教室での出来事
「よし、これで終わりっと」
住山斗和は宿題を終え、教室から窓の外を見た。
外では野球部やサッカー部が校庭を走っているのが見える。
「よく、あんなに走れるなぁ……」
自分では二週走っただけで息切れするだろう。
自分は至って普通の高校一年生である。部活は入っておらず、運動は全然できない。
背丈は高校一年生の平均とほぼ一緒で、顔もイケメンではないし、ブスでもないと思う。
周囲を見渡すと。
「それでさぁ……」
「へー、まじー」
「あ、私もさぁ……」
「昨日、ゲームで……」
「あ、それ俺も……」
「…………」
教室にはいつもの三人組である柏原亜里沙、区杉芽衣、笹原美貴とゲームオタクと自他ともに認めている田村日向、刈谷充、学年でトップの成績を維持し続けている神野宗太がいた。
もう五時半になりそうなのに、クラスメイトが以外と残っている。神野宗太君に至ってはまだ勉学に励んでいた。俺にはあそこまで根詰めて勉強はできそうもない。
「俺にも漫画貸してくれ」
「うん、いいよ」
教室に入ってきたのは裏でいじめを繰り返していた黒田和也とクラスのまとめ役で、イケメンかつ運動神経抜群、成績も上位をキープしているという完璧超人の三嶋悠太だった。黒田和也には前にいじめられたこともあり、すごく苦手意識をいまだに持っているが、最近は三嶋悠太とつるむようになっていじめたという事案は聞かなくなった。三嶋悠太さまさまである。
そうこうしているうちに、時計の針は五時半を指していた。
「さて、帰るか」
必要なものをリュックサックに詰め、教室を出ようとしたその時――。
「うわっ」
目の前が白く光り、何も見えなくなる。自分だけではないようで、教室にいたクラスメイトの声も聞こえた。そして、一瞬のうちに周りの景色が変化していた。
「ここ、どこだ?」
どこまでも続きそうな真白な空間に、教室にいたクラスメイトが自分と同じように首をかしげ辺りを見回している。しかし、以上に白い空間以外何も見当たらない。
「おい、ここどこだよ」
「これは夢?」
自分も夢だと思いたいが夢ではないというのは、頬を抓って確認済みだ。
どうにかしてこの空間から抜け出すことはできないだろうか。混乱から覚め、冷静となって考えてみてもどうにかできそうもない。
「ようこそ、いらっしゃった。選ばれし者よ」
ふいに後ろの方向から声が聞こえ、振り向く。
そこには優しそうなご老人が満面の笑みを浮かべて立っていた。
さっきはいなかったはずなのに、いきなり現れたのでびっくりした。
てか誰なんだ……?
「皆の疑問も大いにわかる、わしはそう――神じゃ」
そうご老人は言い切った。
それに対し俺達の心のうちはただひとつだっただろう。
それはつまり――――。
信じられるか、である。