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vsドーラ

 ドーラ。

 彼ら盗賊たちは確かにドーラと名乗った。

 彼らの種族は見る限り獣人が多いように見える。


 「じゃあ、あいつらがギルドマスターが言ってたドーラなのか」

 「はい、そうらしいですね、どうしますか、トワ様」

 「そうだな、まあ、まだ実害が出ていないし様子を見ようと思う」


 そう、今まで正体を隠しながらの犯行を繰り返していたドーラがなぜ姿を現したのかが気になる。

 また、盗賊をしているとはいえ、彼らのターゲットは悪い行いをしている者に限られるため、今回もこのオークションが悪事に加担しているのかもしれない。

 驚きに固まっていた貴族、王族、平民達はそれぞれ理解とともに違う反応を示した。

 王族と貴族は盗賊ドーラたちを恐れ、出口の方へと走り出す。

 が、しかしドーラの一派が出口を抑えており、出るに出れない状態となっている。

 平民はドーラが現れたことに関して、混乱などは起こさずに静かに事の成り行きを見守っており、それはドーラ達の日頃の行いによるものだろう。


 「動くな、動いた奴から打ち殺すぞ」


 ステージの方に立っているフードで顔を隠した男が貴族と王族に向け大声を発す。

 一瞬の沈黙の後、固まって動かなくなる。

 護衛の者もこのオークションに入る際に武器を取られているために、防衛手段は無いため素直に従うしかない。


 「俺達の要求は一つ、この国に盗まれた俺達の宝を取り返しに来た」

 「なあ、お前知っているだろ」


 ステージの脇から司会の男性が引きずられて出てくる。

 その顔には殴られたのか青あざが出来ており、痛々しい。


 「この野郎は知らないとかほざきやがったからな。知ってるやつはいねえのか」


 まず、お前達の宝は何なのか知らないために答えれないだろ、とは思う。

 ドーラの一人もそう思ったのか、ステージに立っているリーダーと思しき人物に話す。


 「まず、俺達の宝について話さないと分からないと思うんですけど」

 「あ、うむ、確かにそうだな」


 そして、その彼らの宝についての説明が入る。

 その説明の終わりに判明したことが二つ。

 一つ目、確かにそのお宝はこのオークションで売られるという事。

 二つ目、まさにそのお宝は今からオークションにかけようとされていた者だ。


 「それって、町で見たあの獣人の娘だよね」

 「そうだな、そしてその娘が登場する時に襲撃を受け、その娘はまだこの会場に出されてないと」

 「という事はのう、今もどこかに収容されているが、あの司会が口を割らず隠し通しているのかのう」

 「そうかもしれないし、本当に知らないということもあるかもな」


 知っていて、命の危険を感じながらも隠し通すのなら、それは仕事人としてプロだと思う。

 この世界は魔法があるため、大事な物は大体魔道具などを使って保存している。

 もし、この襲撃を受けて危機を感じた運営側が、咄嗟の判断でその魔道具自体を開けないように、または見つからないようにしてしまっては魔道具に精通している者ぐらいしか太刀打ちできないだろう。

 そのため、困ったドーラは裏で穏便にすませるはずの事を、正体を明かしてまで決行することにした。

 というところだろうか。

 聞くに、ドーラは最近騒がれ始めた盗賊らしいので、その時期に宝である獣人の少女を連れ去られたのだろう。

 確か、司会の男が獣人の少女は獣人の王族の血を引いているとか言っていた気がする。

 で、ドーラの構成員は半数以上が獣人族と。


 「獣人の国の兵士が混ざっているね」


 コマチのつぶやきに激しく同意だ。

 つまりはこの商人の国は世界一の領土をほこり、武力でも最上位に近い獣人の国の王女様を売買しようとしたということだ。

 というかすでに奴隷として扱っていた。

 これは獣人の国に喧嘩を売ったのも同然ではないかと思われる。


 「これはまずいな」

 「そうじゃの、近いうちに戦争地帯が増えるの」


 主にここ一帯が。


 「おい、誰も本当に知らないと白を切るつもりかぁ?それなら俺にも考えってもんがあるぞ」


 そう言って、ドーラの一人が持っている司会の男に懐から出した剣を突きつける。


 「始めにこの男から殺そうと思う、これは見せしめのために、な……あ?」


 剣を思いっきり振り下ろし、そこには首が取れた遺体が転がるのを想像したのだろうが、そうはならない。

 そこまでしてしまっては、獣人族全体に迷惑が掛かってしまうからな。


 「おい、誰だ。俺の剣を弾いた奴は、出てこい!!」


 横でメルの風魔法が放たれた。

 最小限の威力で正確に剣の腹を打ち抜く。

 俺にはまだこのような神業はできそうもない。


 「あまり人は殺させないようにですよね」

 「ありがとう、メル」


 邪魔されたのが腹立たしいのか、司会の男を一発殴る。


 「うぐっ」

 「あ、あいつだ。あのエルフがやったんですよ」


 客席に近いドーラの一人がメルを指さしてリーダーに伝える。

 魔法に長けているのか、先ほどの魔法の発射位置を探られたのかもしれない。


 「お前がやったのか、ちょっとこっちに来い」


 周りのドーラがこちらに向かって近づいてくる。

 まあ、これぐらいなら全然相手にならないと思うけど。


 「さあ、したがってステージに行ってもらおうか」


 メルへと伸ばされる腕。

 それが触れることを許されるはずもなく。


 「うわあああああ――げふっ」


 ミアに腕力だけで投げ飛ばされてしまった。

 このオークションの会場は客席が段々となっており、俺達の座る所は結構高いところのため、そのまま下に落とされると結構なダメージが入るだろう。

 それに背中から落ちたので、落ちた奴は息苦しそうに悶えていた。

 それを見たドーラの一味は一斉に飛び掛かってくる――が、あっけなくミアとリーシャにより同じ結果がもたらされる。


 「これで懲りましたか?」

 「それぐらいじゃ、我らには到底及ばんのう」


 これ以上俺らの方に人員を回すと出口がおろそかになってしまうために、誰も対処しに来ない。


 「てめえら情けねえな、それでもバンの一族なのかよ」

 「では次は私にやらしてもらいましょうか」


 リーダーの近くにいた獣人族の男が外套を脱ぐ。

 下はフルメイルとなっていた。

 そんな鎧を着ていたらガシャガシャと音がうるさそうなのだが、そんな音は一切しない。


 「行きますよ」


 そう言い、男は腰を落とす。

 こっちまでの距離は相当離れているが、攻撃が届くのだろうか。

 注視していたその時。


 「まずはあなたからです」


 目の前にその男が現れ、拳をみぞおちに入れられる。

 完全にみぞおちを抉る一撃で、強くなったとしてもすごく痛い。


 「では一旦吹っ飛んでいてください」


 言葉通りなぜか抵抗なく後ろの壁に体が持っていかれ、壁に体が刺さる。

 多少みぞおちが痛いがそこまでのダメージではない。


 「な、トワ様」

 「我の主に何をしよった、小僧」


 コマチを除いた三人はいきなり現れたそいつに恐ろしいほどの殺気を叩きこむ。

 コマチは相変わらず無表情だ。

 ただ、俺はそんな深手を負ってないから大丈夫なんだが。


 「よくもトワ様に危害を加えよって」

 「メルよ、この男は我が思い知らせておくから、トワ様を頼んだぞ」

 「私もこいつの骨を全て折ることにしました」


 さらっと怖いことをいうミアさん。

 骨を全部折るって、それ死んじゃうから。


 「いえ、次はあなたの番ですよ」


 メルを行かせないように睨みを効かせながら、ミアとリーシャの出方を見ているようだ。

 相手の先ほどの技が不明なため、ミアとリーシャは積極的に攻撃に出ようとはしない。

 その間、俺は壁に刺さって気絶したふりをして、ミアとリーシャの攻防を確認する。

 リーシャはここで龍化してしまうと動きづらくなるため、使わず戦っており、ミアは武器が無いために素手で戦っている。

 そのために戦いは拮抗しているかのように見える。


 「どういう理屈なんだろうな」


 遠目から見て、瞬間移動をしているかのようにしか見えない。

 そして、よく注意して見ないと分からなかったが、殴る瞬間にその男の拳が異様な光に包まれている。

 一瞬過ぎてよく分からないが、あれが俺を吹き飛ばした力だと思う。

 ミアとリーシャはその事を知ってか知らずか受け止めようとせず、回避に重きをおいている。


 「もう、観察はいいかな。じゃ、仕返しに行こうか」


 斗和は肩に付いた壁の破片を払いのけ、思い切り地面を蹴る。

 疑似瞬間移動。

 すぐ目の前に男の顔が映され、一瞬の内に消える。

 男が使った瞬間移動とは違い、斗和のそれはものすごい音が鳴り響いた。

 床がへこむ音と、男のみぞおちがへこむ音だ。

 そして、男は吹っ飛ぶという形でステージへと返される。


 「トワ様、大丈夫でしたか」

 「ああ、うん。大丈夫だよ、てか俺ってどれだけ化け物じみているんだろうな」

 「トワさんは最強ですね」

 「トワは昔、最強を目指してた。ぼそぼそ(暗黒滅殺拳とか)」

 「うっ」


 コマチという伏兵からの攻撃に胸を抑える。

 幸い他の仲間には聞こえなかったようだが。

 そして、ステージに送り返された男はというと、ステージに頭から刺さり気を失っていた。


 「おい、バージ生きてるか?……だめだなこりゃ伸びちまってる、仕方ねえ俺が行くしかねえか」


 アイテムポーチから剣を取り出しこちらを睨む。


 「俺達の邪魔をするならお前らには死んでもらうこととなる」


 リーダーの男からは先ほどまでは感じなかった濃厚な殺気と気迫を感じる。

 剣をまるで居合のように後方へと携えた。


 「さよならだ、エルフとその仲間、それとおまけに貴族さんよ」


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