ミア苦戦
もう少しでダンジョン編が終わる予定です。
目が覚めるとテントの中には自分一人だけが寝ていた。
慌ててテントの外に出るとミアとリーシャは朝の訓練として徒手格闘をしている。
メルは立ったまま目を閉じ、集中しているようだった。
どうも、魔法の訓練は静かに体の中の魔力を巡らせるというものらしい。
まあ、横でミアとリーシャが激しい戦闘音を鳴らしているのでちゃんと集中できているのかは分からないが。
「皆、おはよう」
「おお、トワ様おはようございます」
「おはようなのじゃ」
「おはようです」
リーシャとミアは戦闘を続行しながら顔はこちらを向け挨拶をしてくれる。
見なくても攻防を続けるのはすごい技術だと思う。
メルは訓練を終了して挨拶をしてくれた。
「あれ、そういえばガバンさん達は?」
「ああ、ガバン達は先に行ってしもうたぞ」
話を聞くに、リーシャ達が起きると同じくらいにガバン達も起き始め朝食を食べるとすぐに十六階層へと続く階段を降りて行ったらしい。
その際、ヘリスさんが諦めず口説こうとしていたらしいけどガバンさんに引きずられていったとか。
ヘリスもなかなか諦めないなと逆に関心してしまった。
「ってか、それなら起こしてくれたら良かったのに」
「ふむん、あまりにも幸せそうに寝ていたから起こさないようにしようと皆で決めたのじゃが、なぁ」
「「はい」」
幸せそうな顔をして寝ていたのか……。
まあ、この世界に来て幸せを感じるのは食うことと寝ることだから幸せそうな顔はしていたのかもしれない。
「次からは起こしてくれよ」
リーシャ達と次は起こしてくれるように約束し、アイテムポーチに入っている朝食を食べる。
今日の朝食もピコちゃんの親父さんが作ってくれたサンドイッチだ。
中に挟まれた鶏肉が塩辛く、またキャベツに似た野菜がシャキシャキとしていてすごくおいしかった。
食べ終わった後はテントをアイテムポーチの中に入れて十六階層に続く階段を降りる。
十六階層は周りが石を積んで作られたようになっていた。
地球に居た頃に行った昔のトンネルに似ている。
一直線なので辺りを警戒しながら速足で進んでいく。
途中熊のような魔物や大きな蛇のような魔物が出てくるがリーシャとミアによって瞬殺されていった。
魔物のなかに鎧を着たミイラみたいなのがおり、ゾンビなのだろう。動きは早くないがミアが首を刎ねても動き、リーシャが炎でも焼き尽くすと倒すことができた。
ゾンビはどうも少し切られただけでは死なないらしい。
十六階層まではゾンビなどのアンデッド系の魔物は見てないからこの階層から下はアンデッド系の魔物が出現すると考えたほうが良い。
アンデッド系の魔物担当はリーシャとし、十六階層を順調に進み十七階層への階段を発見。
何事もなく十七階層へと歩みを進めた。
――十七階層。
十七階層も十六階層と外見に変わりは無く、一本道なので迷わず進む。
進み魔物を倒してく中で気づいたことなのだが、十六階層よりゾンビが出現する頻度が少しだけ多くなったような気がする。
中にはローブを羽織った魔法を使うゾンビも現れ、より一層警戒して進むことにした。
遠くから魔法で奇襲をかけられるのは避けたいためだ。
「前方からまた魔法使いのゾンビが来ました」
魔法に長けたメルに魔法の反応があれば教えてくれるようにしてもらい、だいぶ対処できるようになってきた。
今では攻撃される前にリーシャの炎によって焼き尽くしてしまっている。
順調に進み十八階層への階段を下った。
――十八階層。
この階層に来ると現れる魔物はすでにアンデッド系の魔物しかおらず、ミアにとっては厳しい戦いになっていた。
現れるアンデッドも上位の存在が少しずつ増えてきている。
スケルトンナイト、スケルトンアーチャー、マーダーゾンビやリッチなどたくさんのアンデッドが列をなして襲ってくるのだ。
ミアはその軍勢に対し腕、足、頭と切り落としていくが一向に減る様子がなく、ただスタミナを削られるだけであった。
「これはやばい、一旦退いたほうが良い」
「わ、分かりました」
「了解です」
「任せるのじゃ」
リーシャが最大火力の炎を魔物に放ち、その隙に俺たちは十五階層まで逃げることにした。
十五階層に着いた瞬間、ミアは緊張が解けたのか床に座り込んでしまう。
どうも、限界が近かったようだ。
他のリーシャやメルも額に玉のような汗をかき、疲れが顔に滲んでいた。
「今日はここで休憩を取ろう」
「そうですね、対策も考えておきたいですし」
「我も賛成じゃのう」
「私も疲れちゃいましたから、賛成ですよ」
正確な時間は分からないが、皆の体内時間的には今は夜に差し掛かっているぐらいだと思われるので今日もここで一夜を過ごす事にする。
皆には休んでもらいたいがそう言おうとした時、ミアから話が振られた。
「皆、十八階層のアンデッドのことなんだが」
「ん、なんだ」
「私にも倒せるようになる方法とかは無いだろうか」
ミアの手が少し震えている。
よほど防戦一方だったのが悔しかったのだろう。
それを見た俺とリーシャ、メルはミアが戦えるように生き残れるようにするために考える。
俺は魔物の特性について思い出すことにしてみた。
・ダンジョンの魔物は特別で、死んだらドロップ品を落とし消えてなくなる。
・魔物は自分のテリトリーからは出ることはなかなか無い。
・アンデッドは聖魔法や回復魔法が有効である。
・魔物には体内に魔石があり、魔石は人間で言う心臓と同じである。
・魔物にもレベルが存在し、レベルが上がると上位種に進化することがある。
思い出すのはこれぐらいだ。
この中で一つ目と二つ目はあまり関係無いから置いておく。
三つ目はミアは聖魔法や回復魔法、炎魔法が使えないから意味が無い。
四つ目は――――。
「なぁ、アンデッドにも魔石ってあるのかな?」
「あると思いますよ、あれも魔物なんですから」
「じゃあ、その魔石を剣で切ったらアンデッドを倒せるんじゃないか?」
「それは難しいと思いがのう、まずその魔石は体のどこにあるのじゃ?それが分からんと無理じゃろ」
リーシャによると魔石の位置はその魔物ごとに違うようで、それはダンジョンにいる魔物も同じ。
魔石のある場所を見極めて倒すより、そのまま普通に倒す方が楽に違いない。
それに魔石も冒険者にとって収入源となるので意図的に壊す奴は居ないそうだ。
「駄目かぁ……」
「いや、できるかもしれません」
ミアは一つの方法がを思いついたようで顔に笑みを浮かべた。
一体どうやって体のどこにあるか分からない魔石を見つけるのだろう?
ミア以外の皆はその方法が分からず疑問に首をかしげている。
「実はこの体に進化したおかげで流れる魔力が分かりやすくなったんです、その魔力の流れの元をたどれば――」
「魔石の位置を把握できるという訳か」
「なるほどのう」
「ミアさんすごいです」
明日はミアの魔石を見つける特訓を兼ねて十八階層へと向かおうという事になり、体を休めることにした。




