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ルグリアルスの再起 改変版

「この場から消えなさい、グラフォル! この数を一人で相手にするのはあなたでもできませんわよ!」


 突如として助けに入ったシリカの後ろには複数人の王国騎士団が控えている。

 彼女たちは気迫を放ち抜刀していた。

 その様子を窺うように観察するダークエルフの女とその背後に控える顔のただれた女。


「久方ぶりさね、シリカ・ライシア。噂では生きていると耳にしていたがまさか本当に生きているとはねぇ」

「あなたこそ、あの戦争で死んだと思ってたわよ」


 シリカ姉さんの態度とダークエルフノ女の態度からただならぬ因縁のある空気を僕は肌に感じ取った。

 それは「戦争」という言葉でもはっきりとはわかる。

 過去にこの国で起こった戦争。

 その戦争で多くの人々が死に、そしてシリカ姉さんもその中で愛すべき共や家族を失ったと聞く大きな戦争。

 僕の前にいるダークエルフの女がその関係者。

 それだけの情報をはっきりと認識すると恐怖で足がすくんだ。

 僕はただひたすらに二人の緊迫した空気にあてられて腰を抜かして地べたに座りながら様子を見守ることしかできない。

 悔しくて拳を握り締める。


「というよりもさっきから死人に話をさせないで自分で話したらどうなのかしら? 趣味が悪いわよ」

「くくっ、さすがは世界で数人しかいないほどの大精霊の加護を受けた騎士じゃぁないか」


 僕は衝撃を受ける。

 ずっと僕たちが生きた人間だと思っていたダークエルフの女が死人だとシリカ姉さんが指摘した。

 今まで黙視をしていた背後にいた顔のただれた女が口を開いてシリカ姉さんを褒めたたえると 

 手を振って術を解く行動を行う女。

 ダークエルフの女が糸切れた人形のようにその場に座り込むさまを見せられる。

 あまりにも今までの流れの一部始終は僕自身には怪奇そのものな光景だった。


「グラフォル、そんなの能力でも何でもないわ。あなたと何度となく死闘を繰り広げてるのを忘れたの? おのずと見えるのも当たり前よ、死霊術のグラフォル」

「くくっ、それもそうじゃなぁ~シリカ」


 僕ははっきりと認識した。

 グラフォルと思っていたダークエルフの女はグラフォルではなく、ただの死人であり本当のぐらふぉると思わせるようにされていた人形なのだと。

 本当のグラフォルとはその背後にいる不気味な顔をした女こそ本物であった。

 彼女は因縁の相手を蔑む眼差しで見つめながら毒を吐き続ける。


「最低な屑ね。自分で殺した人をまた使うなんて。しかも、彼女は……」

「ええ、覚えてるじゃなぁーいかい」


 シリカ姉さんはダークエルフの人も知っているような口ぶりで語り、愁いを帯びた目を向けていた。


「あなたはいま一度ここで仕留めるわ」

「それは無理なんじゃなぁーいか」


 瞬間にダークエルフの女が再び動き出した。

 彼女の両手に短剣が一つずつ握られていた。

 暗殺でもするような動きで軽やかに鬼気迫る足取り。

 上から振り下ろされる攻撃を僕は目に焼き付けながら見ることしかできない。

 死を覚悟した。

 死ぬことはなかった。僕たちを守るように騎士隊が動いていた。

 僕を守ったのは一人の赤髪の騎士で僕は彼女をよく知っている。

 彼女は僕の姉のような存在なのだから。


「アカネさんっ!?」

「キリューは早くこの場から離れろ。色々と言いたいことはあるが今はすぐにこの場からユキネとイーシアを連れて逃げるんだ」

「で、でも、逃げるってどこに……」


 僕は逃げる場所を右往左往して迷い込んでしまう。

 城に逃げても敵が来るのではないか。

 町に行けばこいつらの仲間がいるのじゃないかという不安感。

 逃げる場所がないと勝手に思い込んでしまう。


「おい! 子供たちを連れて行け!」


 一人の騎士にアカネさんは命令を出した。


「隊長すみません、私たちどうやら……」


 僕たちを囲うようにして守ってくれていた騎士たちが突然として苦しみだした。

 剣を抜き始めて僕たちに切っ先を向け始める。


「くっ! 闇魔法の傀儡の呪い術っ!」


 アカネさんがん以下に気づいた様子でダークエルフの女を蹴飛ばして僕たちの守備に入ったが一人で3人を守りながら多数を相手にするには彼女にとっても苦難の技。


「アカネッ!」


 瞬時に状況の芳しく無さに気づいたシリカ姉さんの焦りに混じった声が聞こえた。


「おいおい、無視とは余裕じゃなぁーいかね」


 シリカ姉さんも簡単に援護に入れる状況にはいなかった。

 グラフォル本人と相手にしていた。

 彼女のすさまじい風の刃の攻撃に翻弄されている。

 僕はその状況的光景を見て、思わず右手をかざす。

 アカネさんの背中に手をついていた。


「キリュー、バカ何をしているんだ! 今すぐこの場から離れ――」

「僕は、僕はみんな死んでほしくないんだぁあああ!」


 僕の体からは膨大な光のオーラがあふれ出すとその光は手を伝いアカネさんに流れた。


「この馬鹿がっ!」


 アカネさんは受け取った光のオーラに身を任せて剣を大きく振るった。

 襲い掛かってきた騎士たちを薙ぎ払った。

 糸が切れたように騎士たちはその場で静まり返る。

 敵はまだ残っている。

 本命の敵。


「アカネさん上からくる!」

「わかっている!」


 頭上からとびかかるダークエルフの女。

 闇の炎を纏い、手には短剣を構え攻撃を仕掛ける彼女の姿。

 彼女はその標的の行動を予測していたのか手に術式の刻印の光が輝いていた。


「召喚! インフェルノ! 敵を食らえ!」


 アカネの詠唱により、地上より無数の炎の刃が生み出されてダークエルフの女へ向け殺到する。

 刃たちは肌をすべて切裂く。さらに、その刃以外に一体別の個体が存在していた。

 鬣に四足に立つ図体、まるで四足の獣。その体は炎に出来ており獣はダークエルフへ牙を向けてとびかかる。

 ダークエルフの女の首に噛みついた炎の獣は彼女を焼き焦がしていった。


「くっ! あの人形ではだめじゃったか!」


 グラフォルがこちらの状況を把握するとシリカに行っていた攻撃をすぐにやめて撤退行動に切り替える。

 間合いを取って術を行使し始めるがその隙間をシリカ姉さんは与えなかった。


「手が動かない! これは氷じゃなぁーいか!」

「あなたは相変わらず物忘れが激しいわよ! 私の魔法を忘れたの?」

「氷と光っ! くっ!」


 彼女の手は凍結していて魔法の詠唱を放つための印を手が封じられては結べなかった。


「くっ! このっ!」


 何度も凍り付いた手を地面に殴りつけて溶かそうと必死な彼女。

 シリカ姉さんはその隙を逃さず詠唱を始めた。


「天空より舞い降りろ、荒天の刃! セイントフォールダウン!」


 グラフォルに向け空より光の波が降り立った。

 それは光刃だ。ずたずたにグラフォルの体を切裂き、彼女を死へ追いやる。

 だが、グラフォルは未だに動けてその肩を震わせて向かってくる。


「ぐははあっ! ばかじゃなぁーいか! 攻撃で手が空いたよぉ!」


 彼女が逃げるための最後の術を発動しようとした。


「なぜ、指がっ……」


 指には黒い手のようなものがまとわりついていた。

 その黒い手の先を見るとそれは僕のちょうど背後から伸びている影。

 その陰の大本を見るとユキネがにやけた面をしながら手を構えていた。


「あはは、おばさんあたしたちにこんなことしてただで逃がすわけないでしょ、ばーか」

「このがきゃぁああああああああ!」


 再びに彼女へとシリカの二度目の光刃の魔法が放たれ彼女の命の灯は消え去るようにその体は黒炭となってチリと化した。最後は風に吹かれて存在は消えた。


「キリュー!」


 シリカ姉さんが僕へ駆け寄り命のあることを喜ぶように僕を抱きしめた。

 僕はアカネさんに施した魔法の影響が大きくそのあとからは意識がほぼよどむようになていた。

 ぼんやりとした意識の中で微かにシリカ姉さんとアカネさんの会話だけは耳に聞こえた。


「怪我は大丈夫そうですね、ごめんなさい。私が無理に付き合わせたばかりに」

「シリカ姉さん、早いところ現場を片付けておかないとまずいぞ」

「そうよね、キリューもあなたに魔法を施したわけだしね」

「そう、睨まないでくれないか姉さん」


 アカネさんが最後に感慨深く発言する。


「シリカ姉さん、あの女は私の姉を殺したという組織の……」

「ええ。間違いなく彼女ですわ。まさか、彼女が生きていたなんてびっくりよ。殺気を感じてきてみれば……本当に危ないところよ」

「だが、どうやってこのような輩が内部に侵入したのだ?」

「わかりませんね。でも、彼女が見て知ってしまったとなればおのずと例の組織にも知られてしまったと考えるべきよ」

「ルグリアルスか……だが奴らは今まで活動をしていなかったのになぜ急に」

「おおよそ、充電期間だったのだと思うのよ……リーダー、あなたのお姉さんが頑張ったおかげで大打撃を与えましたから」

「そういうことなのか?」


 アカネは神妙な顔つきでうなった。

 この場を鎮圧した立役者の二人の騎士は深刻な顔をしながら銅像を眺めていた。

 それを最後に僕の意識はそこで途切れた。

 この日の出来事はのちに『ルグリアルスの再起』として語られる事件となった。


 それから数年の月日が経過する。

次回の掲載の話になりますが、本作品は別作品の合間での掲載を考えての連載になります。だいたいは2週間前後、もしくは3週間明けで掲載です。大変恐縮ではございますがそのようにさせていただかせてください。




申し訳ございません。




本作品を読んでくださった方々様、少しでもこのような拙い文章の作品ではございますが面白いと感じてくださったならブックマークよろしくお願いします

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