巨大風呂で
おはこんばんにんちは!
お待たせしました。
――朝。
疲れていたせいか、昨日の夜はベッドに入った瞬間眠気が襲い、そのまま寝てしまったようだ。
ベッドにはまだミアとリーシャが眠っている。
その寝ている姿を見てると少し魔が差し……いや、後学のためにミアの白い鱗とリーシャの手の部分に生えている赤い鱗を触ってみる。
爬虫類の鱗独特のすべすべな鱗であり、また鱗一つ一つから成っている凹凸がとても気持ち良くて――。
「んんっ」「くふっ」
ミアとリーシャが反応する。
すぐに手を退け、起きてしまわないかドキドキしながら様子を見た。
…………。
どうやら起きる気配は無いようだ。
また鱗の魅力に負けないよう後ろを向き、起こさないようそっと部屋の外に出る。
自分達の居た二階から一階へと下りる。
「トワさん、おはようございます」
「あ、おはようございます」
一階にはこの宿場を経営している奥さんとそのお嬢さんが居り、お嬢さん――ピコちゃんが元気良く挨拶をしてくれた。
その後もやることがあるのか、ピコちゃんはタタタと駆けて行ってしまった。
奥さんの方は一階の厨房で作られる料理を宿泊客に運んでいる。
そして厨房にいるのは旦那さんである。
「あ、トワさん昨日は良く眠れましたか?」
「はい、疲れていたようなので、眠るのはすぐでした」
奥さんが料理を運ぶのをピコちゃんと交代して、挨拶しに来てくれた。
「そうですか。それなら昨日は店定番の巨大風呂には入ってないですよね、今ならあまり人は居ないと思いますから、どうぞごゆっくりしてきて下さい」
「はい、入らせてもらいます」
話に出てきた巨大風呂とは日本で言う温泉のようなもので、違うところは水精霊の霊脈を掘り当て、その霊脈からあふれ出る水を魔道具によって温めているところだ。
奥さんに巨大風呂を出た後、朝食を準備して貰えるようお願いし、巨大風呂へと向かった。
「よっと」
巨大風呂はもちろん、女風呂と男風呂に分かれており、規則として中に入る際は、タオル一枚だけしか持っていくことができないことになっている。
そのため、今脱衣所で素っ裸となりタオルを肩にかけて、風呂場に入っていった。
風呂場の中は湯気で視界が悪くなっており、また床が滑るためとても危ないと泊まる際に言われたが、日本人としてこのような状況には慣れている。なので問題ない。
巨大風呂のあるところへ足を進める。
すると歩き出してわずか数秒で何かとぶつかった。
「きゃっ」
ぶつかったのは人だったようだ。
しかし、ここで問題が発生する。
もう声で分かったと思うが、たぶんこれはアニメなどでよくあるテンプレパターン。
そして当たった感触からも女性であるということで間違いないだろう。
この状況になって、次に起こることはテンプレとして限られている。
それは目の前にいるのが男性だということに気が付き、ビンタを食らい、噂で自分は覗きをしたという風に広まるという可能性。
それはさすがにまずい。
逃げようと後ずさりし始める。
「すみません、怪我はありませんか?」
湯気の中から伸びてきた手に、腕を掴まれ逃げることが不可能になった。
やっちまった……。
今考えたら顔は見られていないから、なりふり構わず逃げればよかったのに。
しかし、それは腕を掴んでいる手が許さない。
「あの、ええと、もしかしてですけど……」
「…………」
「男性の方ですか?」
ば、ばれた~~~~。
湯気であまり見えないといっても、その人の影で体格などは見てとれるわけで。
身長が女性にしては高すぎるし、自分も第二次成長期であるため体が男らしく筋肉がつく。
体の特徴に関しては、腕を握られているために分かるのだろう。
「もしかして、覗き魔だったりして」
「それは、誤解だ!!」
「やっぱり、男性だったんですね」
ついにかまにかけられて、声を出してしまう。
ああ、終わった。
次に起こるのはビンタや拳による制裁と、覗き魔の烙印を押されるという処刑。
覚悟を決めてその時を待つ。
しかし、彼女の次の行動は想像とは違っていた。
「大丈夫ですよ。悲鳴を上げたりしませんから、そのかわり、もうこんな覗きなんてやめてくださいね」
「ああ、いや、覗きをしに来たんじゃあないんだが……」
「分かってます、そのことについては処罰したりしませんから、すぐに立ち去ってください」
「わ、分かった」
最終的に覗きをしに来たという誤解は解けなかったものの、穏便に済ましてもらえるようだ。
なんて彼女は優しいんだろうか。
言われた通り、脱衣所の方に向かおうとする。
が、そこで神が奇跡を起こす。
「えっ」
「えっ」
彼女と自分を分け隔てていた湯気の壁が希薄になり、彼女の全身があらわになる。
濡れた色っぽい金の髪は一本に結われており、身長は自分より頭一つ分ぐらい小さく、華奢な体格は、女性の魅力を放っている。
その美しい彼女は固まっていた。
彼女の視線は下の方に向いており、そこには男の象徴が……。
キッと彼女の顔が上に上がり、目と目が合う。
「な、へ、変態っ」
「ぐはっ」
右ストレートが顎にクリーンヒットし、意識が遠のいていく。
そんな意識の中で、ちらりと見える。
彼女の耳が尖っているという特徴を――。




