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必殺ダンジョン攻略


 「おかしいなぁ、ここってまだ二階層だよね」

 「うん、でもおかしくはない。彼女のことだから」


 斗和達は今、魔女の塔――通称、必殺ダンジョンの攻略をしている。

 そして、今は2階層。

 1階層は特にこれといって、何もなく上へ上る階段を見つけて終わった。

 それで最初だし、これくらいなんだろうと油断したのが悪かったのだ。


 「おい、またかよ」


 足が地面に触れた瞬間、横から竹やりが飛んでくる。

 そして、着地した地面は落とし穴となっていた。


 「危ない!!」

 「うおっ」


 メルの風魔法による支援で、落とし穴から救出される。

 もう少しで落ちるところだった。

 メルにお礼を言い、落とし穴を覗くとそこには闇が見える。


 「底が見えない、落ちてたら死んでたな」


 まさに必殺ダンジョン。

 我こそが必殺ダンジョンだというばかりに、洗礼を与えられる。

 ミア達も警戒をしながら進んでいくのだが、まるで人の心理の隙を突くようなトラップが張り巡らされていて。

 僅かながらに、2階層を突破する頃には疲弊していた。


 「3階層もこれなら、少し辛いな」

 「トラップうざい」

 「私は何の役にも立ちそうにありません」


 皆、様々なトラップにストレスがたまっている。

 ミアは落ち込み。

 メルは疲れた顔をし。

 リーシャは口数が減り。

 コマチは愚痴を言っている。


 「このダンジョンはダンジョンの常識を覆してくれるよなっと」


 3階層に上がるとき、普通のダンジョンは次の階層までの道のりはセーフティゾーンとなっているが、このダンジョンは違う。

 斗和が一歩踏み出した時、上から槍が落ちてきた。

 それを分かっていたとばかりに回避し、鬱憤を晴らすかのように飛んできた槍をトラップに投げ返す。


 「あまり意味がない」

 「コマチさんの言うとおり、このトラップはどうもランダムだと思われます」

 「我も感じておったが、魔力が不規則な動きをしておる」


 そう言われ、魔力の動きを見るように目を凝らす。

 すると、確かに魔力がダンジョンの中を不規則に動いていた。

 その魔力が収縮していき、そして次の瞬間には形のある岩となって振ってくる。


 「おっと、危ない」


 なるほど、この作られたダンジョンが結構な時間が経っているにもかかわらず、機能を停止していないのはこのような仕組みがあるためなのか。

 そして、入るごとに変わるトラップにより、攻略しようとトラップの位置をマッピングしようとも無駄だというわけだ。

 まるで、ダンジョン内の魔物のようにトラップが産まれる。


 「ええと、奴隷達がいるのがどこら辺って言ってたっけ」

 「最低でも30階層」

 「最低でもか……」


 少し、多すぎやしないか?

 30階層についた時には、理不尽なトラップで頭が剥げているかもしれない。


 「そうだ、私にはこれがあるじゃないか」


 落ち込んでいたミア復活。

 あまり広いと言えない3階層に続く階段で、ミアは背中に背負った大剣を器用に抜く。


 「ええと、想像できそうだけど、一体何をするつもりなのかな」

 「それはですね、トワ様。このダンジョンの最短攻略をするための方法を試そうと思うのです」


 そう言って、ミアは抜刀のような構えを取る。

 それを止めようとする者はいない。

 どうも皆、苛立ちがその行動を止めないようだ。


 「秘儀、天井切り」


 今考えたであろう技名を言いながら、ダンジョンの天井を切る。

 ふざけたネーミングの技だが、威力は別で、ダンジョンの天井を豆腐を切るかのようにするっと切断していく。

 崩れたら危ないので、ミア以外は離れて待機だ。


 「な、なにっ!?」


 切った所から再生する天井。

 切っても切っても気が付けば元の状態へと戻っている。

 それに怒りを覚えたのか、ミアの顔が屈辱に歪む。


 「絶対に切り刻んでやる」


 大剣を両手に持ち替え、腰を沈め構える。

 そして、次の瞬間ミアの姿が掻き消え、天井近くで轟音が鳴り響いていた。

 ぽっかりと正方形に切り取られた穴が顔を見せる。


 「飛翔!」


 そこに間髪入れず、ミアが全員に風魔法による飛翔を施す。

 早くしないとまた治りそうなので、結構な早さで上へと上がっていく。

 1、2、3……。

 正方形に開いた穴をくぐりぬけたのは、合計で6回。

 という事は、今ここは8階層ぐらいだろう。


 「まさか、6階層分をぶち抜くなんてな」

 「私に切れない物は、ない、ですよ……はあ、はあ」


 さすがに大技を使ったためか、息切れしている。

 たぶんだが、飛ぶ斬撃を強めたのをほぼ誤差を出さずに四回発動するという、離れ技を披露したのだ。

 ダンジョンを作った魔女が遠い目をしている様子が想像で浮かぶ。

 息を整えてから周りを見渡す。

 8階層も下の階層とは内装は変わらないようだ。


 「もう一回できるか、ミア」

 「はい、トワ様のためにも頑張ります」


 もう一度抜刀の構えをとり、放とうとした瞬間。

 周りの壁が歪んでいることに気が付いた。

 両側の壁が膨らみ、形作っていく。


 「こいつはもしかして……」

 「そのもしかしてじゃな」


 人型へとなった茶色い石の物体。目には真っ赤な鉱石が付いており、その目はこちらを真っ直ぐに見ていた。

 まるで、俺達のことを恨んでいるかのように。


 「これって、ダンジョンを不正に攻略したから怒ってる?」

 「かもな」

 「うん、怒ってるかも」


 その岩のような存在――ゴーレムは作られた口から叫び声をあげた。

 それにつられて、他のゴーレムも叫ぶ。

 ゴーレムの数は十体を軽く超えているが、問題はない。


 「さて、粉々にしてやるか」


 先手必勝と一足飛びからのライダーキック。

 一体が砕ける。

 ミアによる飛ぶ斬撃の波状攻撃。

 二体、三体と粉々になっていく。

 メルによる風の鎚は振りおらされた。

 巻き込まれたゴーレムの数は大体四体ぐらいだろう。

 その間に、コマチと力を合わせてゴーレムを二体撃破。


 「我も準備が整った、皆我の後ろに来るのじゃ」


 俺達が近いゴーレムを粉砕している間に、リーシャには大規模な魔法を用意してもらっていたのだ。

 その魔力の塊にゴーレムはまるで危機を感じたかのように、目を向ける。

 そして、意思なき岩達は即座にその魔法の発動を阻止するように動くがもう遅い。


 「ドラゴン・レイ」


 収縮された龍の炎はその温度を上げ、青く真っ直ぐに直線を描く。

 実態なき炎だが、その炎の光線と呼べる代物はゴーレム達を貫き、内側から崩壊させていく。

 燃えるはずのない岩が燃え崩れるかのように。

 大規模な魔法を使った反動で、片膝を着いたリーシャを守るように陣形を組み、周りを警戒する。

 だが、これ以上何かが現れることはなかった。


 「ふう、これで全滅かのう」

 「そう、みたいだな」

 「不可思議な魔力の動きも感知できません」


 仲間全員に聞いてみるが、異常は特に見られないらしいから特に大丈夫だろう。

 よし、これでまた天井を壊して進める。

 その後、ミアに2回ほど天井を切ってもらって進み、一日目で21階層まで来ることができた。

 そして、21階層のセーフティゾーンを探しあて、明日に備えて今日は寝ることとする。

 こうして、攻略一日目は幕を閉じた。







 「いや、おかしいだろ!!」


 とてもとても高い場所に座るその女性は頭を抱えていた。

 それは、今日来た侵入者についてだ。

 その侵入者は天井を壊し、治ってしまうまでに飛翔して次の階層へと進む、というばかげた方法で攻略を続けている。

 常識がなってない、と彼女は大声で叫ぶ。

 そして、頭の中ではこの者達をどうやって追い払おうかと思案していた。

 ゴーレムによって排除する方法は試したが、今回の侵入者は武力に自信があるらしい。

 それではだめだ。

 では、どうすれば……。


 「ああ、もう、どうしてこうやっかいなことは続くのー」


 自分の場所に近い階層にも侵入者が居座っているというのに。

 一体今日は何か祭りでもしているのか、というほどの大盛況だ。

 考えるのも嫌になって、ごろごろと床を転がっていると、こつんと足に何かが当たった感触があった。

 その当たったものを確認する。


 「これは……そうか、これを使ったら……」


 彼女の手には今しがた拾った本がある。

 本のタイトルは『知識の番人』。

 でもな、こいつを使うのはな、と躊躇するが仕方がない。

 このままだと自分の所まで来てしまうだろうから、遠慮なく切り札を切っていこう。


 「これで、まずは下から破竹の勢いで来てる集団は対処できるな」


 そう確信し、その本を魔法陣の上に彼女は置いた。



最後の登場人物は、皆さんもう分かっていると思います。

分かりやすいですね(汗)

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