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芋虫戦

本っっっ当に遅くなりました。

申し訳ない気持ちでいっぱいです。

遅れることが多い私ですがどうか見捨てないでやってください。

では、どうぞ。

 いつもよりも長い階段を下り、広い空間へと到達した。

 斗和達は到着と共に辺りを警戒するが、そこにはボスの魔物の影すらない。


 「なんで何もいないんだ」


 普通は待ち受けていて、勝負だっていう展開になるのがテンプレなんだが。


 「もしや、もうすでに討たれた後だったりして……」

 「そうかもしれません、ほら」


 メルが指さした先には少し抉れた地面があった。

 それも、ダンジョンの修復能力によって小さくなっていっているようだ。

 どうも先に到着したパーティが倒してしまっている。こうなってしまった場合はリスポーンするのを待つしかない。


 「じゃあ、ちょっとここで休憩しようか」

 「そうですね」


 斗和達は地面に座り、アイテムポーチから水筒を出し水分補給をする。

 そもそもなぜ十階層のボスを斗和達は倒していかなくてはいけないのか。

 それは、ダンジョンに入る前の門にあった石碑に関係する。




 ――ダンジョン入り口。


 『ここがダンジョンの入り口か』


 そこにはたくさんの冒険者がおり、皆我先にと入り口に入っているのが見える。

 自分達も魔物を倒してレベル上げ&資金稼ぎをしたいので、冒険者ギルドの職員に許可証を見せて入ろうとしていた時だった。


 『あれはなんでしょう』


 メルの指さす方向には石碑が建っており、そこにも冒険者ギルドの職員が立っている。

 確かに何の石碑なのか気になるので聞くことにした。


 『すみません』

 『はい、ご利用でしょうか』

 『あ、いえ。この石碑が何なのか気になりまして』

 『ああ、初心冒険者の方でしたら知らないのも当然でしょう。これは転移の石碑です』

 『転移の石碑……?』


 その後、冒険者ギルドの職員から聞く所。

 この石碑はダンジョンが見つかった時からあり、最初はどういう物なのか分からなかったがある冒険者が気まぐれに十階層のボスからドロップするビー玉のような玉を近づけると、その玉が発光してその冒険者は十一階層に飛ばされたそうだ。

 それが考古学者や魔法研究者の目に留まり、調査をしているが原理がまだ一切分かってないとか。




 「だから倒さないとまた一階層から潜らなくちゃいけなくなるから倒さないといけないよな」


 斗和はそうつぶやく。

 戦闘に関しては足手まといの何者にしかならないので自分は『気配遮断』を使って待機である。

 仲間が傷つくのは嫌だけど自分には応援することしかできないのだからくやしいところだ。

 リーシャ達はそのことを一切気にしていないようだが。


 それから十分後。

 ダンジョンの床が薄緑色に光りだす。


 「もうすぐでリスポーンか」

 「どれくらい通用するか楽しみです」

 「そうだの」

 「え、まじで……」


 ボスとの戦闘にわくわくしているミアとリーシャ。

 メルもよく見ると鼻息荒く、興奮しているのが分かる。

 まさか自分以外バトルジャンキーの気があるとは知らなかった。


 「ギュワアアアア」

 「うわ、出てきた」


 斗和達の目の前に光が収束し、そこには大型トラック並みの大きさの芋虫が産声を上げている。

 その大きな芋虫の周りにはそれを一回り小さくした芋虫がざっと十一体、まるでおおきな芋虫を守るかのようにいた。たぶん、手下とかだろう。

 うえ、まじきもい。

 斗和は狙われないように『気配遮断』を発動させた。


 「先制は貰った」


 ミアがまず近くにいた手下の芋虫に切りかかる。そして、一匹を真っ二つに。

 しかし、次の攻撃を許さないために他の手下の芋虫がミアへと飛びついてきた。ミアは来るのを分かっていたのか飛びついてきた芋虫達に剣で払い、尻尾で叩き落とし対処していく。


 「これでも食らえ」


 ミアが手下の芋虫を対処している時、リーシャは龍撃魔法を詠唱していた。

 そして、詠唱が終わった龍撃魔法が放たれる。


 「ギュウ」


 ボス芋虫にリーシャは口を開くと、口の前に魔法陣が展開されそこから燃え盛る炎が噴き出す。

 とっさに身をよじって距離を取り、表面を少し焦がす程度に抑えられる。


 「ちっ、くそ」

 「次は私の番です」


 リーシャが後ろに引き、もう一度龍撃魔法の詠唱に入る。

 それに交代しメルが前に出て魔法によって風の刃を連続で放った。

 が、風の刃に対しボス芋虫は口から白い糸を吐き風の刃が包まれる。そして、あっけなく砕かれた。

 風の刃を防いだボス芋虫が攻撃してくるか、と身構えるがその様子は無い。


 (そういえば、ミアはまだ倒し切れていないのか)


 ミアの方に視線を向けるとまだ手下芋虫に囲まれている。なかなか苦戦しているのかもしれない。

 だが、その様子に違和感を感じる。


 (何か増えてないか?……!)


 よく見るとボス芋虫の後ろから手下芋虫がミアの方へと向かっていた。

 ボス芋虫の後ろが見えるようにまわると、ボス芋虫の後ろでは卵が量産されているのを発見。

 その卵が産み落とされて地面に落ちてから数秒後、卵からきもかわいい芋虫ちゃんが――。

 おえぇぇぇ。

 吐きそうになったが何とかこらえた。

 この事を伝えるために一旦リーシャとメルがいる所まで後退する。

 『気配遮断』を発動中では伝えられないので解除し、大声で叫ぶ。


 「親玉のボス芋虫が手下芋虫を生んでいる、気を付けろぉ」

 「なるほど、だからミアさんが帰ってこないと思ったら」

 「我が龍撃魔法の一撃で潰してやる」

 「…………」


 ミアはよほど物量に余裕がないのか返事がなかったが、伝わったと思う。

 ボス芋虫はいきなり現れた俺に顔を向けた。嫌な予感がする。

 ブシュウ。

 ボス芋虫の口から俺に向けて糸が飛んできた。

 とっさの回避を試みるが自分の足の速さでは回避しきれない――。


 「危ない」


 メルが風魔法により風の壁を作ってくれたおかげで糸による攻撃を受けずに済んだ。

 メルに合図で感謝を示し、もう一度『気配遮断』で隠れようと試みる。が、一向に発動しない。

 なぜかと疑問に思って気づく。


 「あ、魔力不足、なのか……」


 幸いボス芋虫に脅威と見なされなかったのかメルの方向を向いて糸を飛ばしている。

 ユニークスキル『気配遮断』は魔法ではないが、発動と使用中に魔力を使うのが今回のダンジョン攻略中に分かったことだ。しかし、使用する魔力は初級魔法などより少ないため大丈夫だと過信していたが、そもそも自分の魔力が少ないのだから戦いが長引けばこういう事になるのもあることを失念していた。


 「だあああ、まじか」


 メルは今皆に放たれている糸を弾いており、ミアはまだ手下芋虫に囲まれている、そしてリーシャは龍撃魔法により魔法陣を通して肘から先をドラゴンのものに変化させミアに加勢しに行っている。

 自分を守ってくれる者は今誰もいない。

 手下芋虫の数に余裕が出来たら自分の方に向かってくるだろう。そう考えると背中に寒いものが伝う。

 魔力はない、元より攻撃魔法を覚えていない、ステータスは最底辺、一撃でも食らえば致命傷になる。


 「ああああああああ」


 大声を上げ弱気になる自分を追っ払おうとした。

 いつも助けられるだけでいいのか。それはいやだ。

 助けられるだけのみじめな自分を見るのはもううんざりしている。

 だから命がけで戦う。

 斗和は周囲を警戒する。何が来てもいいように鉄の剣を固く握り、もう片手にはアイテムポーチから出した盾を持つ。

 警戒して見渡す斗和にメルに近づく手下芋虫が見えた。

 メルはボス芋虫の糸を弾くのに必死で後ろから近づく手下芋虫に気が付いていない。


 「後ろだああああ」

 「えっ」


 叫びながらメルの後ろにひっそりと近づいていた手下芋虫に向かって走る。

 メルは後ろを向き、近づいていた手下芋虫を見て一瞬固まった。

 手下芋虫がもうすぐでメルに攻撃をしようとするのに間に合い、鉄の剣を胴体に突き刺すことに成功する。

 もう一度攻撃しようと剣を引き抜こうとするが、それを手下芋虫は許さない。

 体を振り回し暴れる。


 「フギュウウウ」

 「おわっ、かはっ」

 「トワさんっ」


 あっけなく剣から手が離れその拍子に背中から勢いよく床に倒れた。肺から空気が抜け息ができない。

 手下芋虫は標的を俺に変えたようで、体を持ち上げる。

 やばい、逃げれない。

 はって逃げようとするが少し間に合わなかった。


 「ああああああああああっ」


 振り落とされる巨体に右足が挟まれ。

 メキョという音と共に激痛が脳に伝わり理解する。右足が壊されたと。

 斗和の叫びに気が付いたリーシャはすぐにメルと斗和の所に駆けつけ、斗和の右足を下敷きにしている手下芋虫を見つけるとドラゴンの爪で切り裂き手下芋虫は光となって消えた。


 「トワ様、足が……」

 「あ、あが、うぐっ」

 「リーシャさん、トワさんを治療します。その間あの大きい芋虫の相手をお願いします」

 「ああ、分かった。よくも……」


 リーシャは怒気を孕んだ声で了承し、ボス芋虫と対峙する。

 メルが横に駆け寄ってきた。


 「トワさん痛いですが我慢してください」

 「うわぁ」


 メルに上半身を起こされ自分の右足を見れるようになり、顔を歪める。

 そこにはひしゃげた右足があった。

 だがアドレナリンのおかげか痛みはあまり感じなくなっている。


 「治癒魔法をかけます」

 「はがっ、ぐっ」


 治癒魔法の光がひしゃげた右足に降り注ぎ右足から骨の鳴る音とともに痛みが斗和を襲う。

 見ると潰れていた右足が元の形に戻るように変化している。

 やばい、あまりの痛さに気が遠くなってきた。


 「大丈夫です、トワさんはこのまま眠っててください。私が守りますから、安心して――」

 「ああ……」


 瞼が落ちる。

 そこで俺の意識は途絶えた。



 「ミアさん、リーシャさん、トワさんは無事です。私はこのままトワさんの傍で守ってますから後はよろしくお願いします」

 「分かりました、すぐに決着をつけます」

 「我もトワ様と一緒に居たいが仕方ない、こいつを倒してからじゃの」


 ミアとリーシャは攻勢に出る。

 メルがボス芋虫の糸攻撃を防ぐことができなくなったために、こちらに糸が飛んでくるがそれはリーシャの口から吐かれる火炎により焼き払われる。

 その合間にミアが手下芋虫を力技でねじ伏せ体に傷が付くのを厭わずにボス芋虫に突っ込んだ。

 剣により一撃、二撃、三撃と素早い斬撃がボス芋虫の体に刻まれていくがまだボス芋虫が倒れる気配はない。


 「くそ、もう一回隙を作ってくれませんか」

 「ああ、少し魔力が心もとないがやってみるかの」


 手下芋虫がまたわらわらと増え、こちらに群がってくるがそれをミアは剣で切り払い、リーシャはドラゴンの爪で切り裂く。

 この手下芋虫と戦い続けてたらきりがないので今回もミアによる強行突破による攻撃で打ち倒す算段だ。

 しかし、もう一度それを許すボス芋虫ではなかった。

 今度は糸を自分の周りに吐きバリケードを形成し、複数の手下芋虫に自分を守らせる。

 ミアだけではこの糸を破壊するのに時間がかかりボス芋虫の所に到達する頃には手下芋虫に囲まれてしまうだろう。


 「厄介ですね」

 「しょうがない、一度も試したことが無いから実戦でやりとうなかったが……仕方ない。これをやれば我は動けなくなる、後の事は頼んだぞ」

 「一体何を――」

 「――――――」


 リーシャは詠唱を開始し、それに合わせリーシャの体が淡く光りだした。

 今から何が行われるのか分からないがリーシャを信じ、手下芋虫やボス芋虫の糸攻撃からリーシャを守る。

 多方面からの攻撃の対処に体力を奪われ時に手下芋虫から攻撃を貰う、しかし致命傷は避けリーシャには一切の攻撃は届いていなかった。

 そしてリーシャが詠唱を始めて一分ぐらい経った時、リーシャに変化が訪れる。


 「準備は整った、ミア一度我の後ろに下がるのじゃ」

 「分かりました」


 ミアが急ぎリーシャの後ろに向かわんとしたため、塞き止められていた手下芋虫の濁流がリーシャへと迫る。

 その時、リーシャから強い光が放たれ目を瞑るのを余儀なくされる。

 そしてミアが目を見開くとそこには紅い鱗をした一頭のドラゴンの背が目に映った。


 「リーシャなのですか」

 「ああ、この状態はあまり長い時間維持できないのでな、最大の一撃を放つ」


 リーシャは前を向き、迫ってきている手下芋虫を前足ですべて踏みつぶし、ボス芋虫の方向に向かって牙を生やした口を向ける。

 口の先には何重もの魔法陣が展開され輝きを増していた。



 「くたばれ、神龍の吐息(ディオエイン)



 口から放たれた魔法名と共に吐き出されるのは青く高密度の炎。

 地面が溶けマグマ状となり、それに触れた生まれたばかりの手下芋虫は蒸発する。

 そしてその炎はボス芋虫にまで到達し、まるで地獄の業火に焼かれているかのように火だるまと化す。


 「あ、がはっ」


 しかしそう長く続くわけがなく青い炎は掻き消え、リーシャは元の姿に戻ってしまう。

 魔力も底を尽きてしまったためにリーシャはうつ伏せたまま動かなくなった。


 「ピギャアアア」

 「しぶとい、まだ生きているのか」


 ミアの先には皮膚がただれ、淡い緑色だった体も黒く煤けたボス芋虫が痛みのためかのた打ち回っている。

 どうやら皮膚が焼きただれくっついたために手下芋虫は生めなくなったのか手下芋虫が現れなくなった。


 「これで最後だ」


 ミアは足に力を込めぼろぼろとなったボス芋虫に向かって走り出す。

 向かって来ているのをボス芋虫は認識し避けようと必死に足掻くが、地面に皮膚がくっつき動きが遅れる。

 ミアはその動きの遅れを見逃さない。


 「あああああああっ」


 飛び上がってからの上段からの一閃。

 もろくなっていた体に切れ込みが入りそのまま地面まで抜ける。

 後に残ったのは頭と体がお別れをしたボス芋虫。それもすぐに命が尽き虚空へと消え残ったのはドロップ品だけであった。



 斗和達は十階層のボスに打ち勝ったのだ。



「俺って何でこんなに弱いんですか」

「まあまあ、待ちなさい斗和君。作者の私から言うとですね……」

「言うと?」

「いつかは強くなるはず」

「はずって……」

「ジャンルに『成りあがり』って書いたはずだからいつかは強くなるって、それまでがんばりな」

「強くしてくださいよ、情けないよ自分が……とほほ……」

肩を落とし帰っていく斗和。

「いつになるだろうねぇ」

それを見る無責任な作者。


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