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メルとデート

投稿、し、ました……。

(明日が月曜ということを思い出した作者)

 ミアのデートの次の日。

 今日はメルとのデートが待っている。

 今日の予定としては、メルと最近できたサーカス?みたいな見世物を見に行くことが一番の目的だ。

 サーカスと自分は言っているが、正確には名前は違い、また地球のサーカスと違って魔法も使ってのものなのでとても迫力があるらしい。

 宿屋の前で一人待っていると今日のデートの相手が出てきた。


 「お待たせ」

 「おう」


 振り向くとそこには純白のワンピースに身を包んだ、麦わら帽子の女の子が立っていた。

 その格好がとても似合いすぎて、見とれてしまう。

 なぜかその少女とその周りが輝いているかのように見えた。


 「どう、トワさん」

 「とても似合ってるよ」

 「それは良かった、エルフは小柄だからこの格好が合うかなって」


 その場でくるっとまわってみせる。

 ワンピースの端が遠心力により上にあがり、結構きわどいところまで見えた。

 メルは気づいているのかいないのか笑顔を見せて腕をつかんできた。


 「さあ、行こ」

 「ああ、うん」


 腕を組むと自然とメルの麦わら帽子が見え、そこからちらちらと覗く尖った耳の先端が赤くなっていたが、気づかないふりをして目的の場所へ歩きだした。

 商店街。

 そのサーカス見たいなものがあるのは商店街の横にある広場で、今日その最初のお披露目があるためか商店街が今までにない活気を見せていた。

 いつも見かける店の他に、出店をしている人が結構見られる。


 「今日はすごい人だね」

 「そうだな、これははぐれたら危ないな。迷子になったらまずいからちゃんと掴んでて」

 「もう子ども扱いをしないでよ」


 半分冗談で言ったことに対し、メルはすねたかのように言い返すが素直に体の距離を近づけてくれる。

 言った自分がその行動に対し、心臓の鼓動を速くしていることに気が付いた。

 メルに知られないか、と恥ずかしく思いながら商店街を一緒に歩く。


 「あれ、メルちゃんじゃないか。今日はデートかい」


 生花店のおばちゃんがメルに声をかける。

 このおばちゃんはこの商店街で食材を買っている時に、店の前で腰を痛めて苦しんでいたところをメルが魔法によって腰痛を直したことからメルが懇意にしている人だ。

 前に食べれる植物やその他の役に立つことを教えてもらったりしたことがある。


 「はい」

 「そうかいそうかい、じゃこの花が必要だね」


 そう言って生花店のおばちゃんは一輪の赤い花をメルに渡す。

 メルはその花を見て顔を赤くしていたが、確かその花の花言葉みたいなのがあったはずだが良く思い出せなかった。

 メルはその花を耳にかける。

 メルの尖った耳が公に晒されていた。

 その耳からはメルがエルフであると知られるが、もう隠さないことにしたのだ。

 メルだって女の子だからいつまでも耳を隠した服装をするのはかわいそうだし、それに俺達は自分を守れるほど強くなったと自負している。

 そのためもう隠さないし、逃げもしない。

 最初メルがエルフだと知った生花店のおばちゃんの反応は少し驚いただけで、それからはいつもと変わらず接していたためにメルにとってはその反応は良かったのだろう。

 メルも今ではこれが普通だ。

 だが、こうしてエルフである証拠を晒す行為は特に面倒事に巻き込まれる。


 「おい、あそこにエルフがいるじゃないか」

 「やだわ、けがらわしい」


 遠くの方から見るからに貴族と分かる馬車に乗った窓から声が聞こえてきた。

 これで二回目だ。

 実はこの世界の人間は他種族を嫌っているのに、その他種族を労力として利用し、また自分の欲望を満たすためにも利用している。

 その辺でこの人間の国では他種族は身分が奴隷よりも下という認識だ。

 この認識をまず直さないと人間と他種族が手を取り合うことはできない。


 「本当に……うん?よく見ると綺麗な顔をしておるな」

 「パパ、俺もあれが欲しい」


 下品な笑みを浮かべ、メルを見る親子二人。

 奥さんの方はその二人にやれやれといった顔で興味を失ったのか視線をメルから外す。

 馬車の扉が開かれた。

 相手は貴族だからあまり刺激せずに――――。


 「おい、そこのエルフはお前のか。いい値で買ってやるからこっちへ連れてこい」

 「はあ?」


 貴族のおっさんがいきなり何を言うのかと思えば、メルを買うとかほざきやがる。

 斗和はその言葉に頭に来て、さっきまで穏便に済ませようという考えが頭の中から吹っ飛んでしまった。

 貴族の馬車には護衛が三人。

 それに比べてこちらは二人のために数でいえばあちらが勝っている。


 「聞こえなかったのか、これだから下賤の者は……それを渡せと言うんだ」

 「ああ、何言ってんだおっさん」

 「な、おっさんだと、子爵である私になんとぶれいなそいつをなぶり殺せ」


 馬車についていた護衛がやれやれといった感じで、こちらに近づいてくる。

 彼らにはひ弱な少年少女に見えるのだろう。


 「貴族のいう事を聞いてりゃこんなことにならなかったのによ」

 「ま、これも社会勉強として学びな」


 悠然とした態度でいる護衛に対し、俺は。


 「何言ってんの、学ぶのはお前らの方だよ」


 一足で彼らの前に移動し、彼らの鎧にでこピンを食らわせる。

 ただそれだけでゆっくりと歩いてきた護衛達は馬車の方向へと吹っ飛ばされ、挙句に馬車に三人の鎧が刺さったへんなモニュメントができてしまった。

 そこでやっと冷静になり、目の前の光景にやり過ぎたと後悔する。

 馬車の方からは貴族のご婦人の途惑う声があり、それに対して貴族のおっさんの怒声が聞こえてきた。


 「おい、お前。子爵である私に手を出してどうなるかわかってるんだろうな」


 歪んだ馬車の扉からのそのそと虫のように這い出てきたおっさんはまだ状況を分かってないらしい。

 このおっさん実はこの商店街の人たちから嫌われている。

 というのも言動からも分かるように、平民に対して酷い扱いをすることが多々あるようだ。

 言われた本人であるメルも許せないだろう。

 そう思って横にいるメルに目を向けるときょとんとしていた。


 「トワさん、やりすぎじゃないですか……」

 「いや、でも、それはメルのことを物みたいにくれだとか言うあの貴族が悪いだろ」

 「ふふ、でもうれしかったですよ。あんなに怒ってくれるなんて」

 「あ、ああ……」


 こちらを上目使いで見るメルに心臓を高鳴らせ、さっきの行動が恥ずかしく思えた。

 斗和とメルの間にピンク色の空間が展開される。


 「おい、聞いているのか」

 「そうだぞ、パパもうあいつら殺しちゃって」

 「そうか、私もそうしようと思っていたところだ。さすが私の息子だ、それが貴族としての責任だな」


 遠くからうじ虫の鳴き声が聞こえてくる。

 そこで俺はまだ貴族のおっさんとその息子がいることに気が付いた。

 殺すとか言っているが、もう自分の私兵は馬車に頭から突っ込んで使い物にならないはずだ。

 一体どのようにして殺すというのだろうか。


 「おい、これはどういう状況だ」


 町を見回っていた衛兵さん二人が馬車の向こうの方から駆けつけてきた。

 そこで、その貴族のおっさんは衛兵に対し命令口調で言い放つ。


 「そいつは国家反逆罪だ。この私を殺そうとしたんだ助けろ」

 「は、はぁ」


 衛兵は貴族と俺の顔を行ったり来たりと見て、判断に困っている。

 ここは国に仕えている貴族を助けるはずなのだが。

 それはこの商店街の人達が許さないようだ。


 「その貴族が悪いのよ」

 「そうだ、あんちゃん達は悪くねぇ」

 「もう、好き勝手にさせてなるものか」

 「メルちゃんを渡したりしないわ」

 「そうだそうだ」


 声の中にはエルフであるメルを助けようというものもあった。

 それに関してメルは動揺している。


 「皆、他種族の私のために」

 「メルだからだよ。メルがこの商店街の人たちを変えたんだ」


 それは他種族と人間達が仲良く手を取り合える証明のように思えた。

 だが、その商店街の人達の声であっても衛兵達は貴族の権力には逆らえそうにない。

 このままではこちら側が不利だと思ったところで後ろの方から以外な声が聞こえてきた。


 「その人は悪くありません」


 後ろを振り向くとそこには小さな子供が立っていた。

 その面影はどこか見たことがあるが思い出せない。


 「なんだこのガキは……」

 「はっ、シリウス様。どうしてこのような場所に」

 「シリウス?」


 聞いたことがない名前だ。

 貴族のおっさんはその名前を聞いて正体が分かったのか、顔が真っ青となっている。

 子爵のおっさんがこんなに委縮しているのだ、何かあるのだろう。

 商店街の人達も困惑している。


 「お前達シリウス様の御前だぞ。頭を下げろ」


 衛兵は片膝をつきこうべを垂れている。

 その様子に一層困惑する商店街の市民達。


 「する必要はないですよ、頭を上げてください」

 「こ、これはシリウス様、今日はどうなされました」

 「それがですね、今日商店街を見て回ろうとしていたら騒ぎが起きていたのでどうしたのだろうと思いまして、駆けつけてきたんです」

 「そ、それはですね……」


 どれぐらい偉い方なのか分からないが、このおっさんよりは偉いのは分かる。

 おっさんが弁明しようとしても聞く耳を持たないのは、さきほどの一部始終を見ていたのかもしれない。

 さらにシリウスは俺達の前に出て追い打ちをかける。


 「今日あったことを伯父様にお伝えしようと思います、ドローネ子爵」

 「そ、それは、そんなことをしたら……くそ、くそおおおおお」


 ドローネ子爵は懐に忍ばせていた小刀を引き抜き、シリウスに向けた。

 いきなりの愚行に衛兵は理解が及ばず思考が停止する。

 その行為をされたシリウスもまさかそんなことになるとは思っていなかったのか、目を見開いていた。

 危ない。

 向けられた小刀の先に魔力が集まるのを感じ、この魔力の流れからそれは炎の攻撃魔法であることが予想された。


 「私はもう終わりだ。それならお前も死ね、小僧」

 「!!」

 「させない」


 シリウスの前にでて片手を前に突き出す。

 それと同時に小刀から放たれた炎の光線はその突き出した手の位置に収縮した。

 結構熱いが自分の手は火傷した後はない。

 どうも体も化け物じみてきたようだ。


 「シリウス、様だっけ。大丈夫ですか」

 「あ、大丈夫です。それよりトワさんの手は大丈夫ですか」

 「それなら、大丈夫……って俺名前言ったっけ」

 「あ、忘れてました。僕の名前はシリウス・マルバーン、マルバーン公爵家――メフィアン姉さんの従弟です」

 「ああ、なるほど」


 確かに言われてみれば似ている、先ほどの面影とメフィアの面影が重なった。

 挨拶は終わり、攻撃してきた本人を見ると防がれると思っていなかったのか、口を開けて茫然としている。

 衛兵は焦った顔でドローネ子爵を押さえつけ、本当の国家反逆罪で連れて行った。

 そして、連れて行く際にシリウスも王城に用があると去ってしまう。


 「また、近いうちに会えると思います、じゃ」


 シリウスは手を振って王城の方向に衛兵と共に歩いて行った。

 シリウスの姿が見えなくなった瞬間、静かだった商店街が活気を取り戻す。

 メルの周りに心配をしていた人達が集まっていた。

 こういうところを見ると、リヒトの夢は以外と実現可能なのではないかと思う。


 「トワさん、早く行きましょ」

 「ああ」


 集まりの中から抜け出し、腕を組む。

 サーカスのような見世物が始まる時間が結構近づいたきたので、その場所へと向かうことにした。





 その場所では大きなテントが張られており、その中で見世物を見せてくれるのはサーカスと同じだ。

 そして、さっきまでその魔法での演技をまじかで見れ、テントの外に出るともう太陽が赤く地平線に落ちようしているところだった。

 演技に関しては圧巻の一言だった。

 繊細な魔法の使い方によってテントの中の空間が幻想的なものへと変わっていたのを思い出す。


 「まさか、あんな使い方があったなんてな」

 「もしかしたら私達より魔法の操作がうまいかもしれないね」

 「俺はもう完全に負けてるな……」


 幻惑魔法、氷魔法、熱魔法、光魔法その全てを使っての複合魔法とでもいうべき演技は真似できそうもない。

 帰りはその魔法の演技について話しながら宿屋へと帰る。

 メルは最後に今日のデートはいろんなことがあったけど、楽しかったよと言ってくれた。

 宿屋の前に着き、今日のメルとのデートは幕を閉じた。



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