奴隷オークション
pv40000達成。
ありがとうーー♪
今回めっちゃ前の伏線を回収するので(最後の最後で)、忘れていると思うから31話確認!!
見なくても、まあ大丈夫だけど……。
「お待たせしました、次の商品は奴隷です」
やっと来た。
この時のために夜に頑張って狩りをしたんだ。
今の手持ち金は3億パラル。
はっきり言ってしまうと、3億パラルあればちょっとした城を建てることが出来る。
「よし、来た。さて、あの娘は……」
まず、最初にゲージの中に入れられた小人族の少女だった。
鎖に手と足を縛られており、俯いた姿はどこか痛々しい。
「酷いのう」
「ああ、ひどいなぁ」
その姿を見た司会はスタッフを呼び寄せる。
「おい、こいつを立たせろ。ちゃんと顔を見せるんだ」
そういった司会の男に従うように、スタッフがゲージの一部を開け後ろから棒のような物を突いて、立つように促す。
司会の男の命令は普通の人には聞こえなかったが、俺達には鮮明に聞こえた。
そして、これから行われることも。
「うぐぅぅぅぅぅ」
スタッフの棒の先から微弱な電流が流れ、少女の体が痙攣する。
その際に顔がちらっと見えた。
その顔は苦しみに耐えるかのように歪ませており、怒りが滲んだような目をしていた。
「あの野郎」
「耐えてください、トワさん」
「耐えて、マスター」
メルとコマチに優しく体を押さえられる。
その押さえる手も俺と同じく怒りに震えていたが。
そして、小人族の少女は無理やり顔を上げられさせ、彼女のオークションが開始される。
「では、彼女は小柄ですが美しく、一級品といってつかえないでしょう。なので、今回は2000万パラルからスタートとしましょうか、ではスタートです」
司会の男の言葉ともに番号が次々と表示される。
価格がどんどんと高騰していく。
そして、4200万パラルに来たところで勢いが目に見えて落ちてきた。
「さあさあ、4200万です。他に誰かいませんか?いないのならこれにて終了ですよー」
迷ってしまう。
小人族の彼女を助けてあげたい気持ちがあるが、今回来た目的は彼女ではない。
今の手持ちから言うとぜんぜん余裕があり、買えないこともないが。
やはり、正直に言うと保険として3億パラル全部残しておきたい気持ちがあった。
少女の顔が絶望に染まっていく。
彼女の目から涙が零れ落ちる。
「だあ、くそ、しょうがねえ」
勢いに任せて番号を押す。
自分の番号である562番が前の掲示板に表示された。
「おっと、ここで562番の方が押してくださった。よって、4300万となりました」
これで、前の4200万の奴が押すかどうかだが……。
「おっと、再びプッシュ。4400万となりました」
「その気ならこっちもやってやんぜ」
「ト、トワ様一体なんで押してるんですか!?そんなお金持ってないですよ」
「助けたいからって、持ってないものを出せないですよ」
おっとそういえば説明してなかった。
夜の狩りの事を隠していたんだったな。
「実はな、これ」
アイテムポーチからぽいっと、出されたのは金貨が入った袋が三つ。
一つ一つが大きいのにそれが三つもあるのに、リーシャ達は驚き固まった。
「い、一体これは何ですか」
「よくぞ聞いてくれたメル、これは金貨の入った袋だ」
「いや、そういうことではなくて」
「トワ様、一体これをどこで手に入れたんです?」
ミアが不思議そうな顔で、袋を突いていた。
ミアはリザードマンという魔物なので、これがどのくらいのお金なのかをまだ理解できていない。
なので、別段金貨の数で戦いたりはしなかった。
「ミア、これはのう、恐ろしいほどの数のお金での、これだけで武器屋の武器全部買えるぐらいあるのじゃ」
「なんと、そのようなお金が……」
最近、ミアに一般常識について指導しているリーシャから説明が入る。
でも武器屋で例えるのはどうよ、と思ってしまうが、まあ好きな物を含めて教えるのは効果覿面なのだろう。
説明を聞いたミアの目がいつにも増してきらきらとしている。
最近思うんだが、ミアのイメージが最初の頃とだいぶ変わったかのように思う。
自分に対して遠慮というのが無くなってきたのか、安心して自分の本性という物がにじみ出ているのか、とても明るく一日を楽しく生きているかのように思える。
俺はそれを好ましく思う。
でもね、それとこれとは別で――。
「ミア、武器は買わないからな」
「ひうっ」
伸ばしかけていた手をすぐに引っ込める。
無意識に伸びていった手ををもう片方の手で押さえつけた。
そんなにしないと欲望を抑えられないのか……。
「また、いつかな。その時に買ってあげるから」
「はい、す、すみません」
先ほどの行動が恥ずかしかったのか顔を赤らめて俯く。
「質問に答えてください。トワさん」
おっと、忘れてた。
つい、ミアがかわいいからじっとその様子を観察していた。
「そういえば、言ってなかったな。実はな昨日の夜――」
なぜこんな大金を持っているのかについて詳しく説明する。
説明するといっても狩りをして、稼いだというだけなのだが。
その話をしながら、俺はオークションから意識を外していない。
今のところ値段は膨れあがって5000万パラルまで到達してしまった。
「これでどうかな5100万だ」
「おおっと、また増やす。一体どれだけ上がるのでしょうか」
値段で対決している相手は、なぜこんなにもこだわるのか分からないがここは譲ってもらおう。
相手がボタンを押さず、時間が経っていく。
「これでおしまいか。残り5……4……3……2……1、0これにて終了です。5100万パラルで落札となります」
「よし、これであの娘は大丈夫」
これで一人救えたと思う。
今回の奴隷オークションは全部で5人らしいので、全員は助けることはできない。
まあ、できるだけ助けたいとは思うが。
「それでは次に参りましょう」
テンションの高い司会に呼ばれたのは、屈強な男だった。
その男は鎖により雁字搦めにされており、あれではまるで猛獣を捕まえているようだ。
司会の男の説明では、ラーマの国から遠く離れた国の将軍だったとか、戦争中に率いていた軍が壊滅したことにより敗走、そして国に捕まり奴隷として売られたらしい。
その屈強な奴隷は鎖で縛られていても衰えぬ覇気を持っていた。
「こいつは大丈夫そうだな」
なんか助けなくても自分でどうにかして生きていけそうだ。
うん、大丈夫だろう。
そういうことでここは流すことにする。
こいつは近くに置いときとくはない、という他意はない。
「最終金額は3200万です。これはなかなか上がりませんでしたね」
俺と同じ気持ちの奴が結構いたのだろう。
緩やかに値段が上がっていった。
そして、三人目はまたも男性。
それもほそぼそとした触れば折れてしまいそうな奴だったので、なぜこのオークションに出されているのか疑問に思った。
それは次の司会の説明で解消されたが。
「この男、弱そうですが。持っている魔法は超一流、この男の目には真実しか映らない。そうこの男は真実の魔眼持ちなのです」
周りがざわつく。
そこまでざわつくことだろうか。
確かに真実しか見えないわけだから嘘をついてもばれるというのはある。
「なぜこんなにざわつくんだろうな」
「ここには王族や貴族が多いんですよ、政敵の発言などに含まれる嘘などが分かったならそれは脅威でしかありませんから」
「なるほどな、情報戦で有利となるわけか」
メルの説明でなぜ周りが大きくざわついているのか理解できた。
そりゃざわつくし、俺達はあまりざわつかないわけだ。
そして、せりが開始され最終的に真実の魔眼を持った男性の金額は8400万で決まった。
後で知ったことなのだが、魔眼の中でも真実の魔眼はとても希少で、今のところこのオークションに出ている男性以外で2人しか確認されていないらしい。
その後4人目も男性で勇者の血を引く者とかなんとか、まるでド○クエの主人公のような人物がオークションに出されていたが、彼は何かの運命に立ち会っているのだろう。
オークションに出されているというのにその静観な顔立ちは崩れることはなく、ただ前を真っ直ぐと向いていた。
確かド○クエにも奴隷となった主人公がいたような気がしないでもない。
こいつも、うん大丈夫そう。
ということで、強く生きろ。
「そして、今回の大目玉です」
盛大な音楽と何色もの光によってステージがライトアップされる。
五人目。
ここまで出てきていない、町で見た獣人の少女が今回の大目玉だったらしい。
ステージの袖からゲージに入れられた獣人の少女が現れる。
ここが勝負所だ。
「この獣人族の少女は、なんと獣人の王族の血を引いており、獣人の王の力の一部が使えます。その力は一部の魔物を操るというもの、これほど稀有な存在は今まで見たことはない」
司会の男性もとても興奮しているようだ。
さあ、ここからオークションが開始されるというその時。
ブツン。
音とともに全ての光が消える。
会場はまた最初の暗闇へと戻った。
「どういうことだ」
「なんだ、演出か?」
「早くしてくれよ」
ちらほらと文句の声が聞こえてくる。
その中で耳の良いメルはこれが演出ではないことが司会の男とスタッフの話し声から分かった。
「どうも、魔道具が何者かによって壊されたようですね」
「ほう、何者じゃろうな」
「じゃあ、これは意図して行われたことなのか」
「そのようですね、おまけに声を届ける魔道具も壊されたそうです」
「俺達も警戒しなくちゃな」
「そうですね、トワ様はこの剣にかけて守ります」
と立ち上がり、ミアが言って背中に手を伸ばすがそこには剣が無い。
「入り口のスタッフに預けたんだよな」
「は、はいぃ……」
顔を赤くして座る。
それにしても誰がこんなことをしたのだろう。
周りはさすがにまだ明るくならないことに疑問を抱き始める。
「おい、何かおかしくないか」
「確かに様子がおかしいな、故障か?」
疑問が波のようにオークションに参加している人に広がっていくなか、次は会場全体に光が溢れる。
「うっ、まぶしい」
「目が、目がーー」
横で目を抑え、抑揚のない声でコマチがあの有名なセリフを言う。
なぜそのセリフを知っている。
ツッコミはせずに今の状況を正しく理解しようと努める。
「俺達はドーラ、バンの血を引く者だ」
襲撃者達はそう言い、この会場を包囲したのだった。