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学園への依頼 中編

  俺、キリュー・グレイシアはシリカ姉さんとの空き教室での一件から自分の部屋へ戻ってずっと考え込んでいた。

 シリカ・ライシアは自分には姉で母のような存在だ。

 だからこそ、その一歩を踏み出すことはできない。

 だって、母親とか実の姉のような人に欲情するとか最低ではないか。いくら相手が了承していたとしても自分の中で卑屈な感情がそれを押しとどめさせた。

 人生の中で何度も何度も未来のためだとシリカからの好意を受けてきたがそれでも、興奮できてもそれ以上の先は望んではいけないものだと自分の中で思ってしまう。

 この世界で自分はただ一人しかいない(アンメシア)でも。

 男(アンメシア)(メシア)のことについては昔の本などを読んで知識を得ている。

 愛情の中にある中でも複数の種類。家族愛と友愛とも違うもの。

 本で得た知識であるが、家族関係で昔の人でも禁忌として行うことはしていない。

 今の俺には理解して歯止めができる。

 それがいけないことだって思っているから俺は手を出せない。

 ベットの上でそんな苦悩を思え悶える。

 何度も何度もよみがえるのは彼女の憂いた表情だ。

 もちろん、交わることへの恐怖もある。

 何しろ、文献でしか知らない性の知識など当てになるのかどうかさえもある。

 もしも、その行為で人を死なせてしまうことになったら。

 自分の身に何かあったらと思う恐怖。


「いくら子孫繁栄のためでもやっぱり無理だ。特にシリカさんとはできない」


 シリカだけではない。

 幼馴染のあの3人とさえできない。

 この子供を作るための儀式は未だに経験できていない。

 キスや前戯は達成している。

 あくまでそれも強引な逆レイプ行為で行われたものだったが。

 自分としては気持ちよくもあったが疲労感が半端なかったことは記憶にもよく残っていた。

 そんな結果でしか今まで交わってこなかったから自分が嫌うのはみんな周知の事実。

 そろそろ踏み出さないといけないのかもしれなかった。

 あれから数年は経過して、王国もだいぶ廃れてきて人材不足がさいなまれる。

 優秀な子供が必要であると何度も催促をされていた。

 この学園には配属された理由も自分自信が相手を選ぶ嫁探しの件も兼ねたことが大きい。


「王妃様も勝手なことなんだよ」


 苦悩する自分。唐突に自分がいる今の空き部屋の扉にノックする音が響いた。

 時刻はだいぶ遅く、夜10時を回ったころだ。


「こんな時刻に誰だ?」


 学園の寮生は全員が就寝を促されて外出は禁止されているはず。

 ベットから降りて部屋の玄関先の扉まで歩いて開けた。


「ユキネっ!?」


 扉の前にいたのはユキネだった。

 それも扇情的なキャミソール姿でいたのだ。

 これには度肝を抜かれておもわず後ろへ下がって踏鞴をふみ、ベットへと尻餅をついた。


「だ、大丈夫?」

「な、なんて格好してんの!」

「これはちょっと、いろいろと事情が……」

「事情?」

「それよりも部屋に入れて。こんなところにいたらいつ寮監に見つかるかわからない」

「えっと、あ、うん」


 おもわず彼女を部屋の中にいれた。

 すると、彼女はベットにダイブして「ふすぅうう……んぐ、んぐ」とにおいをかぎはじめる。

 何をしに来たのかわからない。


「ユキネ何しに来たんだ?」

「ハッ……つい、キリューの充満した臭いにつられた……」

「まぁ、いいんだけど……何をしに来たんだよ? こんな時間に俺の部屋にいることバレたら俺もただじゃすまなくなるからなるべく要件済ませて早いとこ部屋から出ていってほしいんだけど」

「ちょっと、冷たいなキリュー。まぁ、いいや」


 ユキネがこちらへ向き直ると自分のを頬に手を添えた。

 突然のことに頬を赤らめる。


「ちょ、ちょっと何!?」

「じっとしてて」


 彼女の顔が近づいてその額にコツンと彼女は自分の額を打ちつけた。

 しばし、緊張して沈黙する。


「ヒアール」


 それは回復の詠唱呪文だ。

 体にだんだんと疲労した身体が癒されていく感じが募っていく。


「ふぅーこんなものか」

「ユキネ俺を気遣って?」

「シリカ様に連れ出されて戻ってきた後から様子が妙だったから気がかりで。思ったんだよね。シリカ様の相手もしていたんじゃないかって。そうしたら、疲れてるだろうなと」

「cありがとう」


 普段からユキネは妙に自分だけを優しく気遣ってくれる。

 他人には妙にあたりは強く煙たい態度をとるくせに。

 そんな彼女が俺は好きだった。

 それはもちろん、幼馴染として。


「それから、キリュー、明日は私とパートナーを組もう」

「パートナー? なんの話?」

「ん? まだ知らない?」


 ユキネは胸元にはさみ仕込んでいた一枚の紙を取り出した。

 どこに隠しているんだとおもわず言いたくなる扇情的な光景に口元を抑えて俺は彼女が手渡した手紙を片手で受け取って確認する。

 そこには『グレイシア皇国王妃殿下よりの緊急依頼案件事項、グレイシア皇国首都、グレイルデン街の警邏任務について。二人一組での警邏となるので即時のツーマンセルを組めるように計画を立てておくこと。警邏開始は明日の夕刻4時より』

 とのこと。つまり、パートナーとはこの警邏のタッグを組んでほしいということ。


「これ、たしかシリカ姉さんが来た理由の任務」


 そういえば、概要を詳しくは聞いていなかったのを思い出す。

 王妃殿下からの任命で推薦人を俺やユキネ、イーシアを希望して同伴教官にアカ姉を希望してきたとしか聞いていなかった。


「そうだよ。シリカ姉さん、概要伝達については私とアカ姉にすべてを押し付けてどこかへ行ってしまった」

「もしかして、部屋に来たのってこれも伝えるため?」

「まぁ、そうなるかな」


 どうやら、彼女の反応を見るにこれはついでであるように見受けられる。

 では、本命は何になるのか。

 それはおおよそ、この「二人一組」のことだ。

 先手を打ちに来たと考えるべきだろう。


「それより、パートナーは私でいいね?」

「まぁ、別に構わないよ」

「よし! パートナーの権利勝ってよかった!」

「え、なにが?」

「なんでもない」


 何か怪しかったが特にパートナーの件を断る理由もない。

 それに実力的にユキネは学園では2番目の実力者。つまり学園では2位の実力を有する。

 ちなみに1位はイーシアで3位は俺である。

 この学園ではグレイシア皇国の王族の連中が独占していて学園では不正行為があるんじゃないかって噂が最初の時期はあったことが懐かしい。

 今ではそんなこともなく3人の実力を全員が認めていた。


「やった! じゃあ、今日は一緒に寝てもいいでしょ」

「えっと、じゃあの意味はよく分からないんだけど」

「いいじゃない、これも二人一組で行動をしていたほうがいざって時に対応が効く。言葉ではなく心で通じ合ってるからこそできるみたいな……うん!」

「……ときどきユキネの言ってる意味がよく分からない」


 もう、さっそくベットに入っているユキネは俺の枕に顔をうずめていた。

 俺は一緒のベットに入るのを抵抗してソファの上で寝ることにする。


「え? どうしてそっちいく! こんなにでかいベットなんだから一緒に寝よ」

「嫌だよ、ユキネだって絶対へんなところ触るし」

「さ、触らない」

「目が泳いでる」

「もう! いいじゃない! 来てよ!」


 ベットから抜け出したユキネが近づいて俺の腕を引いていく。

 抵抗を激しくした俺は足をもつれさせてそのまま倒れた。


「いててっ……」


 手をついて起き上がろうとしたが手に非常に柔らかい極上の弾力を感じた。

 あでやかなユキネの声が聞こえた。


「なに、ここでする? ちょうどいいね。明日の王国で報告もできるかも……」

「うわぁあああ! お、俺はそんなことしないから!」


 慌てて離れたキリューは今しがたたしかに揉んでしまったユキネの胸の感触を実感を感じたようにワキワキと手を動かす。

 すごく柔らかかった。昔はあんなに小さかったのにもう違う。

 それは自分も同じか。


 ―――ドォン


「え?」


 突然に聞こえてくる爆発音に俺もユキネもあわてて外へ出た。

 学園の廊下をに複数の生徒が飛び出して庭先へ向かう。

 学園を取り囲う敷居壁の向こうで立ち昇る黒煙を見た。


「なんですのあれ?」

「いったい何?」


 周囲の生徒たちがざわめいていた。

 そこへ教師であるアカネが現れた。


「みんな、部屋に戻るのだ! 大丈夫。ここに族やモンスターの侵入はありえん。頑丈な結界で守られているので安心して戻れ」


 先生の指示に従って生徒たちは各々に渋りながらも戻っていく。

 俺も指示に従い戻ろうとしたが――


「キリュー・グレイシアとユキネ・グレイス、それからイーシア・シンクレア3名はおるな!」


 突然に名前を呼ばれて俺は手を上げた。


「おります」

「私もここに」

「いるわよ」


 それぞれ3人が手を上げて自らの居場所を示した。

 そのとき3人して顔をあわせた時、ちょうど隣室の扉から出てきていたイーシアの顔つきが険しいものへ変わる。


「なんでユキネとキリューが同じ場所にいる? なんかしてた?」

「な、なんでもないよ、ね、キリュー様」

「う、うん」

「ウソよ! だったら、その衣装は何? あなたさっきのパートナーの権利の勝負の件わすれたわけじゃないでしょうね!? 夜這いはしないって約束じゃない!」

「そんな話は記憶にないな」

「ユキネッ!」


 先生のことをわすれて言い争いを始める。



「3人ともこちらへ来い! 言い争ってる場合じゃないぞ!」


 さすがに怒られた。


「この話はまたあとでさせてもらうから」

「聞く耳など持たない。キリューは私にメロメロだから」

「うぬぼれるのもたいがいにしなさいよユキネッ!」

「ほら、そこの二人私語をもうするでない。今は緊急事態だとわかってるだろう」


 俺は後ろでアカネに怒られながらも続ける二人の喧嘩を傍観しながらため息をつき、この後に待っている任務など深くも考えていなかった。

次回の掲載の話になりますが、本作品は別作品の合間での掲載を考えての連載になります。だいたいは2週間前後、もしくは3週間明けで掲載です。大変恐縮ではございますがそのようにさせていただかせてください。


申し訳ございません。


本作品を読んでくださった方々様、少しでもこのような拙い文章の作品ではございますが面白いと感じてくださったならブックマークよろしくお願いします

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