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第一回、魔女の塔クイズ大会


 「第一回、魔女の塔クイズ大会!!」

 「は?」


 この知識の番人とかいうおっさんは何を言っているんだ?

 天井に向かって伸ばした指とその言ってやったぜという顔からは、本気で言っているのだろうと推測できるのだが。

 何せ、俺達には時間がない。

 こんな所で、クイズ大会などしていたらすぐに戦争が始まってしまう。


 「ごめんな、知識の番人。俺達急いでいるからな、付き合ってられないんだわ」

 「ふむ、そうですか」

 「だから、先に行かせてくれねえか?」


 鼻の下のひげをいじりながら、深く考えだす知識の番人。

 こいつが、争う気持ちがないのは分かっている。

 それで、決着をつける方法がクイズ大会というのが、いかにも名前通りを貫き通しているというかなんというか。

 少しの間、悩んでいた知識の番人だが何かを閃いたのか目が見開く。


 「ならば、こういうのはどうでしょう」


 知識の番人が提案してきたのは、三問クイズに答えれたら通してあげるという事。

 しかし、三問全部を答えられなかった場合は、このダンジョンを始めから不正なしで攻略してもらうという罰ありの。

 もし答えられない場合は確実に戦争に間に合わない。


 「よし、そうしよう」


 こちらには、古の記憶も有しているコマチもいるから大丈夫だろう。

 そのほかにも、魔術に関してのことならメルが答えられる。

 他種族に関しては、リーシャがとても詳しいらしくカバーしてくれるそうだ。

 そして、俺とミアはまあ閃き担当ということで。


 「準備はよろしいかな?」

 「ああ、大丈夫だ」

 「では、第一門!!」


 第一門はしゃれた問題ですよ、と提示されたのは一つの数式。

 56×137=?という文字が空中に現れる。

 そして、それを見たミアはうん?と思考を停止させる。

 コマチ、リーシャ、メルは計算に手間取っていた。


 「いや、これは7672だろ」

 「ん、なっ」

 「おお、トワ様は天才じゃったか」

 「すごい、よくそんなに早く解けましたね」


 仲間からの賞賛の声が飛び交う。

 知識の番人はこんなに早く解かれると思っていなかったのか、硬直している。

 てか、これぐらいだったら誰でもできるよね。

 そう思ってしまうが、この世界に学校などがないためこんなに早く解けるのが異常なのだろう。

 日本の教育はすごかったんだな、と今更に知った。


 「ま、まあこれくらい序の口ですから、つ、次の問題に行きますよ」


 明らかに動揺している知識の番人は、次の問題を空中に映し出す。

 その問題は日本で見たことのある問題だった。


 「これには、答えられまい」


 そこには、『絵の中からトラが飛び出すから捕まえろ』という文字とともに、その絵と縄が出現した。

 まさに、一休さん。

 みんな大好き一休さんではないか。

 それにコマチも気が付いたのだろう、口のは端を持ち上げ笑っている。

 知っていると思うが、縄を持って、「では、絵の中からトラを追い出してください」と答えるのが正解だ。


 「うーん、いつ飛び出すのじゃ?魔力も感じないが」

 「確かに、魔道具ではないようですね」


 日本では、魔法とかは無いために不可思議な現象は魔法である、という一言で説明はできない。

 だが、この異世界には魔法が一般的に普及しているために、不可思議な現象=魔法の類という公式が頭の中に出来上がっているので、その常識をついた問題なのだろう。

 俺は魔法がない世界から来たから、残念ながらそんな固定観念にとらわれない。


 「コマチは分かっている顔だな」

 「うん、トワの記憶にあったから、すぐ分かった」


 メル、リーシャが手で触りながら確認し、悩んでいるところにコマチが駆け寄る。

 そして、縄を持って知識の番人に顔を向けた。


 「では、このトラを絵の中から追い出してください。捕まえるから」

 「あ、えーと、その」

 「出して?」


 コマチの首をコテンとさせる仕草が可愛い。

 それに対し、こんなに早く二問目も解かれるとは思ってなかった知識の番人は、しどろもどろとなっている。

 メルとリーシャは未だどういうことなのか理解していないようだ。


 「う、うむむ、正解だ。正解、正解」


 なんか投げやりっぽくなってる。

 髪をがさがさと手でかき回し、通常の状態に戻るまでに数分を要した。


 「はあはあ、すまない。少し取り乱したようだ、こんなに早く正解されると知識の番人としての存在理由が薄れていくようで、何とも不快なのでな」


 そうして、落ち着いたちしきの番人が最後の問題を告げる。

 今回は難しいぞ、とのこと。

 今は日本の知識チートを使えているので、次も知識チートが使える問題がいいのだが、どうも最後の問題はそうともいかないらしい。

 それは、問題のような訴えのようなもののように聞こえた。


 「私はなーんだ?」


 とぼけているようで、顔は今まで以上に真剣。

 普通に知識の番人じゃないのか、と言いたいがそれは不正解なのだろう。

 現に、ミアが知識の番人と言って解答権を失った。


 「むぅ、最初に知識の番人と名乗ったではないですか」

 「まあ、名乗ったけど偽名なんだろうね」

 「むぅ」


 自分にも分かると思って、解答して不正解だったことにふくれた。

 ちょっとすねた感じのミアは置いといて、何が答えなのかを考えてみる。

 単純に考えれば、知識の番人の本名を当てたらいいのだが、それは分かるはずもない。


 「それは問題としてどうなんだ?」

 「ははは、知識の番人としては下の下の問題だとは思う、がこれを答えられたらと君たちに期待しているんだよ」


 答えられたらか。

 まるで、自分もその答えを知りたいかのようにおっしゃる。

 そんなの俺達が知る由もない、彼が誰かなんてそんなのは最上階にいる魔女しか知らないだろう。

 それでも、この問いを答えなくてはこの空間から抜け出せないのなら、答えるしかない。


 「我はお手上げじゃ、こんな存在聞いたこともない」

 「私も知りません」


 メルとリーシャは全く見当もつかないとお手上げ。

 残るは俺とコマチだけなんだが、俺もさっぱり分からない。

 コマチはというと。


 「ちょっと待って、今からリヒトの記憶から探してみる」


 目を閉じ、その場に座る。

 彼女は今、リヒトの記憶を追体験しているのだろう。

 俺がリヒトに初めて会った時のように。

 コマチが思い出している間、俺は何もすることがないので知識の番人を観察してみる。

 その姿は人間種のように見えるが、その姿さえ偽りである可能性がある。

 さすがに性別は男性だと思いたいが。


 「そういえば、知識の番人はなぜ魔女のところにいるんだ?」

 「ふむ、考えたこともなかったが、気づいた時には魔女のところで封印されていたな」

 「魔女に作られた人工生命体とか……」

 「ふむ、それが君の答えかな?」


 コマチみたいに生み出されたのではないか、と予想してみた。

 そうすれば、彼が気づけばここにいる理由も分かる。

 その答えを信じ解答するも、まったくの大間違いだと解答権を失ってしまった。


 「残念ながら、私もそうだと思っていた時期もあったが、どうも違うらしい」

 「根拠は?」

 「私は知識の番人だからな、魔女のことももちろん知っているが、そんな人工生命体を作ったという話は聞かない。そして、私のことを聞いても魔女は答えはしなかった。知識の番人であるのに自分のことを知らないのだ、何と口惜しい」

 「それじゃあ、もし本当の答えを言っても分からないんじゃないのか」

 「そうでもない、答えとなる言葉が出た時に私は理解する、何者であったのかを」


 それは確信に近いものだった。

 古い記憶はセピア色に染まり、焼け焦げ何がなんだか分からない状態になっている。

 それを復元するためには知識、情報が必要だ。

 一つの情報が記憶を復活させる起源となったらと彼ら彼女らに期待する。

 今の時代が彼が生きていた時からどれくらい経っているかも知らないまま。


 「だから、期待しているよ。君たちが私に正解をくれることを」




 …

 ……

 ………

 …………


 「……思い出した」



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