情報収集といったら
森の中を颯爽と抜ける一陣の風。
その先にはこの森では上位のヒエラルキーにいたサイクロプス達。
そして、その風は必死に逃げる彼らに追いつくと彼らの頭に風が凪ぐ。
「ピグッ」
一頭の悲鳴にならない声が聞こえた瞬間、五匹ほどいたサイクロプスの頭は宙を舞う。
そして、サイクロプスを追っていた者は、一息ついたといった様子で振るった剣を鞘に納めた。
「よし、これで討伐終了」
「トワ様、もう体の動かし方はばっちりですね」
「いや、まだ技術がな」
さっきのは力技を使っただけ、平和な世界にいた斗和は剣術など武道は一切したことがなかったため、ただ単に剣を振るうことしかできない。
なのでミアには今も技術で剣の勝負で負けている。
まあ、その剣を振る速度は尋常ではないが。
「こっちも終わりましたよー」
「おお、メルのほうも終わったか」
茂みの奥からメルが大きな狼の死体を魔法によって浮かせながら、現れた。
この魔物の名前はメリウルフというらしい。
メリとはこの地方の方言で大きいという意味らしく、そのまま大きな狼である。
「トワ様も終わった?」
「ああ、終わったぞ。コマチこれを運ぶのを手伝ってくれ」
「うん、分かった」
コマチは返事をした後、その場でくるりと回った。
するとコマチの少女の体に筋肉が尽き、一回り大きくなった。
「コマチ、ドワーフモード」
「なあ、いつも思うんだがそのくるっと回る仕草は要らないよな」
「これは必要、気分は魔法少女」
そういうドワーフの少女となったコマチにサイクロプス2体を運ばせる。
言い忘れていたが、ここは商売の国――ラーマから北に進んだところにある森で、俺達はここを拠点として狩りをすることにした。
なぜか、それは朝の事――。
「情報収集といえば、やっぱりあそこだろ」
「どこですか?」
「?」
「それはどこなのじゃ」
「酒場に決まってる、マスターが良い情報を持ってると思うぜ」
「な、なんか今日のトワさんテンション高いですね」
「そうじゃのう」
「定番、だよね」
その通りだ、と唯一自分の記憶を見たことのあるコマチにぐっじょぶとハンドサインをする。
コマチも少しキメ顔でぐっじょぶする。
そして、この方針に異論があるのか聞いてみたが、異論はなくすぐに酒場へと向かうこととなった。
十五分後。
「君たちに教える情報は何一つ無いよ」
ダンディーな酒場の店主にそう言われ、店を追い出されてしまう。
何がいけなかったのか。
それは……。
「冒険者のランク低いのがいけねえのかよ」
「まさかランクによって客を分けるとは」
「思いもしませんでした」
商業の国では自分のステータスは大切。
財力でもいい、冒険者の実力でもいい、何か実力を示すものがあれば、それはこの国では上位の者として扱われるらしい。
逆に何の力も持たない者はゴミとして先ほどのように追い出される。
まさに実力重視であるため、種族関係ないのかもしれない。
ならその実力ってやつを証明しなくちゃな、と来たのがラーマの冒険者ギルド。
この国は商業の国であるため、お手軽な薬草収集から討伐まで幅広くたくさんの依頼がボードに張ってあった。
「おう、嬢ちゃんたちも冒険者かい」
「へへへ、可愛い子ばかりじゃねえか」
「あ、もうその反応は結構ですから」
その反応はマルバーン王国の冒険者ギルドで見飽きた。
そのため今回は相手が怒ってこっちに危害を加えようとする前に、こちらから手を下す。
「はい、ばいばい」
「な、ぐえ」
「は、ぐふ」
腹パン一発で相手の意識を刈り取る。
この技術は魔物相手と戦っている時に身に着けたものだ。
そして、いつも通りギルドの外に投げつけて終了。
「これがいいんじゃないか」
そして、何事も無かったかのように適当な依頼を持ってくる。
「おい、俺達の仲間になにしてくれとるんじゃ、ボケが」
「どう落とし前付けさしてもらいまひょか」
見るからに冒険者?となるような獣人の二人組が近づいてくる。
「俺たちゃ、この国で一番勢いのいい冒険者……グレンマー、ぐふっ」
顔がむかついたから顔に一発ジャブを入れる。
そして、もう一人。
「へぶっ」
顎をさする気持ちでフックを決めると脳震盪を起こし座り込んでしまう。
そして、あたかも今までなにも無かったかのように斗和達は依頼を持って受付に行き、受注を済ませた。
なぜか、受付嬢の顔が引きつっていたが……。
気にせず討伐の依頼を受け北の方向にある森へと向かった。
そして、今に至る。
「よし、これで依頼は達成だよな」
「は、はい、確認しました。確かにメリウルフとサイクロプスです」
「よし、これで俺達も金ランクだな」
「やっと、終わったのじゃ。疲れたのう」
「クレイモアのいい練習相手でした」
「それじゃ、終わったことだしちょっと観光しようよ」
「賛成」
受付嬢に依頼のサイクロプスとメリウルフの死体を確認させ、依頼を終了させる。
長かった、やっと紙ランクから金ランクへとなれた。
そう思う斗和だが、まだ一日も経ってない。
ゆえにこういうことも起こる。
「ちょっと待てい」
「ん、なんだ、おっさん」
「おっさんではない、私はこの冒険者ギルドの長、ペインという」
「で、そのギルド長がどうしたんですか」
「実はお前達に依頼の達成速度がおかしいということで、違法なことをしているのではという疑いがかかっている」
「いや、自分で戦って討伐しましたから」
「証拠はあるのか、うん?ないのだろ、当たり前だなお前達が倒したわけではないのだからな」
話の雲行きが怪しいな。
このおっさんは今更しゃしゃり出て何を言いたいのか。
「いや、倒したのは俺達なんで、じゃ」
「待て、話を聞かないならその金ランクを剥奪するぞ」
「それは横暴じゃないのか」
受付嬢さんは困ってまごまごしている。
ちょっとかわいい。
と、そんな場合じゃねえな、このおっさんの真意は何なのかだが。
「横暴ではない、だがそうだなチャンスをやろうではないか。こいつを殺したら金ランクだと認めてやろう」
おっさんが内ポケットから取り出した紙には――。
「盗賊ドーラの討伐」
その紙には盗賊ドーラが獣人族で、最近この国で品物を盗んでは姿をくらます神出鬼没の盗賊と書かれている。
そして、こいつの素顔などを見た者は居らず、男なのか女なのかも分からない。
はっきり言って無理ゲーだ。
「こいつを討伐じゃなく、捕まえたなら報酬金も出そう、どうする?」
「うーん、皆はどうする」
「おっさんを殺したらどうでしょう」
ミアがおっかない事を殺気を放ちながら言うもんだから、おっさん死にかけてるよ。
ほら、息が出来てない。
「げほげほっ、何ださっきまで息苦しかったが」
「殺気に気づかないおっさん、すげえわ」
「のう、受けたらいいと思うのじゃが」
リーシャはごく当然という風に言う。
なぜだろうか。
「まあ、盗賊風情どうとなるとおもうのじゃがな、まあ勘じゃ。それにのうこれも勘じゃが、その盗賊に会っといた方が良いきがしての」
「なるほど、ならリーシャの言葉を信じようかな」
「では、受けるのか」
「そうするよ」
「おお、そうか。では依頼達成の言葉を待っておこうかな、おお、そうだった期限は三十日までだ、それを超えると金ランクはお預けだな」
そう言うなり、おっさんはギルド長室へと帰っていく。
いらいらするが、あれがギルド長なのだからしょうがない。
「どうすっかな、まじで」
実際、どう探すかは決まっておらず誰なのか、男なのか女なのかも分からないのは厳しい。
ま、リーシャ曰く会った方が良いと言っているので、会ってみようとは思うが。
悩んでもしかたないし明日にすっか。
と、明日の自分に丸投げし今日はもう休むのだった。




