帰宅、そして準備
「ただいま。桜、お前に客だ」
家に帰るとすぐに、妹を呼ぶ浦風。
「兄上、心配しましたよ! こんな騒ぎの中ちっとも連絡くれないなんて!!」
もう一人の妹、紅葉が出てきて説教開始。まあ、あの騒動の後だ。紅葉の怒りはもっともである。
「悪かった! 実は、三宮様と落雷の原因を調べててな。それで、ある程度のめどが立ってから帰ってきたのだが。使者くらい送っとけばよかったよ。すまん」
説教を終わらせるには、すぐに謝るが吉。素早く頭を下げる浦風。
「そうですか。それはともかく、表の車はどうしました?三宮様のお車かと思うのですが」
紅葉、外を見て尋ねる。まあ、たかだか数日前もこの車でやってきたのだ。普通覚えているだろう。
「ああ、三宮様がいらしてる、というか連れてきた。このままじゃ、三宮様が桜と話す機会がなくなってしまうかもしれないから」
「なるほど。兄上は自分のことそっちのけですね」
ため息交じりの紅葉。自分の結婚などお構いなしに見えるのだ。
「弁中将とは会ったのか?」
「お手紙来ました!」
そちらはどうだと問い返す浦風に対しどや顔で懐から手紙を出す紅葉。確かに、浦風よりは自分を大事にしているように見える。
「そうだな。三宮様がお帰りになる前に女四宮様にお手紙を書くとしよう。和歌の手ほどき、頼む」
「了解でーす! それじゃ、私お茶入れてますね」
浦風のお願いを快諾し、テケテケと台所に向かう紅葉。お茶くみは、小さいころからやり慣れているのである。
「......三宮様」
「ああ」
短く会話をして、車から出てきて、屋内に入ってくる三宮。そして、浦風の案内のもと、桜の部屋へと向かった。
「桜、三宮様がいらした。お前と話がしたいそうだ」
浦風、桜の部屋の前で声をかける。
「兄様もご一緒なら、構いませんけど」
奇妙な条件を部屋の中から言う桜。
「頃合い見計らって去るからな、紅葉に和歌の書き方教わって、三宮様にお手紙頼まないといけないんだから」
先ほど取り付けた約束を伝える浦風。桜からの条件は予想外だが、これなら許可が出るはずだ。
「え、ええ。それなら」
しぶしぶ納得する桜。
「ま、しばらくいてくれよ。な、浦風」
浦風の隣で、同じく頼み込んでくる三宮。いつになく表情が強張っている。
はて、なぜ二人はそんなに浦風の仲介を求めるのだろう。
「もしかして、緊張しているのですか?」
浦風、予想したことを聞いてみる。
「あったりまえだ!!!」
赤面して怒鳴る三宮。
「三宮様に会うんですよ!緊張しないわけないじゃないですか!!!」
部屋の中で、桜も怒鳴る。おそらく、彼女も顔が真っ赤なのだろう。
(似た者同士、か)
心の中でそうつぶやく浦風。納得したかのように部屋の戸を開ける。
さて、浦風が紅葉の和歌教室に行けるのはどのくらい先であろうか。
浦風の苦労は絶えません。
里見レイ




