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必殺ダンジョンへ

 助けに行くと、魔術師長のシャルに宣言してから数分後。

 斗和達は必殺のダンジョンと呼ばれる、魔女の塔へと向かっていた。


 「でも、なんで魔女の塔という名前なんですかね?」

 「確かにな」


 必殺のダンジョンという呼び名が一般に知られるようになったのだが、正式名称の『魔女の塔』はなんでそう名付けられたのか……。

 ふと疑問に首をかしげていると、横に居る少女が口を開く。


 「それは、魔女みたいなのが作ったから」

 「え、コマチ知ってるのか?」

 「うん」


 どうもコマチは知っているらしい。

 コマチが知っているということは、リヒトに関係することなのだろうか。


 「この塔を作ったのはリヒトの友達だから」

 「リヒトに魔女の友達がいたのか!?」

 「正確には魔女じゃなくて、変態魔導師だけど……」


 リヒトの記憶を有するコマチは、その人物を思い浮かべているのか顔をしかめていた。

 その人物はリヒトにも嫌われているらしい。

 コマチ曰く、会ってすぐに抱き着きうっとうしい、人の役に立たないだけでなく人に害するものを開発することが多い、なのに頭はいいから誰も彼女に逆らうことはできないのだとか。

 しかし、リヒトにとってお世話になったこともある。

 リヒトが街に故郷から出てきた時に、住居と飯を与えてくれていたのだ。

 何を考えて見ず知らずのリヒトを養ったのかはしらないが、その事だけは感謝しているらしい。


 「でも、毎日がうざかった」

 「へえ、そんな人がいたのか……」


 俺はリヒトの記憶を断片的にしか見ていないから、全然知らなかった。

 そして、その変態魔導師がこのダンジョンを作ってしまったと。


 「いや、オーパーツ過ぎるでしょ」

 「確かに、今の技術じゃダンジョンなんて作れませんから」

 「すごいのう」


 ダンジョンって自然発生してできたものじゃないのか?

 その常識でさえぶっ壊してくるのは、確かに変態魔導師ゆえなのかもしれない。


 「その変態魔術師は、確かに今の魔法技術より進歩していた、けど、リヒトが魔王と戦うときには居なかった」

 「いなくなったのか」

 「そう、街を探し回ったけど見つからなかった」


 なんとも不思議な話だ。

 一緒に暮らしたリヒトに挨拶もなくいなくなるというのは、何とも不自然に思えた。

 今から攻略する魔女のダンジョンについて話していたら、ついにその姿が見えてくる。


 「結構大きいな」


 魔女の塔は天空へと延びており、その頂上は雲の上まである。

 そして、奴隷達が飛ばされたのが最上階に近いセーフティゾーン。

 残る時間は二日ほど。


 「攻略速度を上げていくしかないな」

 「はい、全部ぶっ壊すだけです」


 ミアはやる気満々に大剣を振り回している。

 その大剣ダンジョン内では使いずらいと思うのは俺だけだろうか。


 「我も準備は出来とるよ」

 「大丈夫です」


 リーシャもメルも準備万端らしい。

 コマチも横で頷いている。

 皆準備が出来ているようなので、さっそく塔の入り口である門を押す。

 が、開かない。


 「いや、なんで!?」

 「たぶん、入り口こっち」


 コマチが指さしたのは、門の横にあるくぼみが出来た壁だった。

 ミアがそのくぼみに手を入れ、横にずれるように力を入れると、壁が横にずれるようにスライドしていった。

 じゃあ、この門はなんのためにあるんだよ!!


 「彼女の遊び心」


 なるほど、変態魔術師は性格も悪いわけか。


 「気を付けて、彼女の悪ふざけで国が亡びそうになったから」

 「何その悪ふざけ」


 この先、ダンジョンが不安だ。

 その悪ふざけがこのダンジョンに抽出されているに違いない。

 だって、必殺のダンジョンとか呼ばれているわけだし。


 「不安だな~~」


 そう言い、塔の中に注意を向けながら入っていった。






 そのころ、開戦宣言をした獣人の国では着実に戦争の準備が行われていた。


 「兵の調子はどうだ」

 「はい、戦への士気も高まっています」

 「そうか、今日から訓練は中止し、戦の準備をしろと伝えよ」

 「はっ、バン・ジンワン様の仰せのままに」


 従者が下がっていく。

 その姿が扉の向こうに消えていくのを確認し、ため息をついた。


 「はあ、わが娘が本当に奴隷にされているとはな」

 「本当だったでしょう」

 「ああ」


 玉座の後ろから姿を現したのは、人間族の少年に見える何か。

 見た目は人間族なのだが、感じる存在がどの種族とも違いそこに違和感を覚える。

 少年のような何かは玉座の腕置きに座り、こちらを見た。


 「それでさ、商業の国ラーマとの戦争なんだけど、こいつを戦場に連れてってよ」


 そう言って、指さした場所に闇が収束する。

 そして、ついさっき何も無かった空間に一人の青年が立っていた。

 黒い部位鎧を取り付け、顔には目と鼻しか穴の開いていないシンプルな面を着けている。

 面から覗く目はうつろとしており、定まっていない。


 「いや、それはできない。この青年は人間族ではないか」

 「あはは、そこはどうにかしてよ、娘の場所も教えてあげたでしょ」

 「むむむ、確かにその恩はあるが」


 しかし、我らの仲間ではない者を戦場に投入するのは、いささか危険すぎる。

 統制がとれてこその軍なのだ。


 「大丈夫、彼は遊撃として一人で戦ってもらうから」

 「一人でか、ううむ……それならよしとしよう。そのかわり我らの邪魔をしたら即刻殺すことにする」

 「分かってるって、その時は殺してもいいよ」


 少年のような何かは面白そうに玉座の腕置きから飛び降り、青年の元に駆け寄る。


 「では、頑張ってくださいね。あなたのお友達も来るらしいので気合が入りますね」


 青年から返事はない、ただ頭をこくりと下に向けただけだ。

 それを見て、少年のような何かは満足したのか、青年が現れた闇を出現させる。

 闇の中に片足を着け、入ろうとしたときに、何かを思い出したかのようにこちらに振り向いた。


 「そういえば、息子さんは勇者の血を覚醒したそうですね」

 「あ、ああ。良い師匠に巡り合えたのでな、今も鍛えてもらっているよ」

 「いやはや、それじゃこの国は安泰だなー」

 「そうだな」


 一体何を言いたいのか。

 彼はその後何も言わず、闇の中に消えていった。


 「それでこやつはどうしろというのだ、メフィルよ」


 消えた少年のような何かの名前を呼ぶが返事はない。

 そして、残された謎の青年はただ佇んだまま、動く気配が無かった。

 一応生きているようなので、寝床と食事は構えてやることにしよう。

 そう決め、あとは文官に丸投げした。


 「さて、我の準備も始めるとするか」


 重い腰を上げ、神が祀られている祠へと足を向ける。

 そこで、獣人族は戦での勝利を願うのだ。

 それは獣人族の王であるジンワンも例外ではない。


 「我が先祖バンよ。我ら同胞、家族を取り戻すため、我は命を懸けて戦う所存。我らの勝利に栄光と繁栄を願う」


 片膝を着き、頭を下げる。

 ただ一人祈りをささげるその場は、静寂に包まれていた。


読んでくれてありがとう!

週刊誌のように約一週間に一話投稿していくので、また来週もよろしく!!

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