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浦風中将物語  作者: 里見レイ
12/28

決起の夜

 夜もだいぶ遅いので、橋立を自宅に泊めることにした浦風。

 深夜のハイな気分も抜けて冷静になるや否やてきぱきと準備を進め、自分も寝ようと自室へ向かう。

 しかし、天は彼をまだ眠らせてくれなかった。


「兄様」


「兄上」


 浦風の自室の目の前に、二人の妹、桜と紅葉が立っている。その目つきは真剣そのものだ。


「なんだ?お前らそろって眠れないのか?」


 睡魔は浦風に適切な思考を与えてくれない。


「一つお聞きしたいことがあります」


 と桜。


「ごまかさないでお答えください」


 と紅葉。


「なんの、話だい?」


 明日、睡眠不足になる覚悟を決め、話を聞く気になる浦風。二人がここまで真剣に、そして一緒に質問することなど、今まで一度もなかったからだ。


「兄様は......」


「兄上は......」


『女四宮様をお慕いしていらっしゃるのですか?』


 夜の風は、突如その勢いを強めた。



「......お前らに話したことはなかったはずだ。なぜ分かった?」


 血液が沸騰しそうなのを抑え、できるだけ抑えた声で答える浦風。


「簡単な話ですよ」


 と桜。話を続ける。


「兄様が、何やら三宮様関連でお悩みなのは一目瞭然ですし」


「兄上が恋に悩んでいるのも一目瞭然!」


 紅葉が続ける。


「さらに、先ほどの橋立殿との話、帝の御意向が入っているにも関わらず兄様は橋立殿と女四宮様の縁談をなくそうとしている」


「もちろん、橋立殿のためでもあるが、兄上自身のためのような必死ぶり」


「この話に三宮様が絡んでいることを踏まえると......」


「三宮様の妹君、女四宮様に恋してるっという結論に至るわけです」


 淡々と推理を述べる桜と紅葉。そう、先ほど浦風と橋立の盛り上がりに聞き耳を立てていたのはこの二人だったのだ。


「むむむ、反論の余地なし......」


 浦風、打つ手なしと崩れ落ちる。

 秘かにしていた恋愛感情を、こうも簡単に見抜かれてしまっては兄としての威厳がない。


「で、これからどうするおつもりです?」


 また質問をする桜。


「どうって、何をだ?」


 浦風、まだ理解ができていない。


「女四宮様を嫁にしようと頑張るのですか?」


 と紅葉。それを聞いてどうする気なのだろう。


「できれば、そうしたいのだが......」


 そう答える浦風。ここで嘘をついてもしょうがないだろう。


「覚悟は、おありですか?」


 続けて問う桜。隣で紅葉もじっと見つめている。


「......ある」


 どう答えればいいか分からないので、正直に言う浦風。

 それを聞き、顔を見合わせる桜と紅葉。


『なら、私たちが実現に協力させて頂きます』


 力強く答える二人。


「兄様のため」


「全力を尽くさせていただきます」


 静かだが、しっかりと発言する二人に、浦風は思わず顔を上げる。


「いいのか?」


 まだ二人の縁談もまとまっていないのだ。自分が先に身を固めていいのかと戸惑う浦風。


「兄様がいるから、今の私たちがいる」


「今こそ、その恩にお応えいたします」


「いや、しかしなあ......」


「年齢的に兄様が優先ですって」


「女三宮様が一番結婚において大変そうですしね」


 二人は軽く笑っている。浦風の不器用ぶりを見てのことではあるが、それは愛情の証明でもある。


「そうか......ありがとう」


 そう言って立ち上がる浦風、そのまま二人をそっと抱きしめる。ここまで言われて断ることは浦風には絶対にできない。


「ありがとう......」


 浦風は、これしか言えなかったが、桜と紅葉には、これで十分伝わった。

 さあ、物語が、動き出す。


ふう、ようやく次の日になります。

里見レイ

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