リーダー撃破
若者ドワーフのリーダーの暴走はより激しさを増す。
そして、本人自体その力を扱え切れていないようだ。
「ああああああ」
絶叫しながら、無茶苦茶な攻撃を繰り返す。
狙いは近くにいる俺達で、恐ろしいほどの速さを持って刀を振り回している。
だが、バーサク状態となっているためかその剣筋は単純なので、今はまだ避けられていた。
「ふれ~ふれ~」
後ろから芽衣の応援する声が聞こえ、体が軽くなる。
「おっ、すげぇ。より早く動ける」
俺達全員にバフをかけているのか、リーシャ達の動きも数段良くなった。
今はミアを狙っている最中で、ミアは避けるのに専念している。
あ、弾いた。
ミアは戦闘センスが抜群にいいため、少しずつであるがリーダーの動きに目が慣れてきたようだ
剣を弾く回数も増えてきている。
俺はミアが注意を引き付けている間に、リーダーの後ろに回り込んだ。
「黒龍の一撃っ!!」
右手に全て力を集め放つ。
ミアに集中しているためか、当てることに成功する。
ガンッという鉄に固い物が当たった音が鳴り、リーダーはその衝撃で地面に転がった。
背中を見ると少し凹んでいる。
「あああああああ」
次は攻撃した俺をターゲットにしたようだ。
ほぼ見えないほど速い斬撃を勘でどうにか避けながら仲間に攻撃させる。
次はメルが貫通力重視の風のランスを放った。
が、欠けただけで終わってしまう。
「まだ、固いですね」
「あああああああ」
次はメルの方向を見て、剣を振り下ろす。
濃縮された魔力が飛ぶ斬撃となってメルへと迫る。
「危ないのう」
メルを抱え、リーシャがそこから脱出した。
リーダーがそれを目で追っている。
向かったと思った時にはすでに、メル達の前におり、すでに切るモーションに移っていた。
コマチがその剣に対し土魔法で作った石弾を当てる。
軌道がずれた。
間一髪メル達には当たらず、剣は下を向く。
「後もう少しで魔力が切れそうです」
「確かに弱ってる」
「畳みかける」
「行きます」
「もう少しでヘカトンも壊れそうじゃの」
先ほど俺が一撃入れた背中の凹みが、激しい動きによりひびへと変化している。
小さなひびだが、そこを突き続ければヘカトンは壊れるだろう。
よし、いける!!
さきほどのように誰かがヘイトを稼いでは、誰かが不意を突いて攻撃し、その者が狙われれば違う者が攻撃し、というのを続ける。
そして、魔力ももう尽きようとし、ヘカトンも限界に来ていた時だった。
「許さない、許さねぇ」
久しく叫ぶ以外の声を発したリーダーは棒立ちになってしまう。
これはチャンスなのではないか。
リーシャ達と示し合わせて一斉に攻撃をして終わらす。
こちらもそろそろ厳しくなってきたので、ここが決め時だろう。
「許さないぃぃぃぃぃぃ」
バンッと魔力の波動がドワーフの町全体に駆け巡る。
先ほどまで少なくなっていた魔力も最初に戦っていた時よりも上がっていた。
リーダーが乗っているヘカトンが悲鳴を上げる。
そして、遂にリーダーの魔力量に耐え切れず、俺達が作ったひびが全体へと走った。
割れる音が連続して鳴り、コックピットの一か所が欠けた。そして、そのコックピットの中にはドワーフの女性がいた。
目つきが鋭くその顔は怒っているような、苦しんでいるような表情となっている。
魔力が操れず、暴走しかけているのかもしれない。
「まずい、このままだとこのドワーフの町も危ないです」
メルが言うにはこのままだとリーダーの体から溢れた魔力がここを埋め尽くし爆発、その影響で上の岩盤が落ちかねないそうだ。
そうなるとここにいる者全てが生き埋めになってしまう。
「私が少しでも魔力を吸い上げるから、その間に何とかして」
コマチがリーダーへと近づき、その魔力を吸い上げていく。
それでも魔力が溢れる量の方が多いため、すぐさまどうするべきか判断しなくてはいけない。
手っ取り早いのは殺すことだ。これ以上魔力は溢れることはなく、自然とここにある魔力も散っていくはず。
だが、そんな手を俺は取りたくない。
ここでドワーフ一人救えないなら、俺は強くなった意味を失くしてしまう。
全てを救い、全種族が手を取り合う世界にするのだ。
こんなところで躓いているわけにはいかない。
「よし、キリン」
『なになに~』
「あの魔力を抑える、力を貸してくれ」
『分かった分かった、もうそんな娘すぐ殺したら楽なのに』
文句を言いながらも俺に分け与えられた神力を内から引き出す。
神力は魔力とは違い、神様にしか使えない力。
この力は魔力によって使う魔法よりもっと強い神儀を使うために消費される。
『じゃあ、行くよ~』
「ああ、やってくれ」
俺に根付いた神力を引き出し、それを形に変えていく。
出来上がったのはチョーカー。
そのチョーカーの効果は「封殺」。今回はその封殺する目的物を魔力に限定する。
今だ魔力を放ち続けているリーダーにチョーカーを付けようと近づいた。
「トワさん、危険です」
「大丈夫、少し見ていてくれ」
リーシャ達が見守る中、俺は少しずつ近づきコマチの横へと並んだ。
「もう、限界が近い」
「もう少しだけ耐えてくれ」
多大な魔力を体全体で受けながら、より一歩ずつ近づき、もう手が届く範囲までこれた。
後はこのチョーカーを首にはめるだけである。
これで――――。
「あ、ううう」
首にチョーカーをはめた瞬間、あれほど噴き出ていた魔力が止まり、あと少しで飽和しそうだった魔力が散っていく。
終わった。
魔力を封殺された若者ドワーフのリーダーはうつ伏せに倒れ、動かない。
何とか最悪の結果は防げたようだ。
俺はふらつきながらもリーダーの元へと向かう。
『ちょっと使いすぎたんじゃない?』
「そうかもな、まあ、まだ死ぬほどは使ってないだろ」
『そうなんだけど、はあ、心配だよこれからも君は内に宿る神力を使うのかな』
「必要な時はそうするさ」
俺の生命力はこいつキリンに使い果たされた。
それに代わって渡されたのが神力だ。
分け与えられた神力は有限であり、つまり全て使ってしまうことは死を意味する。
「トワさん、大丈夫ですか?」
「肩を貸します」
「ほれ、我に体重をかけるのじゃ」
ミアとリーシャに支えられ、ミアに回復魔法をかけてもらう。
まあ、怪我という怪我はしていないのだが。
「ん!!」
コマチが俺の前に来て、怒っているようだ。
神力を使ったことを怒っているのだろう。この力を使うことのデメリットを知っているのはキリンとこのコマチだけだから。
リーシャ、ミア、メル、ダリルは知らない。
戦闘を見ていたダリルが近づいてくる。
「大丈夫?トワ」
彼女は戦闘には加わらず、今回は見てもらうことにした。
理由はまだ俺が彼女をこの旅に連れてきて良かったのかを迷っているから。
その迷いもダリル本人は気づいているが。
「ああ、大丈夫。少し魔力の使い過ぎで疲れただけだよ」
「それならいいんだけど……」
ダリルの顔には納得のいっていないような感情が浮き出ている。
彼女は獣人族特有の勘の良さというものを持っている、もしかしたら俺の今の状態に勘づいているのかもしれない。
俺は話題を変えることにした。
「これで、彼らも俺達には勝てないと分かっただろうな。まあ、他のドワーフ達にも恐ろしく思われてそうだけど」
俺達を遠目に見つめる視線があった。
それは、先ほどまで町でいたドワーフ達だ。
それと彼らの仲間達らしき集団も。
俺達がその集団を見ると、さっと町の方向へと向かい消えていった。
彼らにも牽制になっただろう。
「じゃあ、すまないが日向と充、亜里沙、芽衣、美貴、宗太はこいつらを見張っててくれ」
「分かった。斗和はデックさんのところに連絡しに行ってくれるか?」
「ああ、そのつもりだ」
それからドワーフの代表であるデックさんの工房に行き、事情を説明。
襲撃してきたドワーフ達は捕まり、牢屋に入れられた。
下っ端だな。
とはデックさんの言葉だ。
どうも、こいつらはエルフを嫌うドワーフ組織の中で下っ端らしい。
しかし、目立っていた実働部隊であったため、デックさんには感謝された。
こいつらは結構多方面でやんちゃしていたらしい。
「さてと、じゃあまた店を回りますか」
と亜里沙が言い、女性陣は全員が賛成していた。
男性陣はその元気がもう残ってはいなかったが、渋々付き合うこととなる。
そして買い物をする際、少し店員さんがぎこちなかったように思えた。




