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ベルフィリアの襲撃者1

  ベルフィリアのあちこちで炎は巻き起こり、人々の悲鳴がそこかしこから聞こえる。

 俺はその悲鳴を聞き、襲撃者に対して憎悪がふつふつと沸き起こり始めていく。

 あちこちで充満する血の匂いと人の焦げた匂い。通る道には多くの死体があった。

 中には子供の死体まであった。

 あまりの無情な敵の行動に憎しみがわき強くこぶしを握った。


『あなたたちは目的地には騎士団の隊長がいるわ。その人にアリュッセ側は任せてるから指示にしっかり従ってちょうだい』


 目的地に到着した際の行動を示すように頭の中でシリカ姉さんの指示の声が響いた。

 別れる前に施された通話するための魔法術式の効果によるものだとすぐわかった。

 自分たちの目的地はこのさきの『アリュッセ』とベルフィリアの東北側の街区である。

 その目的地に近づくにつれて緊迫した空気が肌身に感じ始める。


「なんだか嫌な感覚がする。キリュー気を付けて」

「うん、わかってるよユキネ。俺もさっきから感じてる」


 肌を突き刺すようなおぞましい気配。

 間違いなくこの先にいる強敵がいる。

 緊迫した心持のつかの間に目の前に一部隊が見えた。

   『アリュッセ』の中央地帯にキリューたちの部隊を預かるリーダーであろう騎士団長が待機していた。

 彼女は緊迫した顔で周囲へと指示を出し、襲い来る敵陣と戦闘していた。

 その光景を見てすぐさまに、俺とユキネも魔法で武器を生成して、援護に入る。

 炎の剣を形成した俺は剣を振り上げて炎の嵐を撃ちだした。

 一気に周囲の敵陣営を数人ばかりなぎ倒す。

 続けて、ユキネが一振りで闇魔法で形成した黒刀を手にして地面に突き刺すと周囲の影がうごめきだして敵陣営の体を切り裂いた。


「援軍の学生とは君たちか」


 長い黒髪が特徴的な騎士団長は援護に突然に入った俺たちを見て即座に理解を示した。


「事態は急を要する。説明をしている暇はない。私についてきてそのまま何かあれば援護をして」


 ざっくりと彼女は指示を出したら、すぐにスピードを出して駆け出した。

 そのまま燃えていない家屋の屋根に飛び乗ってそのまま屋根伝いに飛び跳ねていく。

 多くの騎士が彼女を先頭にして随伴する行動をした。

 慌ててこっちも行動をした。

 彼女はスピードを落とさない。ついていくがやっとなのにさらに周囲に索敵をしなくてはならないときてはつらい。

 索敵をしているとわかる先ほどから感じている嫌な気配に近づいていることに。

 そして――


「とまれ」


 隊長が止まるように促し、その場の全員が足を止めた。

 何かがこすっている音が聞こえる。

 金属をこすり合わせている音に近い。

 徐々に音は近づいて暗い闇の中にその巨体は眼前で姿を見せた。


「オーガか!」


 でかい図体と丸みを帯びた頭部に角を生やした人のような体つきが特徴のモンスター、『オーガ』である。

 オーガは主に人間を主食とし、さらにその巨体で振るう拳と蹴りは一瞬で人の身を吹き飛ばせるほどの威力を誇る危険性の高いモンスターだった。


「全軍散会! 包囲陣を組み、一斉に魔法を放て! 学生二人は私について来い!」


 指示によって騎士団体がオーガを引き付けるようにして残り、キリューたちは慌ててオーガを素通りして別の方向へと向かおうとする隊長についていく。

 隊長の向かう先が読めない。

 だが、その目的地はすぐに言わずとわかった。

 なぜならば、目の前に突然の人影が走り隊長を吹き飛ばしたからだ。


「隊長!」


 ユキネはすぐに気づいていたのか隊長を衝撃から救うようにして受け止めた。

 俺は襲撃者に相対した。


「おや? おややややや? 学生がこぉんなばしょにぃいてなぁにしてるのかなぁ?」


 真っ黒な肌に金髪、顔立ちはそこそこ整っているのにあちこちに目立つ縫い傷がその美貌性に痛々しさを生み出している美女が目の前に立ちふさがった。。

 俺は目の前にいた彼女には恐怖を抱く。

 まるで肉食動物を相手にしているような笑みを見せているからだ。

 ギザギザとしたその歯と表現するには些か間違いのような鋭い牙を見せびらかすようにした大きな笑みを浮かべてこちらの様子を見ている敵の女。


「学生は私の後ろで援護をしろ。奴の相手は私がする」


 隊長がすぐに俺らでは相手にできないと判断を下して傷ついた体を起き上がらせるようにユキネから離れて剣を構えて臨戦態勢をとった。

 ユキネがすぐに心配そうに彼女の肩をつかむ。


「た、隊長、あなたはその傷で相手をする気ですか?」

「この程度の傷かすり傷だ。私はベルフィリアの近衛騎士団第1部隊所属、アスクル・ベルトリアだぞ。この程度どうってことない」


 自分のプライドにかけてなのか、学生の前だから自分がどうにかしないといけないという根性的精神が彼女を突き動かすのか明らかに無理をしているのが伝わった。

 彼女の体はここに来る前からの戦闘でも疲労が蓄積しているのだろうことや先ほどの一撃が大きく応えているのだろうことは明白だ。

 顔にその苦痛がにじみ出ていた。その証拠は体にも見て見えた。

 腹部のあたりに真っ赤な痕跡。先ほどの一撃で受けた傷だろうか。


「ギヒッ!」


 敵はこちらのことなど待つはずがなくすぐに攻撃は仕掛けられてきた。

 隊長がユキネを突き飛ばして、黒肌の女の攻撃を防ぐ。

 その攻撃の仕方に俺は驚いた。

 黒肌の女は全員から電流を迸らせながら、アスクル隊長の剣に嚙みついていた。


「ギヒッ!」


 剣が割れると黒肌の女が猛追しアスクル隊長のこめかみに迫る鋭い手が見えた。

 俺は行動していた。

 持っていた剣から炎を撃ちだしていた。


「ギハッ!」


 それが攻撃の挙動を止める手助けとなり、敵の視線を誘導することにもなった。


「学生のくせに不意打ちとはやってくれるねぇ」


 彼女の頬にわずかな焦げ跡が見えた。

 一瞬だがかすった様子だった。


「学生、心配は無用だといったはずだ! そのまま逃げろ!」


 アスクル隊長は感謝などせず、俺の身を案じてすぐに逃げるように指示を出す。

 当の俺は目の前の相手にロックオンされていて逃げれるとは思えない。

 それにこの状況で逃げるなんてプライドが許さない。


「馬鹿を言わないでください! 俺はもう逃げることはやめたんです! だいたい、隊長さんはその体で何ができるっていうんですか!」

「ごちゃごちゃしゃべってるひまねぇぞぉ学生!」


 敵の攻撃が今度は俺に直接向かい来る。

 俺は注意が一瞬だけアスクル隊長に向いていたばかりに防衛に入るのが遅れるのを察知した。


(まずい!)


 敵の攻撃が見えるのと同時に横からユキネが来るのが見えた。

 俺は声を上げようとするが遅く、目の前で赤い鮮血が舞った。


「ユキネェ!」


次回の掲載の話になりますが、本作品は別作品の合間での掲載を考えての連載になります。だいたいは2週間前後、もしくは3週間明けで掲載です。大変恐縮ではございますがそのようにさせていただかせてください。

申し訳ございません。

本作品を読んでくださった方々様、少しでもこのような拙い文章の作品ではございますが面白いと感じてくださったならブックマークよろしくお願いします

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