二十階層にて
投稿が不定期ですいません。
これからも不定期だと思います、どうか不甲斐ない作者を許してやってください。
二十階層へと続く階段を下り終えるとそこには三つの道があった。
どの道にもライトは続いているので、どっちに進んだらいいか分からない。
「一体どっちに進んだらいいんだ?」
「う~ん、トワさんの進みたい道に進んだらいいと思うよ~」
「我もそう思う」
「どっちにしたって誰も正しい道なんて分かりませんから」
リーシャ達は自分に選択を譲るらしく、堂々としている。
適当な選び方だが自分は生まれた時は左利きだったので、左の道を進むことにした。
二十分後。
その後は分かれ道も無く、ただ長い道を進んでおりもうどれくらい歩いたのか分からない。
道は真っ直ぐではなく、曲がりくねっていて方向感覚がおかしくなってくる。
だが、それもすぐに終わりを迎える事となった。
「あ、あれを見てください」
「うん?」
目の前には広い空間に繋がっているであろう出口が見えた。
やっとこの道から抜け出せる。
この道は魔物も出ず、罠も無かったので安全な道であったがとても長く感じた。
少し速足でかけ、広い空間へと出る。
「はあ、何か魔物と戦いながら進むのとは違った疲れがあるなぁ」
「暇だったのう」
「警戒してましたが、何も起こりませんでしたね」
「ちょっと疲れちゃったよ」
後ろを振り返ると三つの出口が見える。
たぶんだが、三つの道は全てここの三つの出口に繋がっていてその道ごとに特色があるんじゃないかと思う。
実際、自分から見て右の出口からはアンデッド特有の呻き声が聞こえてくる。
もうアンデッドはこりごりだ。
そして、この広い空間には三つの出口の他に豪華に装飾された門がある。
扉はこのダンジョンに似合わず、金属独特の輝きを放っていた。
たぶんこの扉の向こうにボスがいるのだろう。
「この門の向こうにボスが鎮座してるんだな……」
二十階層のボスは質問に答えるだけで通してくれると聞いたので、幾分か気持ちが楽である。
楽といってもここはダンジョン。
何が起こるか分からないため気は抜かないでおく。
「じゃあ、開けるぞ」
「「はい」」 「うむ」
門を両手で押すと、ちょっとした力で動き開いた。
中を覗くと床には金の刺繍がされた赤い絨毯が敷かれ、壁には見たことのない紋章の旗がずらりと飾られている。極め付けにこの部屋の奥には王座が鎮座していた。
「すごい、部屋だな」
「うん、なんだか王族の部屋って言われても疑わない程すごいよ」
「豪華じゃが清楚な感じのある部屋じゃのう」
「……」
メルとリーシャはきょろきょろと見回しており、ミア一人だけ無言を貫いていた。
王座の方へと歩いていると、後ろの開かれていた門が突然閉まる。
「バタン」
「え、閉まった」
門が閉まった瞬間、仲間達には緊張が走り静寂がこの部屋を包む。
「よく来ました、挑戦者よ」
その静寂を破るように王座から声が聞こえ、振り向くとそこにはスーツのような服を着た男性が足を組んで王座に座っていた。
てかなぜにスーツとも思ったが言わないでおく。
「さて、まずは自己紹介から。私はレーゲン、この階層では戦ったりはしませんのでそんなに身構えなくてもいいですよ」
「は、はぁ……」
「さて、次の階層に行くには質問に答えることです…………うん?」
レーゲンとなのる階層主は会話をしている途中、見渡していた視線がミアへと止まった。
レーゲンはミアを観察するように眺める。
続いていた会話が止まり、再び静寂が舞い降りた。
「あなた、もしかして……いや、そんなはずは……」
レーゲンは小さな声でぶつぶつとつぶやき始め、こちらは困惑する一方だ。
そのつぶやきも長く続くわけではなく、何かを決めたのかつぶやきを止めて次は斗和の方へと視線を向けた。
「あなた、名前は?」
「えと、俺は斗和だけど」
「なるほど、トワですか。ではトワ質問をします」
「はい」
「そこのリザードマンの方はどうやって魔人化したのですか?」
「魔人化?ああ、この姿のことか。えっと――」
ミアがこの姿になった経緯を事細かに説明していく。
あの謎の声も隠さず話すことにした。
「ふむ、まさか、あの御方が選ばれたのか。条件は……一致している」
また一人でつぶやいてる。
何があの御方なのか、条件とはなんなのかすごく気になるが聞ける雰囲気ではない。
「俺何かまずいこと言ったかな?」
「いえ、トワ様は一つの嘘も無く説明におかしなところも無いはずですが」
ミアの事なので、ミアに尋ねるが特におかしなところは無いとのこと。
まあ、これで質問は答えたし二十一階層に行けるはずである。
「ああ、すみません。少しだけ考え込んでしまってました、どうもあなたで間違いないようですね」
レーゲンが指さしたのは俺。
間違いないと言われても何の事だかさっぱりだ。
まして何の取り柄もない俺には心当たりは一つもない。
レーゲンの話は続く。
「ずっと、この二百年間待ち続けてましたよ、適合者つまり我が主の後を継ぐ者を」
「あのー、一人で興奮しているところ悪いんですが、どういう事ですか?」
「ああ、長かったこれで主も報われるかもしれん」
いやー全然話聞いてないわ。
もう自分の世界に入っている感じ。
繰り返し出てくる主も適合者という意味もまったくと言っていいほど訳が分からない。
「何といっても証拠としてそこのリザードマンですね、私の同類は知識無くしてできるものじゃない。ましてやこの技術が衰退した時代では不可能でしょう、これは主が知識をお与えになったのでしょう」
「「「「……」」」」
「ということで、あなたには最下層、主のいる間へとご案内しましょう」
「へっ」
「トワ様」
レーゲンが手を振った瞬間、自分の体から光が溢れだす。
リーシャ達は眩しそうにしながら俺に手を伸ばしていたが、時すでに遅し。
斗和はその場から消えていた。
消える直前に、あなたの仲間達は私が責任を持って守るので大丈夫ですよというレーゲンの声が聞こえた気がした。
「おい、トワ様をどこへやった!!」
「それは私の主がいる最下層です」
「よくも、トワさんを、許しませんよ」
「焼き殺してやるのじゃ」
「まあ、待ちなさい。あなた達が束になってかかってきても私には勝てませんよ、それに大丈夫です、トワさんに危害が及ぶことは無いと思います。それよりもトワさんが帰ってくるまで私直々に鍛えてあげましょう、示された過酷な未来のためにもね」
トワ様が消されて、レーゲンは私達を鍛えようと言っている。
私はすぐにでもトワ様のところへと駆けつけたいが、目の前にいるレーゲンはそれを許しはしないだろう。
焦る私の肩にリーシャが手を置いた。
「まあ、そう焦るなミア、まずはあ奴の話を聞くのじゃ」
「しかし、トワ様が」
「あ奴は殺そうとするならいつでもできたと思うがのう、だから今更殺すことはせんと思うのじゃ。それにあ奴はトワ様のことを適合者と言っておった、何かトワ様のことを待っていたと聞こえたがのう」
リーシャが言うことは正論だ。
しかし、それでもトワ様が心配でならない、トワ様になにかあったらと思うと助けられなかった自分を恨んでも恨みきれない。
その様子を見てレーゲンは笑っていた。
「何がおかしい!」
「いや、私の若かった頃と同じ目をしているなと思いまして。私も予想はついていると思いますが元は普通の魔物だったんですよ。そう、主に会うまでは」
レーゲンは昔を懐かしむかのように目を閉じていた。
ミアはその様子を見て倒す隙が出来たと切りかかろうとしたが、リーシャとメルに止められてしまう。
「ミアさん大丈夫ですよ。ね、リーシャさん」
「そうじゃ、これを見るのじゃ」
リーシャは左手の薬指を見せてくる。
そこには赤い模様が刻まれている。
確かこれはリーシャがトワ様の指を噛んで付けた契約の証拠。
いわゆる龍神族のプロポーズの証だったはずだが、それが一体どうしたのだろうか。
「この刻印はのう、お互いの位置が分かり且つ生きている限り消えることはない。つまりトワ様は生きておるし地下深くにトワ様の存在を感じておるから大丈夫じゃよ」
「トワ様は無事なんですね、良かった……」
「だから大丈夫と言ったんですが」
レーゲンは説得してくれたリーシャに対し感謝を述べ、ここからが本題だとリーシャ達の顔を見る。
「あなた達には選択肢が二つあります。ここから先に進むか、さきほど行った通り私に鍛えられるかですね。あ、一応行っておきますがトワさんは試練に合格すればここに戻ってきますよ。さあ、どうします?」
「もし、トワさんが試練に合格しなければどうなるんですか?」
「その場合も帰ってこれると思いますよ」
トワ様のところを目指して向かうのは時間がかかりすぎる、もしかしたら試練が終わりすれ違いになってしまうかもしれない。
それに、リーシャの契約によりトワ様は無事だと分かる。
ここは、ここで待った方が良さそうだ。
「分かった。私はここでトワ様を待つ」
「我もそうするかのう」
「私もそうします」
「話はまとまりましたね、では明日から鍛えてあげますので今日は休みなさい」
レーゲンはそのリーシャ達の様子に微笑み、今日は奢ってあげましょうと指を鳴らした。
するとテーブルと人数分の椅子が現れ、そのテーブルの上には調理された魔物の肉やパン、コップに入った水がある。
リーシャ達は座らせると食べるように促される。
慎重に調べ、毒がないと分かり食べることにした。
「そう、素直なのが一番ですよ」
食べてくれたことがうれしいのか、レーゲンは終始笑っている。
そして、心の中で明日から始まる訓練はどうしましょうかととても楽しみにしていた。




