神の終焉
一体何をするつもりだ?
振り上げられた消滅の剣は力が込められているかのようで光り輝いている。
「これはまずいかもね」
「まずいなら、先手を打つのみだ」
そう言って、神のところへ向かおうとした俺の前にメフィルは立ちふさがった。
「何をしているんだ。まずい状況なんだろ」
「今更向かったって遅いよ。もうすでに消滅する範囲が大きくなってる」
そう言って、メフィルは魔法により生成した水を神目掛けて放つ。
その放たれた水は神に当たる前に消えた。
メフィルはこちらに顔を向ける。
これでは近づけないということか。
「それで奴は何をしようとしているんだ?」
「たぶん世界の消滅だろうね」
「世界の消滅!?」
確かにあの剣は消滅させる権能を有しているが、世界を消滅できるほどの力を持っているとは思えない。
それに、そんなことをすれば神でさえ無事ではすまないだろう。
「どちらにしても、神は俺達を許せないみたいだね」
「くそ、どうすればいいんだ」
「まだ今は力を込めている段階で、時間はある。この時間内で考えるしかないね」
メフィルはそう言って、地上へと着地した。
俺もそれに倣って地上へと降りる。
「はあ、仲間は全員やられたのか」
「俺の仲間が全員倒させてもらった」
「なんて残酷なことを、世界を変革させる同志だったのに」
「お前もどうせ、世界を壊すんだろ。そんなことはさせはしない」
そう言うと、メフィルは一瞬虚を突かれた顔をしてこちらを見た。
そして納得する。
「そういうことか。俺達はこの世界を壊したかったわけじゃないんだよ」
「でも、世界の再構築って言ってたじゃないか」
「そう、世界の再構築。つまり僕達は種族差別のない世界を一から作りたかったんだ。そのためには少しの犠牲が必要だったことは認めるよ」
「少しじゃない。大勢が死んだんだぞ」
「まあまあ、そんなことは置いといて。今は目の前のことをどうにかしないといけないだろ」
まだ話に食いつこうと思っていたが、もう時間も無さそうだ。
消滅の剣に変化があり、光が収まり始めた。
メフィルはその様子を険しい顔で見て、一つ頷く。
「まあ、確かに僕達の行いは悪かったかもね。じゃあ、後の世界を君達に託してもいいかな?」
「は?それはどういう…………」
メフィルは俺を置いて飛び立つ。
そして、消滅するゾーンへ自ら突入した。
「ぐっ」
魔力を体全体に張ることによって消滅する速度を下げているが、着実に皮膚が一部、また一部と消滅していく。
血が流れ、皮膚の下の肉が見え始めていた。
「じゃあ、頼んだよ」
最後に俺の腕らへんについたスライムのような粘着物からそんな声が聞こえて、メフィルは自分からその消滅の剣へと刺さった。
「な、貴様」
神も予想外な事に驚き、その消滅の剣をメフィルに奪われてしまう。
そして、メフィルはその消滅の剣を抱いて、消滅の剣ごと虚空へ消えてしまった。
残されたのは神と俺。
「せっかく、我の神力を注いだのに。よくも邪魔をしよって昔の勇者ごときが」
そして、また消滅の剣を生成する。
「させないっ!!」
消滅の剣を構えようとした時にはすでに、俺は神の懐に移動しその腹を殴っていた。
「ぐほっ」
「まだだ」
消滅の剣を握った腕を掴み力任せに折る。
「ぎいぃぃぃぃぃ」
「そのまま死ね」
その折れた腕をそのまま使って、握られた消滅の剣を相手の腹に突き刺した。
最初、相手は精神体であるため効かない可能性もあったが、どうも効果はあったらしい。
腹から少しずつ力が抜けていっているようで、苦しんでいた。
「こ、この下郎が、神に向かってこんな仕打ちを、許せん、許せんぞ!!」
「許してもらわなくていい。お前が死ねばそれでいい」
俺は消滅するまでそのまま力を込めて、消滅の剣が刺さったままで固定する。
「これを見ろ」
もう片方の手にはもう1本消滅の剣が握られていた。
そして、そのもう1本をそのまま地面に向かって投げる。
そのまま消滅の剣は地面へと刺さった。
「はは、本当はこんなちまちまとした方法は取りたくなかったが、これでいいだろう。さあ、お前は儂を捕まえてていいのかな?」
刺さったところから消滅が始まっていた。
それは伝播し、地面がごっそりと無くなっていく。
下へ下へその消滅の剣は潜っているように見えた。
「このままいけばこの惑星は終わりだな。ざまあみろ」
「それが神が言う言葉かよっ」
腹に刺さった消滅の剣を握り背中まで貫通させ、どんどん地中に向かって行く消滅の剣を拾いに行く。
この惑星が地球と一緒だとしたら、重力の元である中心の核に到達すればまずい。
思ったよりも消滅の剣が潜る速度が速い。
斗和は瞬間移動を駆使して近づく。
暑い、焼けるような暑さだ。
それもそのはず、地中にあるマグマさえも消滅させて通過しているため、途中マグマが襲ってくる場面もあった。
そのせいで、消滅の剣とまた差が開く。
そしてやっと消滅の剣が見えたのは、すでに外核に入ったころだった。
「くそ、このままじゃあ内部から消滅してしまう」
『斗和あとほんの十数秒で終わっちゃうよ。どうしよう』
「こっちも時間がないか」
なら、もう突っ込むしかない。
残された十数秒で俺は消滅の剣の柄を握った。
そして、引き抜く。
すでにここは地獄のような気温で、人間などすぐに蒸発してしまうようなところだ。
周りは外核のマグマで覆われている。
俺は消滅の剣を上に掲げ、そして最後の力を振り絞った。
「砕けろー!!」
残った神力全てを消滅の剣の破壊に捧げる。
掲げた消滅の剣は入ってきた神力に耐えられず、罅が入りついには欠け始めた。
「よし、こ、れ、で…………」
そこで、俺は強い眠気に襲われる。
それも耐えられるものではなく、強制的に瞼が閉じられていく。
『ト、ワ。もう……じょう……でも…………した』
最後にキリンの声が聞こえて俺は瞼を閉じた。
「あ、ああ。何でだ。どうしてこうも上手くいかない」
神は嘆く。
その腹には未だ消滅の剣が深く突き刺さっていた。
すでに彼には神と呼べる力は持っておらず、今はただの魔術師でさえ彼を倒すことができるだろう。
地面に座り込み、下を向いた。
「俺は長くないだろうな。くそ、あの天界にいる阿呆どもを殺したかった」
俺をこの下界に落とした者達をこの手で。
そして、唐突にその瞬間はやってきた。
「あっ」
消滅の剣諸共ふっと存在が消えた。
すでにそこには戦った跡しか残っていない。
他の誰にも知られることもないまま――――。




