向かうことにした。

約束だから仕方ない。


屋敷の2階は、明日にでも探索することにしよう。


王都の街中をのんびりと歩く2人。


街の中は活気に溢れている。

商店だけではなく露店も立ち並び、色々なものが売られているようだ。

食べ物を売っている露店からは旨そうな匂いが漂ってきた。


所々から陽気な音楽が漏れ聞こえてくる。

子供たちがはしゃぎ回る姿も見られ、この街は平和そのものといった雰囲気である。


そもそも、王宮にはどうやって行くのだろうか?

ヨシハルは上空に浮かぶ島を見上げた。


遥か上空に浮かぶあの島に王宮が存在することは聞いている。

どこかで飛空艇に乗らないといけないのだろうか??


「なあウォーレン、王宮にはどうやって行くんだ?」

「我が知るわけないだろう。」


愚問であった。


ヨシハルとウォーレンは、街中を巡回していた若い衛兵をつかまえて尋ねることにした。


怪訝そうな顔でヨシハルとウォーレンを見る若い衛兵。

ヨシハルは、頭に巻いた白い布のターバンを外して勇者としての身分を明かした。


「たっ、大変、失礼いたしました勇者様っ!」

背筋を伸ばすと敬礼して畏まる若い衛兵。


ヨシハルは若い騎士の口を手で塞いだ。

「しーっ!あまり勇者と大声で言わないでね。身バレしたくないから。」


すぐに頭に白い布を巻き直す。

ヨシハルとウォーレンは、若い衛兵に案内されて王宮に向かうことになった。


その道中、目を輝かせてヨシハルをチラチラ見る若い衛兵。

勇者と一緒に歩くことが嬉しいのであろう。


ワキガ勇者だけどね。


若い衛兵に案内されたヨシハルとウォーレンは、ひと際厳重に警備されている場所に辿り着いた。


高い塀で囲まれたその場所の中は、外からは中を見ることが出来ない。

何人もの騎士が立っており、やぐらの上でも監視役が目を光らせている。


若い騎士はその入口に走っていくと、入口に立っている衛兵に声を掛けた。

一言二言会話した後、入口に立っていた衛兵が急いで中に入っていく。


若い衛兵が、小走りでヨシハルとウォーレンの下に戻って来た。

「すぐに確認致しますので、少々お待ち下さいませっ!」


飛空艇が来るのを待たないといけないのかな?

あの塀の向こうは、飛行場のようになっているのだろうか。


そんなことを考えていたヨシハル。

そのヨシハルに横から声を掛けてくる者がいた。


「勇者様ではないか。朝とは服装が違っているので、すぐに気付きませんでしたぞ。」


声を掛けられた方向を見るヨシハル。

朝早くに出会った白髭しろひげの騎士が、馬に乗って近づいてきていた。


ヨシハルに近づくなり、馬から降りて丁寧なお辞儀をする白髭しろひげの騎士。

その身長はウォーレンと同じくらい。

ヨシハルよりも少し高い。


「そちらは、勇者様のお仲間ですかな?」

白髭しろひげの騎士はウォーレンを見て言った。


互いに目を合わせると、見えない火花を散らす白髭しろひげの騎士とウォーレン。


まずい!ウォーレンが義賊だということがバレたのか?

焦りを見せるヨシハル。


白髭しろひげの騎士が両腕の上腕二頭筋を強調するマッスルポーズをとった。

両腕を上げて拳を顔の横で握り、腕と上半身に力を入れるポーズ。

ボディビルのポージングでいうところのフロントダブルバイセプスである。


それを見たウォーレン。


背中の筋肉の広がりを強調するマッスルポーズをとった。

両腕をお腹の前に出して拳を握り、腕と上半身に力を入れるポーズ。

ボディビルのポージングでいうところのフロントラットスプレッドである。


ニヤリと笑う両者。


2人して横から見た胸の厚みを強調するマッスルポーズに移行する。

一度身体を横に向けた状態から腕を前で組み、上半身を捩じって力を入れるポーズ。

ボディビルのポージングでいうところのサイドチェストである。


ああ・・・これ、あれね。

筋肉あるあるのテンプレだね。


ウォーレンが捕まるのではないかと焦った自分がバカだった。

ヨシハルは耳をほじりながら溜息をついた。


「我が名はマトバン。ポルファス王国騎士団の団長である。其方そなたは?」

「我が名はウォーレン。勇者と共に魔王を討伐する戦士である。」


白髭しろひげの騎士マトバンと義憤のワキガ戦士ウォーレンは、固い握手を交わした。

互いを認め合うマッチョの絆がここに生まれたのである。


「して、勇者様はこのような場所で、一体どうされましたかな?」


ヨシハルが答えるよりも早く、ガチガチに畏まった若い衛兵がマトバンに状況の説明を行った。

若干、片言になっている。

どうやら騎士団長のマトバンの前で、若い衛兵は極度に緊張しているようだ。


マトバンが、その白く長い顎鬚を右手で上下に擦る。


「なるほど。勇者様をゲートにお通ししても良いかの確認待ちか。」

「はっ!」


「構わん。儂が勇者様と屈強なる戦士を陛下のところまでご案内する。」

「はっ!」


マトバンの後に続いて塀の中に入ったヨシハルとウォーレン。

塀の中に入ると、マトバンの供回りの騎士たちは、全員がマトバンに敬礼して立ち去って行った。


塀の中はただの広場であった。

中央には大きな魔法陣が描かれている。


その魔法陣の上に立つ3人。


「勇者様は、このゲートを使うのは初めてですかな?」

「??」


なるほどね。

この魔法陣で上空の島に瞬間移動するやつね。


ヨシハルはそう思った。

少しドキドキで、ちょっとワクワクである。


「では、なるべく遠くを見るようにされた方がよろしいですぞ。」

「遠く?」


首を傾げたヨシハルとウォーレン。

マトバンは、その胸元から魔法陣が描かれたペンダントを取り出すと、それに口づけした。


マッチョなジジイがペンダントに口づけする姿。


・・・・・。


すると、3人の身体は光に包まれた。

ふわりと宙に浮かぶ3人。


そして、次の瞬間。

まるで強力な見えない力で引っ張られるかの如く、上空に向かって勢いよく飛んでいく3人。


あががががががっががががっ!

あばばばばばばっばばばばっ!


恐ろしい速さで上空に引っ張られる。

それは、床も囲いも何もない、恐怖の超高速エレベーターであった。


あがががががががががぁぁぁ・・・・ぁ・・ぁ。

あばばばばばばばばばぁぁぁ・・・・ぁ・・ぁ。


そして3人は、瞬く間に上空の島、そこにそびえ立つ王宮の中に到着した。


「はあ、はあ、はあ。これはキツい。」

「ぜえ、ぜえ、ぜえ。これはイカん。」


ヨシハルとウォーレンの様子を見て、ほほ笑みながら声を掛けるマトバン。


「ハッハッハッ、何回かすれば慣れますぞ。ご安心めされい。」


違うのだ。

ヨシハルとウォーレンの意味する言葉には、もう一つ別の意味が含まれている。


【絶望の脇臭オーラレベル】

――――――――――――――

Lv.0 ■■■■□□□□□□ Lv.10

――――――――――――――


マトバンに閑所トイレの場所を聞く2人。


すぐそこにあるそうだ。

良かった。


慌てて閑所トイレに駆け込む2人。


何と、閑所トイレの中は、便器と便器の間に仕切りはあるが完全個室がない。

仕切りには腰の高さまでのスイング扉がついているだけで、屈まなかったら外から丸見え。


なぜだーーーーーーっ!!


ヨシハルとウォーレンは阿吽の呼吸で動く。

交代で見張りに立つことにした。


入口を見張るウォーレンがOKサインを出す。


それを確認してすぐさま上着を脱ぐヨシハル。

もしもの時の為に腰のポシェットに忍ばせておいた小瓶を取り出した。

その中には、純度の高いアルコールを入れ替えてある。


それでまずはわきを拭く。

それを水で洗い流して、アルム石を塗り塗り。


その間、わずか1分足らず。


すぐさま交代して、次はウォーレンの番。

2人の連携力は確実に高まっていたのであった。


何のこっちゃ。

でも、大事。


無事に制汗タイムを終えた2人。


【絶望の脇臭オーラレベル】

――――――――――――――

Lv.0 □□□□□□□□□□ Lv.10

――――――――――――――


「まさかの窮地だったな・・・・。」

「さすがのヨシハルも、この展開は予測できなかったか・・・。」


「ああ。だが、俺たちは乗り切った。」

「今日一番のピンチだったな。」


がっちりと握手を交わす2人。


「お待たせしました。」

そして、しばし待たせてしまったマトバンの下に戻った。


マトバンに案内されたのは、とても豪華な応接室。

ここで少し待機しなければならないそうだ。


今から行くところは謁見の間。

王に謁見する場所である。


その謁見の間では、勇者を迎え入れる為の準備が整えられている。


ウォーレンが持つ両刃の戦斧せんぷは、謁見の間には武器を持ち込むことが許されないとのことで預けさせられた。

ヨシハルのヘクスカリバーは預けるにも預けられない。

呼び出さない限り、普段は手元にないのだから。


因みにマトバンは、腰の鞘にしまった剣を携えたままだ。

王国騎士だけは例外なのであろう。


ふぅ、と息を吐いたヨシハル。


「どうした?」

小声でヨシハルに聞くウォーレン。


「謁見の間に入ったらな、騎士がずら~~っと並ぶ前を通って王様の下まで歩くことになるぞ。」

小声で答えるヨシハル。


「本当か?」

「ああ。きっとそうなる。だからイメージしておくんだ。」


絶望の脇臭オーラ持ちにとって、想定外の緊張はなるべく避けなければならない。

あらかじめ予測できる緊張と不意に訪れる緊張では、レベル上昇の加速度が異なるのだ。


それはもちろん、絶望の脇臭オーラの匂いレベル。

強さのレベルではない。


ヨシハルとウォーレンは、この後すぐに訪れるであろう緊張をイメージして待つことにした。

もてなしに出された紅茶には、2人とも口をつけていない。

余計な水分は汗に変わるから。


コンコンコン。

応接室の扉がノックされた。


準備が整ったようで、謁見の間に案内されるヨシハルとウォーレン。


謁見の間に繋がる大きな扉の前には、その左右に騎士が立っている。

その騎士たちが観音開きに扉を開いた。


パーパパパーパパパーーーッ!


トランペットの音が響く。

紙吹雪でも降り注がれるかのような音だ。


とても高い天井には、豪勢な灯石あかりいしのシャンデリア。

足元には真っ赤なカーペット。

カーペットを挟んで立ち並ぶ騎士と貴族たち。

そして、カーペットのその先には、この距離からでも威厳が感じられる玉座に座った王の姿。


やはり予想通りだ。


マトバンの後に続いてカーペットを歩くヨシハルとウォーレン。

周りから注がれているのは羨望と期待の眼差しである。


玉座の前にはひな壇と呼ばれる階段がある。


その手前でマトバンが片膝をついて頭を下げた。

それにならって同じ仕草をするヨシハルとウォーレン。


「ご苦労。もう良いぞ、マトバン。」

「はっ。」


王様からの言を賜ったマトバンは、そのままの姿勢で深々と一礼すると立ち上がった。

そして、自分が立つべき位置に移動する。


王国騎士団長が立つ位置。

それは王に最も近い最前列である。


「面を上げてくだされ勇者殿。それに戦士殿かな?」


「それでは失礼します。」

「失礼しまふ。」


ウォーレンが噛んだ。


そのままの姿勢で顔を上げたヨシハルとウォーレン。

緊張の謁見タイムのはじまりである。


果たして、ワキガ勇者とワキガ戦士は、この周りを大勢に囲まれた状況から無事に帰ることができるのであろうか。

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