反撃
呼んでる方なら分かると思いますが、あれ最近ステータス出ないな、と思ったはず。
作者の面倒くさがりで出さないだけですので、お気になさらず。
それと、ステータスはスキルオンリーに直しました。(5/24)
面倒くさいので……
もし、直っていないよ、というところがあれば、よければでいいので教えてください。
よろしくお願いします。
「ウインドプレス」
俺達を囲っていた兵士達が全員、床へとへばりつく。
何かに上から押さえられているのか、立ち上がることもできず次々と気を失っていった。
一体誰が。
声の聞こえた入口の方向を見た。
「助けに来ました、トワさん」
そこにはイールがいた。
確かイールは作戦の中にはいなかったはず。
「何で来たんだ」
「僕が提案したのに、僕だけ危ないことをしないのはダメかなって」
だから来たんだ、と胸を張って言う。
服装はいつも通り薄汚れているが、なぜかその堂々とした姿には目を見張るものがあった。
しかし、そうやって言えるのも束の間、すぐに顔を悪くする。
「おっと、大丈夫か?」
「うん、君達ほどひどくはない、大丈夫」
倒れそうになるのを支えてあげるが、その手をそっと除け、立つ。
辺りが暗い中、イールはマールズ王へと視線を向けた。
一歩一歩ゆっくりと、マールズ王とミア達が戦っているところへ歩く。
その歩みが今にも崩れそうで見ていて怖い。
「えっ?」
「やっぱり大丈夫じゃねぇだろ。俺が支えてやる」
肩を支えると、少しずつこちらへ体重をかけてくれた。
そして、二人でゆっくりとマールズ王の元へ向かう。
そこは、主にミアとリーシャにってぼろぼろとなっていた。
「ミア、リーシャ。もういい、次だ」
「うん?戻ってきたのかい?それにそっちの彼は一体……うん?まさか」
ミアとリーシャの攻撃が止み、辺りが静かになる。
ここには王と俺達、後は倒れた兵士ぐらいしかいない。
状況から見たら、圧倒的にマールズ王が不利なのだが、未だ彼は余裕の表情をしていた。
「まさかまさか、生き残っていたとはな。会えてうれしいよ。こんなに一度にいろいろなことが起こるとは、今日はすごいなぁ」
恍惚とした表情で、空を仰ぎ見て言う。
マールズ王はイールのことを知っていた?
横を見ると、イールが顔を歪めているのが分かる。
とても嫌そうだった。
「僕は嬉しくはないかな。でも、ここで終わらせないとね、この悲劇を」
「悲劇?これは悲劇っていうのかい?はははははっ」
「イール、お前……」
「ごめんね、黙ってて、僕はイールだけど、ただのイールじゃないんだ」
イールの体から魔力があふれる。
薄くイールが光っているように見えた。
そして、その淡い発光が終わるとそこにはイール(女性)がいた。
「イール・マールズ、お前を王の座から引きずり落としに来た」
支えている体が、男性特有の筋肉質の体から女性特有の柔らかい体へと変化し、声も高くなっていた。
少し輪郭も変わったかもしれない。
そこには、男性として接していたイールと違った人物がいた。
彼、いや彼女はマールズと名乗った。ということは、彼女もエルフの王族の一人なのだろう。
「引きずり落とすだぁ、嫌だね。あんな惨めな生活になんか戻りたくないね」
「戻る必要はない。私が王になれば貧しい生活も改善しよう」
「はっ、出来ないから俺みたいなのが生まれてくるのさ」
風を纏い、こちらへと突っ込んでくる。
このままではマールズ王の風の鎧でズタズタに切り裂かれてしまう。
イールを抱え、横に飛ぶ。
ぎりぎり当たらずに避けることができた。
「すまない」
「謝るな、まあまさか女性で王族の一人ってのはびっくりしたがな」
「すまない」
「謝るなって」
その間にもマールズ王の猛追があったがすべてミアとリーシャによって防がれる。
この短期間で、ミアとリーシャはマールズ王と戦いなれたらしい。
マールズ王の動きについていけている。
それはマールズ王も分かっているのか、ミアとリーシャに苛立ちを隠せずにいた。
メルッ、とマールズ王が叫ぶ。
「命令だ、こいつらを排除しろ」
「メル……」
ただ立っていたメルが、マールズ王の声を聞くなり魔法を練りだす。
この魔法の発動方法には見覚えがあった。
プラズマだ。
「まずい、逃げろ」
辺りからバチバチと光が放たれる。
ミアの真上には大きな雷の玉とも言うべき球体が出来ていた。
あれを放たれるとまずい。
すぐさま入口近くに逃げるが、そこにはマールズ王がいた。
「さあ、チェックメイトだ」
前にはマールズ王、後ろにはメルと挟まれてしまった。
これでは避けれない。
メルが魔法によって作成されたプラズマをこちらに放ち、マールズ王が風の刃を複数放った。
マールズ王の風の刃はミアとリーシャ、コマチが処理してくれている。
そして、メルが放ったプラズマなのだが、触れると感電してしまうだろう。
イールも顔色が悪く魔法を使えそうにない。
「それなら」
「なっ」
避けることを諦め、イールを横に投げる。
せめて、落ちて怪我を負わないように身体強化もかけて。
イールを投げ、前を見ると目前に雷の球体が近づいていた。
ああ、これは無理かな。
俺に当たると思った瞬間、俺の前に影ができた。
ダンッ、とプラズマと何かが接触した音が聞こえ、プラズマは消える。
部屋を照らしていたプラズマの光も消え、周囲はまた一段と暗くなっていく。
俺は目の前に飛び出してきた影の正体を見る。
目が暗さに慣れ始めた頃、それはくっきりと見ることができた。
「あっ」
そこには迎賓館で会ったメイドさんが倒れていた。
メイド服が破れ、体に酷い火傷を負っているのが分かる。
駆け寄り、体に触る。
脈はまだあるが、弱弱しい。
「何で飛び出してきたんだ」
「ひゅひゅ、だって、ね、姪が、大切、な、人を殺す、なんて、残酷、でしょ」
そう言い、体からはすーっと力が抜けていく。
最後に残った力で、ごめんね、と口から漏れるのが聞こえた。
動かない。
もう彼女の瞳は何も映してはいなかった。
「あ、ああ、ああああ……」
そっと開いた目を閉じさせ、横たえる。
メルの目からは涙が流れていた。膝をつく。
今、ミア、リーシャ、コマチがマールズ王を抑えている間に、俺はメルの元へ向かう。
「メル、俺だ。トワだ、メルッ聞こえるか!!」
肩を持ち揺さぶると、メルが俺を見た。
「トワさん?」
「そうだ、トワだ。助けに来たんだ」
「わ、私は……それに」
メルは俺の後ろ、横たえたメイドさんを見た。
「私が、私がやった、の……」
「…………」
俺は何も答えられずに、メルを強く抱いた。
耳のそばで鼻をすする音が聞こえる。
声を殺して泣いている。
「メル、ごめん。でもこれは君のせいじゃないから、じゃあ行ってくる」
泣いているメルを残して戦いに戻るのは気が引ける。
だが、ここで参戦しないとミアとリーシャとコマチに何かあっても困ってしまう。
俺はまず突き飛ばしたイールのところへと向かった。
「突き飛ばしてしまってすまない。大丈夫か」
「うん、大丈夫だよ。でも、次から自分を犠牲にする方法は止めて」
「善処するよ」
イールを壁際へと連れていき、今激しい戦いが繰り広げられているところへ向かう。
今のところこちらが優勢のようだ。
さあ、メルに嫌な事をさせた分も、彼女の叔母の分も反撃しなくては。
俺は全身に魔力を漲らせた。




