第二波
戦いを再開してから、三十分ほど経っただろうか。
流石に長時間戦闘をしているので、疲れが体にも出始めていた。
「トワ、危ない!!」
疲れによって、後ろからの攻撃に気づけずにミアに助けてもらう。
コマチも魔力が切れかけている。
「よし、ここで一旦引こう」
安全地帯まで下がることにする。
周りを見ていると、だいぶ数も減ってきているようだ。
これで俺達が出なくてもだいぶ楽になっただろう。
安全地帯に戻るとデックさんもちょうど戻ったようで、ばったりと会った。
「トワ達か、お前らは俺達を信じて入口で待ってくれたら良かったんだが。まあ、お前達が来てくれなかったら、被害はより多かっただろう、そこは感謝する」
そう言って、頭を下げる。
勝手に出てきたことを謝り、今の戦況はどうなっているのかを聞く。
デックが言うには、デック率いるヘカトン達の被害は全部で100体と少しぐらいだという。それに比べて五長老が率いるヘカトンの損害は30体ほど、やはり戦闘経験が豊富なあちらの方が一人一人の戦闘能力が高いのだろう。
そして、もう少しで確認できた銀の魔物達は殲滅できるらしい。
「後はお前達が出なくても大丈夫だろう、後は任せてくれ」
デックさんはそう言い、指揮をしに戻った。
「これで安心なのでしょうか、何だかこの魔物達だけじゃない気がします」
「私もそう思う」
「確かにな」
ミアとコマチが言うとおり、これだけじゃないと本能がつぶやいている。
間違いなくこの銀の魔物達は人工物だろう。
それならこの行動をしたのには大きな狙いがあるはず。
それが今は分からないが、その狙いは阻止しなくてはいけないことは分かる。
『トワ、この銀の魔物達はドワーフ達が乗っているヘカトンと似た魔力回路を持ってるよ』
「本当か!?」
『間違いないよ』
確かにこのような物を作れそうなのはドワーフぐらいだが、自分の国を攻めるのはどういことなのだろうか。
キリンが教えてくれたことを、指揮を執っているデックさんに伝えに行く。
「やはり、私達の方でも残骸を回収し確認中だったのだが、報告ではトワと同じことを言っている」
「じゃあ、やっぱり」
「我らドワーフが関わっているのだろうな、それも恐ろしいほどの技術の持ち主だ」
未だに自動的に動く機構を組むことはできないそうだ。
解体していたチームは興味深く、解明に夢中になっているらしい。
緊急時だというのに、とデックさんは呆れていた。
「でもま、これで――――」
「大変です。銀の魔物がまた現れました」
「なんだと!?次はどこから現れた」
「正面です。それも今までとは違い――――」
と報告に来たドワーフが言葉を続けようとした言葉が止まってしまう。
一つの塊が俺達のそばに落ちてきた。
それは鉄の塊で、見覚えがある。
「くそっ」
それは前線で戦っていたヘカトンだった。
曲げられ丸い玉の状態となっている。コックピットの中に入っているドワーフは助からないだろう。
コックピットから血が流れていた。
「もう死んでる」
コマチが言ったとおり、すでに魔力反応を感じない。
そして、それを成した張本人である銀の魔物――サイクロプス型がその頭をこちらへと向けた。
ぎょろりと大きな目玉は俺達を見ている。
手にはもう一体丸められたヘカトンを握っていた。
「くそっ、あいつ遊んでやがる」
今も様々な攻撃を受けているが、応えている様子がない。
ただうっとおしげに手を振れば避けきれなかったヘカトンが一体吹き飛ばされ、足を振れば前にいたヘカトンが蹴られ潰れる。
そのサイクロプスが2体、その他にも飛竜型が3体、マンティコア型が2体確認されていた。
確認されただけでもやばい。
実際の魔物よりもつよい銀の魔物は、元が強いサイクロプス達の強化版だ。
数は少ないが、これは決死の覚悟で挑まないといけないかもしれない。
「俺は出るぞ、あのくそ野郎を殺してやる」
デックはすぐさま自分のヘカトンに乗り、戦場へと戻って行く。
俺達はまだ魔力も体力も十分に回復していない。
このまま出て行ってもすぐにやられてしまうだろう。
「どうする、トワ?」
「このままではドワーフ達が」
「分かってる。こいつらは束になって勝てるような相手じゃない。だが、もう少し休まないと次は俺達がやられてしまう。ここは回復を待とう」
確実に時が経つにつれ、急速にヘカトンの数が減っていくだろう。
だが、俺はミアとコマチのリーダーだ、苦渋の決断だがここは仲間達を選らばしてもらう。
ヘカトンが壊れていく音が聞こえる。
唇を強く噛みながら、俺はそれでも休息を取る。そして、一分でも一秒でも早く戦いに戻るのだ。
ドワーフ達と第二波との戦いが始まった。
デック率いるドワーフ達と第二波との戦いが始まった時、五長老の方でもその第二波が来ていた。
戦闘で慣れていると言っても、この第二波で現れた魔物達の強さは規格外だ。
精鋭部隊のヘカトンが一体、また一体と削られていく。
「おいおい、これは無理なんじゃないかのう」
「弱音を吐くんじゃねぇ、それでも同じ五長老かよ。まだ俺は行けるぜ」
五長老全員が戦闘に参加して、やっとサイコロプス型を1体倒すことに成功した。
だが、続々と同じサイコロプス型に加え、マンティコア型、飛竜型、ゴーレム型が迫ってくる。
一体一体が強い上に、少し連携が取れている節があった。
これはまずいのう。
一人の五長老がそっとつぶやく。
その声は周りの精鋭部隊には聞こえなかった。
「どうしますか、長老様」
「もうぎりぎりです、このままだとじり貧です」
「まあ、待て」
ここは一旦引くべきか、いやもう我らに引く場所などない。
すぐ後ろにはドヴェルグタウンへと繋がる道がある。
この道を通ればすぐにドヴェルグタウンにたどり着いてしまうだろう。
あれを出すしかないのだろうか。
「五長老の皆よ、聞いておるか?」
「なんだ?」
「なんですか?」
「何?」
「どうしたんだ?」
戦闘をしながらでも、彼らは応答してくれた。
そこで一つ提案をする。
「儂はもう出すしかないと思っておる」
「?……まさか、あれを出すのか!?」
「おい、まだ完成してないんだぞ、それにそれを出すっつうことはここら一体が焼け野原になっちまうかもしれねぇぞ」
「でも、それしかないかもしれない」
「俺もそう思うなぁ」
儂ら五長老が持つ最終兵器を出す。
それは五長老の一人が言ったとおり、ここら一体が焼け野原になってしまうだろう。
それに一回使ったら整備などで半年ぐらい使えなくなる。
そのデメリットと仲間の命を考えたら、そのデメリットを受け入れるべきだろうと思う。
「これ以上被害を出すわけにもいかない、分かってくれ」
ヘカトンの中で頭を下げる。
他の五長老達は悩んでいる様子だった。
しかし、それは一瞬のこと。
「そうだな、やろうではないか」
「我ら五長老は先生の信徒を導くために存在する。その信徒を守れずしてどうするか」
「やろう」
「まあ、あれは対エルフ用だったんだがな、仕方ないか」
決まればすぐに行動を開始する。
五長老となって名を捨てた我らの望みはこんなところでは終わらない。
この戦いを終え、ドワーフのための世界とするために、先生の教えを守りドワーフの楽園を作るのだ。
「用意はもうすぐでできます」
用意をすぐに終わらせるように伝え、一人でも被害を減らすよう銀の魔物達と対峙する。
ここが正念場だ。
「舐めるなよ。クソ共が」




