思惑の渦
遅くなりました。
少しスランプに入ってまして、なかなか抜け出せない抜け出せない。
一週間一話投稿を原則としてこれからもがんばりたいです。
それじゃ、どうぞ。
「呼びつけてすまない、ごほっ、少し話があるのだ」
今もまだ苦しそうにしている王はベッドに座りながらも話しかける。
三嶋悠太によって毒に犯され、動きもゆっくりとしか動かせないようだ。
今、王城に暮らしているクラスメイト全員が王の御前に集められていた。
だが、集められたのは煌びやかな王室ではなく王の寝室の一つで、横には心配そうに見ているメフィア王女が立っている。
急に呼ばれたため、ある者はパジャマで、ある者は武装していたりと様々な格好をしていた。
「今から話すことは他言無用としてくれ」
「…………」
ゆっくりとした口調で王が話したのはこの国の成り立ちだった。
一般的にはこの国は昔の勇者がここにある土地を切り開いて国を作ったという事になっている。
しかし、王が話したのは別物。この国の裏の歴史だった。
昔のこと、人間達は魔物に命の危機に晒されながら生き、他種族と共に生きていた時代。
彼ら人間達の生活は苦しかったが、その生活には今にはない素晴らしさがあった。
他種族の子供達が遊び、生活の中で足りないところを補い、笑顔があふれる良い場所。
今よりも人間の数が少なく、国はなく大きな集落みたいなものが形成されていた。
そんな日がいつまでも続くと誰しもが疑わない。
そう、永久に続くと思われたものもいつしか時が変えてしまう。
一人の人間によって。
「メフィルー、ご飯よー」
「はーい、ママ」
メフィルはどこにでもいる人間族の少年だ。
ママのことが大好きで、エルフの友達や、ドワーフの友達などたくさんの他種族の友達が好きで、毎日彼ら彼女らと遊んで一日を過ごしていた。
今日も夜ご飯をママが用意してくれる。
この生活がとても好きで、いつまでも続くのだろうと信じていた。
「ごちそうさまー、じゃあ、水浴びしてくるー」
「あ、こら、急がないの」
母親の忠告も聞かず飛び出したメフィルはすぐさま集落の近くにある湖へと向かう。
そこでは、人間族だけでなく他種族も利用している。
「あ、ライオット」
「おう、メフィルも入りに来たのか」
今は確かエルフとドワーフの入る時間帯だった。
なので、今目の前にはドワーフの少年であるライオットが水浴びをしている。
ライオットはドワーフの族長の息子で、土魔法に秀でておりその腕はもはやいっぱしの大人でさえ負けるほどに上達している。
それに比べて人間族であるメフィルは種族の特性からか、才能の無さからか魔法が一切使えず、また剣の才能も持ち合わせていなかった。
その事を知ったメフィルは当時同年代の子に対し嫉妬という感情を抱いていたが、自分にも才能はあると信じ様々な魔法の発動を試したり、武器での鍛錬をこっそりとしている。
耳の良いエルフ達や獣人族達にはばればれであり、皆は温かい目で見守るという決定になったが、本人は知らない。
メフィルが服を脱ぐとそこには、まだ小学高学年の歳であるメフィルの体に鍛錬によりついたであろう筋肉があり、それは努力の賜物であるのが見てとれる。
「どうしたの、僕の体に何かついてる?」
「ああ、いや、なんでもないよ」
目を体のあちこちに向けて確認をする。
そんなメフィルを見てライオットは微笑を浮かべた。
「さ、一緒に入ろうぜ」
「うん」
湖のふちの辺りに作られたでっかいお椀のようなものに体を浸からせる。
このでっかいお椀状のものはドワーフ達が作った魔道具の一つで、冷たい湖の水を温かくしてくれて、かつ体に着く不純物を除去してくれる効果がある。
「「あ”あああ」」
二人おっさんのような声をだしながら肩まで浸かっていく。
水温は熱すぎず冷たすぎず適温といっていい。
周りで同じお椀状のもに浸かっているエルフとドワーフがその様子にくすくすと笑っていた。
「ねえ、いつも思うけどその布邪魔じゃない」
メフィルが言っているのはいつも湖で水浴びしている時にライオットが体を覆っている布についてだ。
ライオットはその事に触れられ、聞かれたかと顔を歪ませる。
「いや、その、実はこの布を巻いてないといけないんだよ。えっと、族長の息子だから」
「ふーん、そうなんだ」
「おう、そうなんだよ」
ライオットは何か隠そうとしているのは分かったいるが、友達のことだからいつか教えてくれるだろうとメフィルは深く聞かないことにする。
それから何も言わず、体が十分に温まるのを二人で待つ。
太陽はゆっくりと落ちていき、もうすぐで夜の帳が落ちてくる。
この風景をメフィルは見るのが大好きだった。
一日の終わり、今日も何事もなく終えることが出来ると心が穏やかになれる。
「きゃあああああ」
この悲鳴が響くまでは。
「おい、大丈夫か」
「一体何をしているんだ」
エルフの一人は腕を刃物のようなもので切られ、流血している人間の女性を抱き起す。
女性は力なくうなだれている様子であるため、毒でも食らったのかもしれない。
そして、もう一人駆けつけてきたドワーフの少年はこの事態を引き起こしたであろう人間の少年を睨みつける。
その人間の少年の手には一振りのナイフが握られていた。
そして、ぶつぶつと何事かをつぶやいていた。
「だめだ、だめだ、だめなんだ。人間は、人間こそが……」
ナイフを握っていない左手で、頭を押さえながらうわ言を言う。
目は虚空を見つめているようで、定まっていない。
「おい、何があった」
「どうした、キロ。お前がやったのか!!」
どうも、人間の少年はキロという名前らしい。
同じ人間族の声を聴いたとしてもまったく反応をしないキロに対し、近づくと。
焦点の定まっていなかった目がふと、近づいてくる人間族の青年を見て。
「あぐっ」
その腹にめがけてナイフを突き刺した。
突然の行動に対応できなかったために、ナイフは内臓を傷つけながら深々と突き刺さる。
「はは、はははは」
そのまま近くにいるエルフの女性へとナイフを振り下ろすが、驚きから覚めた周りのエルフの魔法防壁によって防がれる。
「こいつを取り押さえろ」
「あああああああ」
「はやくするんだ、何だこいつの力は」
ドワーフという腕力に秀でた種族が後ろから抱きしめ、動けないよう拘束していたがその拘束が単純な腕力により緩む。
貧弱な種族である人間族では出せない力である。
「どういうこと、何が起こっているの?」
「おいおい、これはどういうことだよ」
その騒動にメフィルとライオットも駆けつけてきた。
今目の前で起こっているのは人間族の暴走というものだった。
一人の人間族の青年によって傷つけられたものは、力を失い地に伏せる。
そして、集落の東の方向からは火の粉が舞いあがる。
「何がおき、てるの……」
頭が真っ白になる。
さっきまで、いや今までの平穏な一日はどこにいったのか。
「おい、メフィルまずはお前の母ちゃんが無事か確認しなくちゃいけねえだろ」
「う、うん」
「さあ、行くぞ」
茫然としているメフィルの手をとって、ライオットは走り始める。
が、しかし。
「おいおいおいおい、ここにドワーフ族族長の息子がいるじゃねえか」
「はは、こいつは使えるな」
目の前には暴れていた少年と同じ目の焦点が定まっていない者が二人。
その中にはいつもお世話になっている狩人のおじさんの姿もあった。
「くそ、何でお前らはこんな事をするんだ」
「あ、人間だからだよ」
「は?」
「人間は弱い、だから人間の居場所はいつの間にか無くなってしまう」
「誰がそんなことを言ってんだよ」
「王だよ、人間の王」
人間の、王?
そんなもの聞いた事がない。
確か人間族などをまとめる族長はいたはずだが。
「王は俺達のような力を持たない者に絶大な力を渡してくれた」
「この力なら俺達でもドワーフの腕力に勝てる、エルフの魔法にも対抗できる、獣人の速さにもついていける」
そう言いながら、手には人間の頭ぐらいの大きな火球が生み出される。
それは元から人間が持てる力ではなかった。
ましてや、近接職である者に関しては。
「こいつら、やべえな」
「ライオット、どうしよう、僕たちじゃ勝てないよ」
「諦めるなって、あいつらはまだ油断している。お前もただ無為に毎日を過ごしていたわけじゃねえだろ」
「っ!!」
それは日々の訓練のことを言っていると理解し、こんな状況であるにも関わらず驚く。
そんなメフィルにライオットはそんなに驚くことか、と不思議に思う。
「おい、メフィル。今から人間の時代が来るんだぞ。おじさんとまた楽しく狩りができるんだ他種族に邪魔されずにな」
「そうだぞ、人間の世界がもうすぐで来るんだ」
いかれている。
そう思っていると横からライオットによる合図がされた。
その合図は遊びの中で使われたもの――すなわち隙を見て逃げろというものだ。
それに了解の意を示し、その隙を伺う。
「そうすりゃ――」
「いまだ」
話に熱中している男達に隙とみて、一人のすねを蹴る。
いつも訓練によって型にはまったような蹴りだったがそれゆえに蹴りは速く、適格に足一本を持って行った。
「あがっ、い、痛ってえええ」
感触てきには骨にひびが入ったぐらいだが、それでも少しの間は動けないだろう。
その間にもう一人に捕まらないよう、ライオットは左にメフィルは右に分かれて逃げる。
ライオットの向かう先はドワーフ族の族長――ライオットの父がいる所で、メフィルが向かうのは自分の母親との住まいだった。
「ママッ」
そのままの勢いのまま家の中へと転がり込むと、そこには母親の冷えた体があった。
近くにより揺らすも起きる様子はなく。
胸のあたりに刺された傷跡があるが、なぜか血が出ていない。
顔は血の気が引いたような表情をしており、苦痛に耐えたかのような死に顔だった。
「…………」
言葉がでない。
ママの手は冷たく、そこにはもう以前の温もりは感じなくなっている。
怒気、怯え、困惑、狂気、悲しみ、殺意、無気力感、全てが心の中で渦巻き。
そして、メフィルの心は壊れた。
耐えられなかったのだ、今までに感じたことのない感情の波に彼の心が耐えられるはずがない、しかし、ただ耐えられず心が砕けただけだったらどれだけ良かったか。
壊れた心は必要がないと思われるものを排除しながら、再生していく。
そして、できあがった心は異様なものだ。
「殺す」
「憎い、人間が憎い、ママを殺したやつが憎い、この騒ぎを起こしたやつが憎い、憎い憎い憎い……」
立ち会がったメフィルは家にある護身用の剣を手に取る。
あまり切れ味は良くないが、そんなことはメフィルの頭にない。
そのまま家を出るとたくさんの煙が集落を包んでいた。
この世の終わりを彷彿とされる光景のなかメフィルはゆったりとした動作でライオットの向かったドワーフ族長の家へと向かう。
「お前達人間のせいでこんなことになったんだ」
「うるさい」
向こうの方からエルフが魔法を放とうとするが、その魔法の発動方法を知っているメフィルにとってその動きは緩慢に見えた。
そして、すぐそのエルフのところに走り首を剣で切る。
切れ味が悪いため刃は首の半ばまでしか通らなかったが、頸動脈は切れたため血が噴き出る。
「あぎゃ」
そのエルフの最後の声だった。
「仕方ないよね、あっちから攻撃してきたんだから」
メフィルは何でもなかったかのように歩を進める。
歩いている最中に人間や獣人、エルフやドワーフなど怒り狂い、また手を差し伸べた者達を切り捨てた。
なんだか力がわき出るような感覚だった、しかし、メフィルはそんなもの関係ないと目的の場所まで歩き続ける。
この時メフィルの体には精神的なショックを受けたからか、スキルが解放されていた。
そんなことにも心がすり減ってしまったメフィルは気づかない。
ドワーフの住んでいる所にあともうすぐというところで。
「いや、やめて」
聞きなれた友人の声が聞こえた。




