ダンジョン崩壊
Pv20000達成ありがとうございます。
私自身ここまでくるとは思いもしませんでした。
なかなかいそがしく最近は一週間投稿になっていますが、これからも楽しく書ければと思っていますので、応援よろしくお願いします。
「お、お兄ちゃんってどういう……」
「どういうことですか、トワさん」
抱き着いているミアとメルが不思議そうな顔を浮かべた。
そいつが言ったことに騙されるんじゃない。
「いや、お兄ちゃんじゃなくて」
「え、私の事を妹だと思ってなかったの、お兄ちゃん」
「いや、ややこしくなるからもう黙れよ」
いたずらに成功した、と少し口角を上げている。
誤解がないようその後この少女が人工魔法生命体であること、リヒトの夢を受け継いだこと、そしてそのリヒトから力を授かったことを順々に説明していく。
リヒトから授かった力に関しては、どのくらいのものかはまだ分からない。
それについては追々調べていこうと思う。
そして、最下層に飛ばされてから今までの話が終わり話の主導権は人工魔法生命体に移った。
「それでなんだけど、このダンジョンもうすぐで崩れる」
「いや、唐突」
「え、それはまずくないですか、私達って確か二十階層にいるんじゃ」
「今から地上に向かっても早くて半日かかると思うのう」
「それに関しては大丈夫、私はこのダンジョンを自由に動ける権限を持ってるから」
なんとリヒトが分かれる前にダンジョンでの権限をほぼこの人工魔法生命体に移したらしい。
それにしても……。
「名前ってあるのか、そういえば聞いていなかったんだが」
「名前……識別名はない。お兄ちゃんに付けてほしい」
「もうその冗談はいい……そうだなぁ、何が良いかな?」
「髪がトワ様と一緒で黒いからトワ様の国の名前を付けてみたらどうですか」
ミアが提案する。
確かにその方がいいかもしれない、良く見ると今の少女形態は日本人の顔の造形に近かった。
でもそれだとどのような名前が似合っているだろうか。
あまり考える時間も無いので、ふと思い出したことをから名前を付けてみることにした。
「じゃあ、名前はコマチでどうだ」
「コマチ?」
「えーっと、確か俺の国で絶世の美女と言われてた、かな」
確か日本の三大美人に選ばれていた気がする。
「コマチ……うん、それにする」
人工魔法生命体――コマチはそういうと優しげな笑みを見せた。
それを見て周りは癒される。
名前も決まった、と話が区切れた時に地面が揺れ動き始めた。
「うおっ」
「きゃ」
「ふん」
「ふむ」
「……」
その地面の揺れに俺は足から崩れ、メルは倒れこみ、ミアは揺れに合わせてバランスをとり、リーシャはどうにか立てているようだ。コマチはまず半分ゴーストみたいなものだから物ともしていない。
揺れはどれぐらい続いたか分からないがとても長く感じた。
「これはまずいな」
「ん、大丈夫。脱出する準備はしている」
それから二回目の揺れも起こり、床や壁にひびが走る。
天井から砂やほこりがぱらぱらと降り注ぐ。
「やっと、この日が来たのですね」
「うん、お前は確か……レーゲンだったか?」
「はい、そうです。そして、わが主の夢を継ぐ者――トワよ、無理にとは言いませんが虐げられている他種族を救ってくれませんか」
「ああ、できる限りそうするよ。俺もそうしたいしね」
「ありがとうございます、では、私はこれで」
そう言って立ち去ろうとするレーゲン。
「レーゲンはこれからどうするんだ?」
「私はこのまま主と、リヒト様と一緒にいようと思います」
「そうか……」
レーゲンも一緒に旅に来てくれるよう頼もうと思ったが、レーゲンの目を見て言うのを諦める。
レーゲンはリヒトと一緒に眠る。
レーゲンにとってそれが幸せなことなのだろう。
「分かった、今までありがとうな。リーシャ達のことも見守ってくれて」
「はい、それではあなたの旅に幸あらんことを」
そう言い残し、二十一階層につながる階段へと歩いて行ってしまった。
そして、最後に見せたレーゲンの笑顔はリヒトの記憶の中で見たものと一緒だった。
「トワ、準備完了した」
「分かった、皆もこっちに来てくれ」
リーシャ達を呼び寄せ、コマチを中心に俺、リーシャ、ミア、メルが囲む。
コマチが並んだ俺達を確認した後、ダンジョンを脱出するための魔法を発動する。
頭上に魔法陣が描かれ、魔法陣は俺達に向け下がってきた。
そして、魔法陣が下りきった時にはすでに誰もおらず、豪華に飾られていた二十階層は揺れによる破壊に見る影もない。
「最後に君に出会えて良かったよ」
リヒトは崩れゆくダンジョンを眺めながらそうつぶやくのだった。
ダンジョン入り口。
目を開くとすでにそこはダンジョンへの入り口だった。
周りには同じようにダンジョンに潜っていたらしい冒険者達がいきなりの転移に目を丸くしている。
「な、どこからお前達は現れたんだ」
「何が起こっている」
ダンジョンの入り口で番をしていた受付の人や騎士は、現れた大勢の冒険者に対し何か異常なことが起きているとすぐに王城へと報告を向かわせていた。
その間もダンジョンの崩壊は続いているのか、ダンジョンに再度入ろうとした冒険者が異変に気付く。
「おい、ダンジョンへのワープ機能が使えねえぞ」
「こっちもだ」
「入り口も塞がれちまってる」
「一体どうしちまったんだ」
冒険者が大騒ぎしている間に、王城の方からも数回にわたる地揺れに異変を感じたのか騎士や土地に詳しい専門家が馬に乗ってダンジョン前に到着した。
彼らは慌てるでもなく、今だ混乱している冒険者を端に寄せダンジョンの調査を開始する。
「今から私が魔法を使いますので、離れてください……よし、ここで大丈夫だろう。ソナー」
土地の専門家である中年のおっさんは手を地面に置き、魔法を発動させた。
その魔法は土魔法の系統にある魔法で、初級魔法であるが奥が深く、魔力を浸透させる使い方を極めることによってより詳しい情報が得られるとか。
ソナーを発動させて三分ぐらい経った頃、周りはだいぶ落ち着いてきた。
だが、次は土地の専門家が慌てだす。
「ない、ダンジョンが、ダンジョンが……ない!!」
「なんだと!!」
専門家の言葉に調査に来ていた騎士やそこにいた冒険者までもが騒ぎ出す。
俺達だけは何が起きているのかを理解しているため、特別騒いだりはしない。
「この場から去った方が良さそうだ」
「そうですね」
ダンジョンに潜っていた冒険者から話を聞こうと騎士達が冒険者を捕まえているのを見て、こそこそとダンジョンに潜る前に泊まっていたピコちゃんの両親が経営する宿へと向かう。
幸い騎士の誰にも見つかることも無く行くことができた。
その後、ピコちゃんに帰ったことを伝え部屋を取る。
宿の温泉になんだか久しぶりに感じながら入った。その際にコマチが一緒に入ってくるということもあったが。
そして、夜にはまた一緒に寝るとミアが言いだしそれに賛成する形でメルとリーシャが斗和の部屋に着いてきたので、それに加えてコマチまで一緒に寝ることとなった。
寝る前にはダンジョンでの訓練の話や俺が体験したこと、リヒトのことなどを話し、仲良く同じベッドで眠りについた。