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人間族の神

 キリンが俺の奥にある力に触れた感触があった。


 『もう準備はできたよ。本当にいいんだね?』

 「ああ、急いでくれ」


 変わらず、人間族の神が有利であり、メフィルは防戦一方だった。

 すでにメフィルは右腕がちぎれ飛んでいる状態で、その他も大小様々な傷が刻まれている。


 『それじゃあ、いくよ』


 ドクン。

 心臓が高く鳴る。

 そして、鼓動がとても速くなっていく。


 「う、くっ」


 あまりの速さに心臓が痛い。

 胸を押さえながら耐える。


 「う、はあはあ」


 な、何とか耐えきった。


 『まだだよ』

 「う、ぐ、があああああああああ」


 心臓の痛みが治まったと思ったら、次は体全体が軋み始めた。

 痛い、痛い痛い痛い。

 立っていられず、そのまま仰向けに倒れてしまう。


 「何だか、おかしいことをしているね」


 メフィルの相手をしながら、こちらの様子を伺っていた人間族の神は斗和を睨んだ。

 それは警戒からなのか、その目をそらそうとはしない。

 それを隙と見たメフィルは捨て身の反撃に出る。


 「おっと、危ない」


 向かってきたメフィルは見えない壁で叩き潰された。

 そして、次は斗和の方へと向かってくる。


 「これは、また面倒くさそうなことをしているね。今の内に潰しちゃおう」


 手を振り上げるだけで、地上から複数の岩石の手をが生えてくる。

 そして、空は曇り雷鳴をとどろかせた。


 「死んで」


 雷が大きな音を立てて斗和に降り注ぎ、岩石の手は斗和に迫りくる。

 逃げ場などない。

 岩石の手が何かを掴んだようで、一斉に力を込めて握りつぶいていた。

 呆気ない。

 神は斗和に興味を失い、メフィルへと視線を向ける。


 「こっちも遊ぶのは飽きたし、もう終わらせようか」


 空を埋め尽くすほどの大きな赤が出現する。

 太陽のごときそれは、ただの火球だった。


 「じゃ、ばいばい」


 太陽が落ちてくる。

 ごうごうと燃えるその火の玉は地面に触れた瞬間、その辺り一面をマグマ化させた。

 圧倒的すぎる。

 その様子を見下ろして神は思う。

 本当に雑魚しかいなかった、と。

 彼は神の世界では下級神であり、神の中で下から数えた方がいいほど弱かった。

 しかし、下界の者達はどうだ。

 まるで私に歯が立たない。それは愉悦を感じる事実だった。

 そして、その愉悦を感じてしまったがゆえに彼は気が付かなかった。

 まだどちらも死んでいないことに。


 「へぶっ」


 拳が左頬に突き刺さった。

 それは初めて下界で喰らう攻撃で、その以外な攻撃により受け身することも忘れ吹き飛ばされる。


 「い、一体誰だ?」


 驚きによる硬直が解け、空中で静止する。

 そして、見た。

 そこには一人の男が浮かんでいる。

 その男はこちらを睨んでいた。


 「なっ」


 そして、瞬きしたときには近くにいてまたも殴られていた。

 今度は上手く立ち直る。


 「に、二度も我を殴ったのか、神である我を」

 「…………」


 目の前の男はしゃべらない。

 そして、また目の前に瞬間移動してきた。


 「またも喰らうわけがないだろう」


 神も彼の後ろへと移動する。

 そして、その背中向けて複数の魔法を放った。

 その一つ一つが都市一つを壊滅できるほどの威力をもっている。


 「がはっ」


 だが、それさえも当たらずすでに背後を取られ、背中を蹴られた。

 そして、理解する。

 こいつはあいつらと同じだと。

 あの神の世界にいた上級神達と同じ力を持っていると。


 「忌々しいやつらと同じだと、くそがっ、どうして下界にそんなやつが……」


 そこでその男に集中しすぎたためにまたも攻撃を喰らってしまった。

 神を中心として大きな爆発が起きる。

 攻撃はしたから、見るとメフィルが神に向かって左手を伸ばしていた。






 斗和は相手を見る。

 第二王女――メフィア・マルバーンの体を乗っ取っている人間族の神の魂が見えた。

 それはメフィアの魂を蝕んでいるように見え、そしてそのせいでメフィアの魂は苦しんでいるようだ。

 早く解放しないとまずいかもしれない。

 メフィルの攻撃によって爆発したが、まだ生きている。


 「こけにするなよ」


 魔力が溢れ、そして全方位に魔法が放たれる。

 見境のないその攻撃は近くの地形を変え始めていた。

 すでにマルバーン王国は跡形もない。


 「龍神の腕」


 斗和は両腕を龍のものへと変化させ反応のある箇所を殴った。

 がしかし、殴った箇所にはただの岩だけ残されている。

 奴は一体どこに。


 「お前から先に消滅させてやる!!」


 上から声が聞こえ、それと同時に刀身に幾何学模様が施された剣が俺に突き刺さろうとしていた。

 間一髪で回避する。

 その剣からはとても嫌な予感がしたので、「見た」。


 消滅の剣


 ○触れた物を元から無かったことにする。


 目の前にウインドウとして表示された効果はすさまじいものだった。

 触れたら今の自分でも死んでしまうだろう。

 それに俺には――――。


 「時間がない」


 できるだけ早く決着をつけたい。

 でないと俺の覚悟が無駄になってしまう。


 「トワ、いやあ大変だねぇ」

 「お前もな」


 片腕を失くしたメフィルはいつの間にか横に並んでいた。


 「死ねぇ」


 神は瞬間移動を駆使して、その消滅の剣を振り続ける。

 俺も瞬間移動は今の状態ではできるので大丈夫だが、メフィルは違う。

 そのためメフィルは向かってきたと分かった時はすでに姿を消していた。


 「やあやあ、聞こえるかい?」

 「一体どこから声が?」

 「君の服にさっき取り付けさせてもらったよ」


 よく見ると腕の辺りにスライムらしき粘着物がくっついていた。

 それから声が聞こえてくる。


 「ここは一旦協力しようじゃないか」

 「ああ、それは俺も思っていたところだ」

 「それは良かった。断られると思ったよ」

 「今までやってきたことは許していないからな」


 メフィルはその言葉に怖がった振りをする。


 「それでもすごいな、会話しながら避けれるんだね」

 「まだ、大丈夫だ」


 今、斗和にとって世界は止まっているような状態となっている。

 相手が瞬間移動してきたとしても斗和にとっては前に現れただけであり、避けることは造作もない。

 そして、鳩尾に拳を突き入れた。


 「ごふっ」


 体をくの字に曲げながら飛んでいく。

 あまり体は傷つけたくない。

 それは第二王女の体であるため、戻った時にはすでに死ぬ一歩手前だったとかはあまりにかわいそうだ。

 そして、神はそれに気づいているのか防御をしようとはしない。

 攻撃に全てを割いていた。


 「くそ、何で当たらない」

 「遅いからだ」

 「神を馬鹿にするとは、不敬な。罰してやる」


 消滅の剣を2本に増やして切りかかってくるが、数は変わっただけで当たらなければ意味がない。

 次は魂本体を攻撃してみた。


 「う、うぐ」


 効果はあったようだ。

 第二王女の魂にも少しだけ傷がつくが、それでもその第二王女の魂を囲っている神の魂の方がよりダメージを負っている。


 『トワ、もう時間が迫っているよ。急いで』

 「そうか」


 もう俺に残された時間は少ないらしい。

 この際、手荒なことをしてでも神を殺すしかない。


 「あ、ああ」


 目の前にいる神はまだ苦しんでいるようだ。

 今のうちに――――。

 とその時、斗和に形容しがたい嫌な予感というものが働いた。

 苦しんでいるはずの神を見る。

 よく見ると口元が笑っていた。

 目も大きくゆがみ笑みを浮かべているようだ。


 「は、はは、ははははははははっ」


 空を見上げるその顔は狂気じみたものを感じる。


 「ああ、そうか。もういいや、この世界なんて」


 第二王女の体から神の魂が抜ける。

 そして、落下する体。

 斗和は第二王女を受け止めると、すぐさま安全そうな地面へと横たわらせ、瞬間移動によって神と対峙する。

 神は精神体の状態であり、半透明だった。

 初めて本体を見たが、本体は老人の姿をしていた。


 「消滅してしまえばいいんだ」


 しゃがれた声で言うその言葉には狂気が詰まっている。

 そして、持っている消滅の剣を振り上げた。



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