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浦風中将物語  作者: 里見レイ
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天変

 さて、再び謎めいた幼女の案内で寺を出る浦風。


「あるじは、うらかぜさまを、しんじております。どうか、よろしくおねがいします」


 ペコリとお辞儀をする幼女。そしてまた、浦風の返事を待たずに去っていく。


「......不思議な人たち」


 浦風の印象は、この一言に尽きるのだ。味方として頼りになるのかすら分からない。


「まあ、約束は守らないとね」


 明日彼が言いつけ通りに動く理由は、これしかなかった。



 その後の浦風は何の不都合もなく自宅に帰還する。

 命を取られる覚悟まではしていなかったが、あの寺に着いたときに寒気を感じたので呪われるくらいは考えていたのだ。

 結局、具合を悪くすることもなかったのでほっとしている。


「おかえりなさい、兄上。遅かったですね」


 そんな浦風の心情を知らず、呑気に浦風を迎える紅葉。手には、弁中将からの手紙。

 浦風は今日は弁中将には会っていないので、召使いをを使ってのやり取りなのだろう。


「あ、そういや、紅葉。これから弁中将に返事書く?」


 浦風、明日の手間を省く手段を思いつく。


「え、ええ。毎日に三往復はするので、まだ書きますね」


 どうやら、もうすでに浦風経由の手紙のやり取りは割合が少なくなっているらしい。


「ちょうどよかった。最後に一筆、左大臣様への伝言をつけてもらえないか?」


「ええ、構いませんよ。兄上の頼みなら」


 快諾する紅葉。


「すまんな。えーと、内容はな......」


 浦風、紙に書いてある日時と場所を伝えるのだった。



 さてさて、次の日の仕事終了後。


「いったい何の用なのかな? 中・将?」


 左大臣、一応指定の場所に来てくれたものの、明らかにご機嫌斜め。


「すみません。夢のお告げに従った場所に行ったら、こうするようにと書いてあった紙があったものでして......」


 念のため、浦風は黒牡丹のことは話さない。


「ったく、今日は右大臣殿の家で東宮様と三人で宴があるというのに。いつまで居ればよいのかね?」


「えーと、この紙には、『知らせが来るまで』と書いてあります」


「知らせねー。よし、あと少し待っても来なかったら、私は右大臣邸に向かうぞ!!」


「どうぞ......」


 そう答えるしかない浦風。よく見ると、彼が渡された紙にはその後の指示が一切書いてない。


(やっぱり、俺騙されたのかな?)


 そう思って、浦風が肩を落としたその時、『知らせ』が来た。


「左大臣様ー! 一大事でございますー!!」


 この男、左大臣の傍にいつもいる雑用係である。


「なんだ?」


 左大臣、一大事と言われても眉一つ動かさない。肝が据わっているのか、他人のことはどうでもいいのか。それともただ鈍感なだけなのか。


「右大臣邸に雷が落ちました!!! 東宮様と右大臣様が重傷とのこと!!!」


「な!!!」


「え!!!」


 大いに驚く左大臣と浦風。

 もし、左大臣が浦風に呼ばれていなければ、左大臣もただでは済まなかっただろう。


「お主には、感謝しなければならんようだな」


 そう言って、左大臣は走って行ってしまった。


「おいおい、いくら何でもそこまでは......」


 黒牡丹が雷を落としたと考えるのが自然だが、それを信じたくない浦風だった。

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