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第7話


「全員が揃ったようじゃな。では入学式を始めよう」


その言葉と共に、ホールの扉が閉じられる。

閉じる前に見えたのは、床に置かれていた担架が浮かんだところで、バグマンの姿も担架を運ぶ人の姿も見えなかった。


「うむ、なにやら入学式前にオイタをした生徒がおったようじゃ。残念だのう」


静まっていたホール内が再び(ざわ)めき出す。

個々は小さな声でも、8学年総勢500人の生徒が話せば声も大きくなる。


「すでに知っておるようだが、今年の新入生にはちょっと特殊な生徒がおる」

「バグマンよ」

「バグマンだよな」

「【勇者の子】」

「そうじゃ。【勇者の子】と呼ばれる()()バグマンじゃ」


生徒たちの小声に同意するように学園長が頷く。


「それでじゃの、この学園ではそ〜んな肩書きは無効じゃ。生徒は誰も変わらず同じ立場じゃでのう」

「学園長〜! だったらアリシア贔屓も禁止ですよ〜」


学園長の言葉に、アリシアが座る席の方からそんな声が上がる。


「う、うむ。もちろんじゃ……」

「前期が終わるまでもたないと思う人、手をあげて〜」

「「「はーい!!!」」」


男女分かれて座る生徒たちが一斉に手をあげる。

新入生たちも遅れて手をあげる。

教師陣が座る席からも全員が手をあげていた。


「こりゃこりゃ、全校生徒じゃないか。……あ、シアまで! ナヌッ、先生たちも一緒の意見なのかね」

「学園長ぉー、だからシアじゃなくてアリシアでしょー!」

「もう間違えてる」

「学園長、前期どころか1日ももたなかったじゃないですか」

「……おじいちゃん、シアには『学園長と呼びなさい』っていったのに」

「「「あはははは!!!」」」


先ほどまで表情を固くしていた生徒たちからも一斉に笑いが起きる。

場を和ませて笑いに変えた女生徒は最上級生。

新入生たちの中にはバグマンに魔法で攻撃されそうになった恐怖を抱えている生徒がいると気付いて咄嗟に動いたのだ。

教師たちはそのような行動に評価をつける。

彼女は卒業後、魔法省に入ることが仮決定している。

そう、卒業できればの話である。


「あー、ゴホン。では、新入生の諸君。これより君たちの脳みそがふかふかなスポンジのように知識を吸い込んでいくことを期待しておる。では前途を祝して……乾杯!!!」


学園長の乾杯にあわせて、各テーブルの上で新入生に向けてクラッカーが鳴らされる。

新入生たちは頭にリボンを被ったままジュースの入ったグラスを傾ける。

のんでものんでも気付いたら追加される炭酸水の入ったピッチャー。

学園長の話の間に長卓にかけられた真っ白なレースのテーブルクロスの中央には様々な料理が大皿に盛られ、事前に調べられたのか好物が取り皿に盛り付けられている。

新入生の驚きは毎年変わることがない。

同じく入学式にこの不思議なパーティーを驚きで迎えた経験をもつ先輩から説明をされ、見たことのない料理は食べ方の説明を受ける。

世界各国から生徒が集まる学園には世界各国の料理が並べられているのだった。


アナキントス学園の入学式はパーティー形式。

全寮制の学園にとって大切なのは、勉強ができるとか魔法が上手(うま)いなどより『寮で生活できるか』が大切だ。

同学年だけでなく上下関係も大切で、良いことも悪いことも先輩から後輩へと伝えられていくものである。

寮生活はいわば時間が決められていて、決められた時間に遅れれば食事は抜きになる。

時間に合わせて生活ができるのであれば寮の個室が与えられ、不安な生徒には大部屋が与えられる。

新入生で6人部屋、2学年から4学年で4人部屋。

5学年から2人部屋となるが、最終学年にあがっても共同生活を望むようであれば逆に「独り立ちが出来ていない」と見られてしまうため、いやでも個室で生活を始めるのだった。


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