いびつな進展
ついに、右大臣の姫君のもとにたどり着いた浦風と橋立。まず、部屋の前にいる年配の侍女に声をかける。
「椿の君の具合はどうだい?」
挨拶なしで質問する橋立。まだ、気分が落ち着いていない。
「幸い、お怪我はありませんでした。今、姫君に橋立様がいらしたと伝えてまいります」
この侍女は、橋立と椿の関係を応援しているらしい。頼んでもいないのに、椿に話をつけに行ってくれる。
待つこと数分。
「橋立様!」
戸の向こうから、若い女の声がする。浦風は知らないが、椿の君なのだろう。
「お怪我はないと聞きました。ご無事で何よりです、椿の君」
返事をする橋立。やはり彼女が椿である。
「昨日父上に、私たちのことを話しました。父上は、『分かった。何とかしよう』とおっしゃったんです。なのに、なぜ・・・・・・」
泣くような声で、話す椿。ハッとする浦風。
「失礼、椿の君。私は浦風、橋立の従兄です。お尋ねしたいのですが、今日、お父上が東宮様と左大臣様を自宅に招かれたのは、その話をするためでしょうか?」
今まで黙っていたのに突然しゃしゃり出るのは良くないが、これはと思い尋ねる浦風。
「え、ええ。恐らくは」
浦風のことも、侍女から聞いていたのだろうか、なにも驚かずに答える椿。
「お父上は、私の縁談については、何かおっしゃってましたか?」
続けて質問する浦風。
もし、右大臣が浦風と女四宮の結婚を進めていたとすれば、この落雷は浦風には何のメリットもないということになる。
「えーと、そこまでは・・・・・・」
言葉が詰まる椿。まあ、他人の縁談まで気にする余裕はなかっただろう。
「そのことについては、私が存じております」
代わりに答えたのは、先ほどの侍女である。
「右大臣様は、浦風様に姫百合様を嫁がせようとお考えです」
姫百合は、右大臣の三人の娘の中の末っ子である。利発な姫君として知られているが、彼女はまだ十歳の子供。二十一歳の浦風とは、とても釣り合いそうもない。
「私と姫百合殿の年齢差をご承知の上でですか?」
一応、浦風は聞いてみる。第一、十歳ではまだ裳着(女性の成人式)も行っていないのだ。
「はい、右大臣様は、いかなる手段を使っても、浦風様のご一門を陣営に取り組みたいようです」
「恐縮です・・・・・・」
かしこまる浦風。ここで反対意見を出したら、流石に右大臣に申し訳ない。
「貴重な情報、感謝します。それでは、私はこれで失礼します。しばらくは、橋立と水入らずでお過ごしください、椿の君」
そう言って、右大臣の姫君のところを後にする浦風。あとは、橋立さえいれば十分だろう。
浦風には、まだ向かわなければならない所が幾つかあるのだ。
椿の君、ようやく登場です。
本当は、橋立との恋愛シーン増やそうかと思いましたが、まずは事件解決と考え、諦めました。
外伝を書くことになったら、二人の馴れ初めやろうと思います。
里見レイ




