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ダンジョン特訓

 斗和が最下層に連れて行かれた時、ミア達は……。


 「はい、残念~~」

 「くそっ、あいつちょこまかと、ぐっ」


 剣を振り下ろすが、そこにはすでにレーゲンはおらず、背中から蹴りを入れられた。

 それを助けるようにメルの風魔法がレーゲンを狙うが尽く外れる。

 リーシャもすでに龍撃魔法を用い、手と足を龍の物に変え戦っているがレーゲンにかすりもしない。


 「はあはあ、もう限界です」


 メルが魔力切れを起こして倒れた。


 「我ももう限界じゃ」


 リーシャも魔力が尽きたのか地面に腰を着いてしまう。

 ミアはというと。


 「……」


 無言でレーゲンに剣を振るう。

 が、しかしやはりかすりもせず時々襲うレーゲンの攻撃に防戦一方だった。

 そして、それが数十分続いてついにミアが前のめりで倒れてしまう。


 「「ミア」」


 少しだけ魔力が回復した二人が倒れたミアに駆け寄るとミアはすでに気を失っていた。

 レーゲンはその様子を見て、今日のところはこれで終わりだと手を叩く。


 「はい、今日の特訓は終わりです。私に傷一つつけられないのでは話になりません」

 「くっ」

 「無理だよ」


 リーシャは見て分かるほどに悔しがっている。

 それに対しメルは観念したような顔をしていた。


 「まず、リーシャ。あなたの龍撃魔法はとても破壊力があります、ですが燃費が悪いのと当たらなければ意味がありません」

 「そんなことぐらい分かっておる」

 「そして、メル。あなたの風魔法は上級魔術師からしたら速度が劣り範囲も狭い、予見する能力を磨くか魔法事態当たるように工夫しなさい」

 「そんなこと言ったって……」

 「次にミア……なんですが起きてからにしましょう」


 それから数時間してミアが起き、ミアに注意点を教える。

 ミアに関する注意点は魔法の対処方法だった。

 ミアは完全なる前衛職であるため、魔法は使えず、そのため魔法に関しては避けるという手段しか持ち合わせていない。

 とても難しい問題だ。

 今日でレーゲンとの訓練は三日目となるがまだ誰もレーゲンに攻撃が届いた者が居らず、自分の弱みを知るばかりだった。

 しかし、レーゲンは彼女達に嘘をついていることがある。

 まず、リーシャの注意点で燃費が悪いと言っていたが、はっきり言うと龍撃魔法を何分も使える龍人はリーシャただ一人だと知っており、燃費も抑えられている方だ。

 メルに関しても()()上級魔術師はメルの風魔法ほど速度が速いわけではなく、範囲に関しては速さを上げるために二分の一ぐらいとなっている。

 そして、ミアなのだがまず魔法を近距離で避けられるだけでも、この世界の前衛職から逸脱していた。

 だがレーゲンは奢らず、まだまだ強くなってほしいと思っている。

 それは主を守れなかった悔恨からなのか、この者達に夢を託すために期待を寄せているからなのか、もしかしたら両方の思いもあるのかもしれない。


 「よし、明日は自習にしたいと思います。明日で自分の弱点を克服してください」


 そう言って、レーゲンは姿を消す。

 それを見届けて、彼女達は戦いによる疲れでその場で眠ってしまった。


 翌日。

 ミアは二十一階層の魔物を狩っていた。

 二十一階層は食材階層と冒険者に言われており、ドロップするのは肉や野菜、魚などが主で、まるでここで暮らせるようにダンジョンが作ったかのような階層だ。

 ミアは朝早くから朝食のためにこの階層で狩りをし、取れた食材をメルとリーシャに調理してもらう。


 「うん、おいしい」

 「いつ食べてもおいしいですよね」

 「うまいのう」


 二十一階層の食材は王国の貴族がこぞって食べるため、冒険者にとってこの階層に到達すればもう金に困ることはないと言われている。

 まあ、その前にこの階層に来れる冒険者が少なく供給が追い付いていないということもあるのだが。

 朝食を食べ終え、弱点克服のための自主特訓を始める。


 「メル、私と模擬戦してもらっていいだろうか」

 「はい、いいですよ。私もミアさんと模擬戦しようと思っていましたから」

 「我もいいかのう」

 「はい、じゃあ三人で交代しながら模擬戦しましょう」


 メルの提案にミアとリーシャは異論はなく、了承する。

 まずはメルとミアの模擬戦から。

 リーシャの始めという掛け声により、模擬戦は始まり最初にメルの風魔法がミアに向かって飛んでくる。

 それを難なくかわしメルに一閃したが、もうすでに風魔法によりメルは後ろへ飛んでいた。

 そして、メルは確実性を求めて多大な魔力を使い風魔法の刃をミアの上下左右に展開する。

 ミアに逃げ場はない。

 ミアはその窮地の中で自分にできる魔法対策について閃いた。


 「逃げられないのであれば、真向から打ち破るだけだ」


 前方から飛んでくる風魔法に対し、一秒間に二回剣を振るう。

 すると少しだけだが風魔法が弱まるのが見て分かった。しかし、消えたわけではない。

 そのまま弱まった風魔法にすてみでぶつかり、その勢いでメルに肉薄した。


 「なっ」

 「今回は私の勝ちだな」


 メルの体に剣が当たる寸前で止めた。


 「あれならいけると思ったんですが、ミアさんなかなか無茶しますね」

 「いや、しかし何か掴めそうなんだが……」


 そして、勝者であるミアは連戦でリーシャとも戦ったが、メルとの戦いが後を引きずったのか動きのきれが良くなく負けてしまった。

 次はリーシャ対メルの戦いである。

 メルとリーシャは系統は違えどどちらも魔法が得意なために魔法が主体の戦いとなってしまう。


 「エアブレイド」

 「龍の咆哮」


 メルはいつもより数倍でかい風の刃を放ち、リーシャは魔力を込めた波動をメルに向かって放つ。

 威力は互角。

 互いの魔法は相殺され消えた。


 「決着がつかんのう」

 「そうですね」

 「なら少しだけ本気を出させてもらうかの」


 リーシャはそう言うと全身に魔力を巡らせる。


 「やらせません」


 メルはそれが完全なる龍化であることを知っているため、変身する前に倒そうと風の刃を連続して放った。

 が、それを受けてもなおひるまずリーシャの体が発光する。


 「これで終わりだ」


 光が消えた時そこに居たのは龍化したリーシャ。

 リーシャはすでにブレスを吐く態勢になっており、口がメルの方向に向いている。


 「こ、これはまずい」


 リーシャは戦いに熱中しすぎているのか、ブレスの威力が抑えきれておらず当たれば命を落とす危険性がある。

 口から漏れ出る炎が青く輝く。


 「くらえっ」


 放たれた炎は直線上にいるメルを焼き殺さんとしている。

 メルはその近づいてくる青い炎を見ながら結界を張ったが破られる未来しか見えず、死を覚悟した。

 目をつむる。


 「ふんっ」


 目を閉じても一向に来ないことに疑問を抱き、目を開けるとそこにはミアが立っていた。

 ミアは剣を何度も振っており、その剣撃がブレスを裂いていく。


 「おおお、やっとできました」

 「あ、あの、ミアさん。えっとこれは一体……」

 「それが、魔法の対処について考えていた時にふと魔法は切れるのではと思って」

 「いや、切れませんよ!」

 「だが、実際に切っている」


 魔法は魔法を使える者であれば分かることなのだが、魔法とは簡単に言うと全て魔力の塊なのだ。

 魔力が集まって性質を変えたのが魔法なのであって、魔法を切れているミアはその集まった魔力の繋がりを剣によって断ち切っているということになる。


 「す、すごい……」


 普通であればこのような芸当はできないのだが、それを普通に継続して行っているミア。

 ミアはどれほどすごい事なのかは理解していない。

 メルはその神業に見惚れていた。

 そして、リーシャの溜めていた魔力も切れ炎が掻き消える。


 「ミアが、防いだのか?」


 そこには龍の姿から人の姿へと戻ったリーシャが立っていた。

 そのリーシャは防がれたことに驚き、またそれを成したのがミアという事により驚いている様子。


 「ああ、やっと魔法を切るコツが掴めたんだ」

 「いや、魔法を切るって……まずそんな事が可能なのか?」

 「それよりもメルが危険だっただろう、もっと威力を落として使わないと」

 「あ、ああ」


 なんとも納得の言ってないような返事である。


 その後も対戦形式の訓練をしたが、ミアは魔法を何度も切り裂きリーシャのブレスを防いだのはまぐれではない事が分かった。

 そして、次の日からはレーゲンとの対戦という訓練が開始され、ミアの魔法切りが、リーシャの龍化による範囲攻撃が、メルの巧みな後方支援と風魔法がレーゲンを追い詰め三人で戦った場合の勝率は高くなっていた。

 訓練を開始して一週間。

 リーシャ達は競い合うようにして劇的な成長を見せ、レーゲンと一人で互角に戦えるまでになっていた。

 リーシャ達はそれでも驕るわけでもなく、訓練しそして今日。


 「た、ただいま」


 斗和が最下層から帰って来た。



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