表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浦風中将物語  作者: 里見レイ
13/28

対面

 こうして、長い夜を終えた浦風。布団にもぐるとすぐに眠りにつくことができ、次の日の睡眠不足はほとんどなかった。

 日中の仕事も滞りなく終わり、今日も元気に残業なし。

 近衛府を後にして、とりあえず宮中をうろうろする浦風。こうしていれば、向こうのほうから声をかけてくることが多いのだ。

 しかし。


「おかしいな? 今日は探しても探しても見つからないぞ......」


 探しているのは権中納言、頼みたいことがあるのだが、今回はうまくいってない。


「おや浦風殿、どうされました?」


 ここにきて、後ろからひょこっと現れたのはお目当ての権中納言......の父の左大臣。登場の仕方は息子そっくりである。


「これは、左大臣様。実はご子息の権中納言殿を探しているのですが......」


 彼なら知っているだろうと思い、尋ねてみる浦風。


「ああ。そういえば、今日は会議以来一度も見かけておりませんなあ。会議が終わるや、すぐにどっかに行ってしまって」


 なんと、権中納言はもう帰ってしまったのだろうか。口癖のように「妻より宮中。実家より宮中」と言っている権中納言にしてはなかなか珍しいことである。


「ありがとうございます。では、宮中の外を探してみますので、私はこれにて」


 貴重な情報に礼を言い、すぐに出口に向かう浦風。


「あ、浦風殿!」


 そこを呼び止める左大臣。


「はい、何でございましょう?」


 仕方なく足を止め、振り向く浦風。


「貴殿は、弁中将と妹君の縁談をどう思われます?」


 突如、もう一人の息子の結婚話を持ち出す左大臣。


「どうって、本人たちが望んでいれば別によろしいのでは?」


 この縁談を妨害している張本人が何を言うのかと思う浦風。とりあえず、一般論を述べる。


「はは、相変わらず合理的ですなあ」


 笑い声を出す左大臣。しかし、目は笑っていない。


「しかしですな、この縁談がまとまると、貴殿の力が我が左大臣家の力添えにより大きくなる。ともなれば、貴殿が我らの権威を脅かす存在になるのは時間の問題になる」


 どうやら、左大臣は浦風が力を持つのを望んでいないらしい。


「私が左大臣家を上回ることなどあり得ませぬ。買い被りです」


 そんなこと、左大臣が死んでも不可能だろう。浦風は本気でそう考えている。彼が権中納言にかなうとは思っていないのだ。


「ま、貴殿がそう思うのも無理はない。しかしですな......」


 そう言って、浦風に近寄る左大臣。


「貴様が我が息子と同格だということだけで私は虫唾が走るのだよ!」


 浦風の耳元でそう力強く罵り、左大臣はそのまま去っていった。


(あなたが私と同世代の人間だったら、私はあなたに出世競争で負けることなどないでしょうけど!)


 心の中でそう返事をする浦風。

 左大臣は、摂関家の嫡流出身である。しかし、他に取り柄は一切ない、うぬぼれ貴族の典型でもある。

 政治能力においても、彼は右大臣の足元にも及ばない。それを浦風は知っている。


(とにかく、権中納言殿と橋立と会議だ。俺の考える作戦に協力してくれれば、万事うまくいく)


 そう思い、左大臣の言葉を脳内から消去する浦風。彼の力は琴の腕だけではないことは、こういう時に証明されるのだ。

左大臣の性格は、今後登場予定の娘、大君に色濃く受け継がれています。弁中将は、そこまででもありません。彼は、母似です。

里見レイ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ