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フリジア

 目が覚めると、俺は牢屋の中にいた。

 辺りは暗くじめじめとしているし、この部屋は独房のようで周りには誰もいない。


 「ああ、なんでこんなところに?」


 固いベッドから起き上がると、頭がガンガンと痛みだした。

 この痛みは知っている。魔力欠乏の時と一緒だ。


 「一体、何だってんだ……」


 昨日の記憶が曖昧でどうしてこうなってしまったのか思い出せない。

 頭が痛むので、元のベッドに転がる。

 ドワーフのリーダー――フリジアは思い出せない昨日の記憶ではなく、ここをどうにか脱出できないか考え始めた。

 彼女の良いところである切り替えの早さが発揮される。

 分からないものを考えてもしょうがないし、ここは罪人が収容される牢屋で間違いない。

 俺も前に一回入ったことがあるため、見間違うことはないだろう。

 前の頃もここを脱出できるかどうか試してみたが、この牢屋がなかなか堅牢で壊すことはほぼ不可能だ。

 そして、ここは居住区より更に下にあるため、逃げ道は上に行くしかない。


 「やっぱ、難しいかぁ」


 どう考えても脱出は難しい。

 せめて魔法が使えたら脱出できるのだが。

 と、自分の腕を見ると、そこには何も嵌められていなかった。

 あの魔法を封じる手枷が付いていない。


 「あ?なんで付いていないんだ?まあいいや、何かの手違いだろ」


 なら話は簡単だ。

 こんな牢、俺の力で溶かしてやる。

 いつも鉄など鉱石を溶かしているように魔法を唱えた。

 だが――――。


 「なんで使えないんだ!!」


 何度も使おうとするが、魔力が霧散させられて魔法が放てない。

 ベッドから飛び起き、痛む頭を抑えながら牢に近づいた。

 溶けた様子もなく、やはり魔法は発動していない。

 おかしい。

 それから何度も魔法を発動させようとしたのだが、全て不発。

 頭痛がひどくなってきた。


 「あああ、だめだ。魔法が使えない」


 なぜ使えないのか考えていたら、首に違和感があることに気づく。

 首のところを触ったら布みたいな物が巻き付いている。

 除けようとしてもびくともしない。


 「まさか、これのせいか!?」


 前と違っているところといえば、これ以外あり得ない。

 となると、これが魔法の発生を妨害しているということになる。

 魔法発動を封じられるバッドステータスをかけられている可能性もあるが、明らかにこの首についているやつが怪しい。

 それから何度か引っ張たり、外せそうなところが無いか探したが外すのは無理だった。

 そうやって時間が経っていく中、フリジアの頭にふと昨日の記憶が舞い込んだ。

 そして、はっきりとした記憶が頭の中を走る。


 「ああ、また体が熱くなって気を失ったのか」


 前この牢屋に入った時もそうだった。

 相手に怒りを感じ、体がかっかと火照り始めたときだ。

 力が湧いてきて、その力が体を満たし始め、そしてその力の濁流に抗えず意識を失ってしまう。

 いつもそこからの記憶がない。

 だが、そうなる前の記憶は戻った。

 確か外から来た奴らと戦っていたのだっけか。

 その中には忌々しきエルフもいて、なんでかそれを代表は受け入れていたのが許せなかった。

 ここにそいつらを連れてきた奴もだ、誰だか知らないが許さない。

 エルフは俺達の敵なのだ。


 「たぶんだが、暴走状態の俺を倒せるほどだ。俺の仲間達も牢屋に入っているんだろうな」


 俺を慕ってくれる仲間達だ。

 今回の件で上層部の連中が怒って、俺達には罰が下されるだろう。

 あいつらだけは守ってやらなくてはな。

 まあ、その前に俺がこれからどなるのかが分からないが。


 「おい、誰かいねぇのか」


 確か代表側にスパイが何人か紛れ込んでいたはずだ。

 そいつに連絡を取れたなら、ここから出られることもでき、かつ俺をこの状態にした奴を殺すこともできる。

 何度か呼んでいると、遠くで扉が開く音がしてその後に足音が聞こえる。

 看守が来たのだろうか。

 薄暗いなか、その足音は俺の牢屋の前に止まった。


 「フリジア、お前がフリジアだな」

 「おう、まさか一発で会えたでいいのか?」

 「お前が思っているとおりだ。今回お前達の勝手な行動に長老がお怒りだ」

 「そりゃそうだろうな。だが、中にはエルフがいた、俺達の行動は正しいはずだが?」

 「そうだ。だから、今お前達の組の処罰をどうするか決めている。それまでお前達は牢の中だ」

 「そうかよ」


 どうも助けてもらえないようだ。

 看守にも俺達の仲間が混ざっていたことがいい方向に転がるのか、それとも悪い方向に転がるのかはこれから長老たちの話し合いで決まるだろう。

 もし、俺達を処分するという決定がでれば、俺達はこの牢で身動きが取れないまま殺される。

 そして、目の前にいる彼が言うには死刑が濃厚らしい。

 これは逃げた方がいいかもしれねぇ。


 「話は以上だ。俺は職務に戻る」


 そう言って彼は元来た扉へ戻って行った。

 俺達の主である5人の長老、先生に直接教えを解かれた彼らは容赦がない。

 いらないと決めたら、すぐさま行動に移すだろう。

 俺は違う看守となった際にアクションを起こすことに決めた。










 「さあ、彼らの処遇を決めようか」


 フリジアが牢屋からの脱出を画策している時、ドヴェルグタウンの中心街から離れた地下空間で話し合いが行われていた。

 円卓に座った五人のドワーフは逞しいひげを蓄えており、威厳がある。

 彼らは部下のドワーフ達に五長老と呼ばれていた。

 先生から直接に教えを説いてもらい、エルフと戦って生き残った者達だ。


 「若い衆が先走った件だな、勝手に行動されたら困る」


 一人が苛立たし気に声を出した。

 それに対し、もう一人同調する。


 「儂は彼らは不問でいいと思うがの、外からの客人にはエルフも居たというではないか。そいつを許せん気持ちは良く分かる」

 「ふん、なら失敗したことを水に流せと」

 「そうとは言わん」

 「なら、どうする。牢屋から助けてみろ、もしかしたら芋づる式に我らがばれる可能性もあるぞ」

 「まあまあ、では意見が分かれたため多数決としよう」


 彼ら五長老は全員が同じ位だ。

 そのため、意見が分かれた時は多数決を取る。

 最初に発言した苛立っていた長老は厳重処罰に、もう一人それに賛同した。

 それとは逆にもう一度チャンスを与えるに手を上げる長老が一人。

 それに賛成する長老が一人と、意見が4人で別れてしまった。

 次の長老でこの議案の決定が決まる。


 「では、儂はこちらにしようかの」


 最後の一人が賛成したのは、厳重処罰だった。

 これで3対2で厳重処罰ということが決定する。

 そして、これからその厳重処罰の内容を決めていく。


 「死刑じゃ」

 「全て死刑しかなかろう」

 「ふむ、先ほど影のほうから情報が入ったんじゃが、どうもフリジアは弱体化しておるようじゃぞ」

 「もう使えないということか。いらんな」


 影とは潜入中の部下のことを指す。

 特にこと話に出てきた影は、先ほどフリジアに接触した看守の男だった。

 魔道具を使い、通信でフリジアの状態を報告したのだ。

 首についたチョーカーのことも含め報告し、今回外からの来客者に関しても注意するように言伝が来ている。


 「なら、全員死刑で良いか?」

 「いやそれはもったいない、一人生かして話を聞こうじゃないか。その後処分すればよい」

 「それで良いな。皆も異議はないな」


 頷く。

 異論はないようだ。

 一人牢屋から苦し、それ以外は口封じのために処分。

 では、誰を生かせるか。


 「その首に巻かれた装備も見たいしの。フリジアで良かろう」

 「それもそうじゃな」


 彼らはエルフとの戦闘を優先し、並みのドワーフよりも鍛冶に関わっていないが、それでもその装備は物作りの種族であるドワーフとして本能的に気になった。

 話も終わり、長老達は解散する。

 長老達は全員自分の部屋へと戻り、ヘカトンを整備する。長年付き合った相棒だ。


 「少し、荒れるかのう」


 今は外のエルフではなく、内にいるエルフを処分するため全力を尽くす。

 どのようなことになろうとも、先生の教えを守るため。



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