表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/135

戦争の終結


 「まずはすまなかった」


 獣人族の王が頭を垂れる。

 その様子に今から話し合いで戦うつもりだったラーマ王は出鼻をくじかれた。


 「儂があのメフィルとかいう男に騙されていたことは、ついさっき判明したとおりだ」


 戦場でのメフィルの動きと、今までの行動がそれを裏付ける。

 戦場の中での兵士の暴走。

 黒騎士による被害増大。

 そして、最後は生贄を用意して、何者かの召喚。


 「儂は分かっていたのだ、メフィルという者が信頼できない者であることなど」


 しかし、ダリルの居場所を教えてくれたのはメフィルで、それになぜか恩義を感じていた。

 余所者に抱くものではなかった。


 「だから、私に許せというのか?」


 ラーマ王は強い口調で言う。

 そこには息子達に降りかかった惨状に関する悲しみも含まれていた。


 「許せとは言わない。いや、いえない」

 「では、獣人族の王よ。そなたの命で償ってはくれないか?」

 「な、それは横暴すぎるぞ」


 横からバンが口を挟んでくる。

 それに獣人族の王は睨みを利かせ、ラーマ王の目を見た。


 「それは難しい要求だ。すでに私の命は私の物ではない。私は一国の王として命を削らなければいけないのだ、それだけは許してくれないか?」

 「私の息子が、そこのバン王子に殺されたのだ。そちらも一つ大切なものを失くすのが平等だと思われるが」

 「だが……」


 言葉に詰まり、辺りをきょろきょろと見まわす。

 そして、最後は地面へと視線は向かった。


 「すまない、本当にすまない」


 必死に頭を下げる親を見て、バンは顔を顰める。

 それに対し、ダリルは目を閉じ何かを考えているかのようだった。


 「謝っても、俺の息子はもう帰ってこねぇんだよ!!」


 謝りっぱなしの獣人族の王に、ラーマ王は激昂する。

 立った勢いで椅子がガタンと大きな音を立てて倒れた。

 そして、辺りには静寂が振りまかれる。

 誰も口を開けないなか、一人だけラーマ王に対して言葉をかける者がいた。


 「その責任、私の命で償えませんか?」


 手を挙げ、ダリルは言葉を発する。


 「今回の件は私にも責任があると思っています」


 嘘だ。

 今回は彼女に責任などない。

 というか彼女こそ本当の被害者なのだ。


 「なら私にはその責任に見合った罰を受ける義務があります」


 足は震えているのは見て分かる。

 彼女だって死ぬのは怖いはずだ。

 しかし、彼女は王族の一員だったのだ、国民を王を救うのが王族としては当たり前。


 「ダリル、や、やめなさい」


 獣人族の王はやめてくれ、もうこれ以上は言わないでくれと青い顔で伝える。

 ダリルはその父親の顔を見て、少し引きつった笑顔を見せた。


 「お父さん、これまでありがとうございました」

 「そんなことを言わないでくれ」

 「ダリルは悪くねぇ、悪いのは……」


 バンが言い返そうとして、後ろに控えていた者に口を押さえられる。

 そんなバンにも笑顔を見せたダリルは一歩前に踏み出した。


 「私の命一つでどうか、この場を収めてくださいませんか?」

 「獣人族の王女よ、君は被害者だろうに」


 ラーマ王はダリルの目を見る。

 その目は決して嘘偽りではできない覚悟の目をしていた。


 「それでも、自分が責任をとるというのかい?」

 「はい、私はそれが最善だと思われます」


 ふう、と息を漏らしたラーマ王は告げる。


 「では、そうしよう。我が息子の代償は君の命で償わせてもらおう」

 「やめろ、やめてくれ。それだけは、それだけは絶対に……」

 「ありがとうございます」

 「ん、んむぅ、むがむが」


 ダリルは頭を下げる。

 獣人族の王はそれを見て、手を伸ばしていた。

 バンは抵抗して、何かを言おうと必死になっていた。

 ラーマ王は後ろの従者に、首を切るための斧を用意させる。

 この場はこのままダリル処刑へと一歩、また一歩と進んでいる。

 が、そんなくそったれな展開を俺は望んだりしない。


 「その処刑少し待ってもらえませんか?」


 覚悟を決めていたダリルが顔を上げる。


 「ん?何かあるのかトワよ」


 ラーマ王はすでに片手に首を切断するための斧を握っている。


 「まずは、その手にある斧を下ろしてくれませんか?」


 ラーマ王は意外と素直に斧を後ろの従者に渡した。


 「それで何だ」

 「彼女はここで殺されました。()()()()()()にしてくれませんか」

 「つまり、彼女を殺さず亡き者とするということか」

 「はい、そうです」


 ここで俺がしくじればダリルの命がない。

 少しメフィルの存在を利用してしまおう。


 「メフィルという者は悪魔族であることは周知の上だと思います。そして、彼の目的を知っていますか?」

 「知らんが、貴様は知っているのか?」


 俺もよくは知りはしないが、メフィルは確か世界の再構築と言っていた。

 つまりそれは、今の世界の崩壊を意味しているのだと思う。

 それを拡大して言ってみることにした。


 「全種族の絶滅だと言っていました」

 「ほう、それは本当かね」

 「はい、私はメフィルと戦いながら目的について問いただすと、そのようなことを言っていました」

 「それに嘘偽りはないかな?」


 ラーマ王は後ろで頭からローブに隠れていた者に目を向けた。

 その者はフードを脱ぎ去る。

 そして、そこには見知った顔があった。


 「はい、嘘偽りはございませんでした」


 先ほど助けた奴隷の一人である、真実の魔眼を持った男がそこにいた。

 その男はこちらに向けて、少し微笑む。

 少しの嘘も見破れるのだろう、だが彼はそのことをラーマ王には伝えなかった。


 「そうか、全種族の絶滅とな」

 「はい、ですのでこのようなことをしている場合ではなく、ここは獣人族とラーマの国で条約を結ぶのが良いかと思います」

 「ほう、例えばどのような条約かな」


 ラーマ王がにやっとしたように感じた。

 まるで、この流れこそ待ち望んでいたかのように。


 「そうですね。この場合は損害を受けているのがラーマの国ですので、ラーマ国に有利な条約として、貿易と防衛に関する条約はどうでしょう?そちらの王もそれでいいですか?」

 「あ、ああ、儂はそれでかまわん。それにしてくれ」

 「では、この条件を飲んでもらおうかな」


 すぐさま後ろから分厚い書類が届けられる。

 それは、すぐに用意したとは思えないほどの重量感を持っていた。

 まさかとは思おうが、最初からこれが狙いだったのだろうか。


 「これに納得してもらうなら、王女は死んだことにしてやろう」

 「分かった、すぐに確認する!!」


 その厚い書類をすぐに抱え込み、従者のほうに手渡した。


 「では、その返事を明日してもらってもいいかな?断ってもらってもいいが」

 「いや、すぐに確認し連絡する。明日までには必ず」


 焦った様子の王はすぐさま宰相を呼び、その場で書類を確認していく。

 その様子を見て、ラーマ王はテントを後にする。

 今まで黙って聞いていた魔術師団長のシャルは王の様子を伺った後、こちらに向き謝意を述べた。


 「何度もありがとう。こういってはなんだが、ラーマ王はお優しい、それは自分の国民だけでなく他の種族の者までも含まれる。だからラーマという国ができているのかもしれないが」


 そう言い残し、ラーマ王の後ろを付いていった。

 つまりは最初からこの展開に持っていくように仕組まれたことだったのだ。

 さっきの殺す云々は、物事を大きく見せ、条件を落として相手に飲ませる、という詐欺などに使われる常套手段だ。

 しかし、ラーマ王は息子の無念はどうするのだろうか?

 それがすごく疑問に思うが、それもすぐに理解に至ることになった。


 「あまり評判は良くなかったようじゃのう」


 リーシャが言った通り、特にラーマで王子が殺されても騒ぐ者はいなかった。

 その王子陣営にいた貴族達は少し残念そうな顔をしていたが。

 分かったことは愚かな第一王子が死に、優秀な第二王子に継承権が渡ったということだろうか。


 「これにて一件落着なのか?」


 何かいろいろと忘れているような気がするが、ダリルの命を救え、これ以上戦場を広げずに済んだことは良かったと思う。

 まあ、大丈夫だろう、今は休みたいし。

 そう思い、俺たちはすぐさま宿屋の方へと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ