ダークエルフとの決着
斗和が神と遭遇した時、メル達はダークエルフとが激しい戦いを繰り広げていた。
電撃は効くらしいので、メルは雷神により遠距離から攻撃している。
そして、唯一無音不可視の攻撃が見えるコマチは、メルに向かっている攻撃を全て土魔法によって撃ち落とす。
その上手い連携に相手のダークエルフは激昂する。
「くそ、くそっ。雑魚が、非道なエルフが、邪魔をするんじゃねぇ」
怒りに任せたかのように魔法を発動する。
まだ、この戦場で建っていた建物もその攻撃により、細切れにされていく。
メルはコマチの指示に従いながら避け、コマチはダークエルフの魔法を避けながらも反撃の隙を伺っている。
そして、無茶苦茶な攻撃は長く続くわけもなく一瞬魔法の発動が止まった。
それは時間にして1秒も経たないだろう。
しかしそれは明確な隙だ。
「ストーンハンマー、ウインドカッター、ボルケーノ、ウォーターブレス…………」
土で作られた大きな槌に始まり、風の刃、下から巻き上がる炎、そして襲い来る大量の水がダークエルフを襲う。
メルはその魔法を聞いたことがなく、それは相手も同じなため対処が遅れた。
「コマチちゃん、何をの魔法?」
「斗和が見てたアニメのキャラが使ってた。それの応用」
「アニメ?キャラ?」
それはコマチの脳にあるトワの記憶。
地球にいた頃、斗和が見ていた異世界転移物のアニメに出てくる魔法だ。
その主人公は魔法を得意とし、自分で作成したオリジナル魔法で強敵と戦っていた。
「再現できると分かった」
「何だか分からないけど、トワさんに教わったってことかな?」
「そんなところ」
そう言って、ダークエルフの方向を見る。
「プレス」
それはアニメに出てきた重力魔法。
効果は相手の体重を10倍にするという恐ろしいもの。
「うぐっ、何だその魔法は」
「そう、言うなればアニメ魔法?」
アニメの主人公が使っていたからアニメ魔法である。
コマチにとって魔法を改造するという考えはそのアニメからもらったものであるため、アニメ魔法は確かに合っているのかもしれない。
「ダブルプレス」
容赦なく体重をより重くする。
「があっ、くそが、何で生き返っても不幸なままなんだよ!!」
ダークエルフは立つことができず、地にうつむけに倒れる。
起き上がろうとするが体が重くて言うことを聞かない。
「もう終わりにする。じゃあね」
コマチは止めを刺そうと手に魔力を込め始めた。
「待って!!」
「どうしたの?メル」
「ちょっと話をしていい?」
そう言って、メルは倒れ伏しているダークエルフのところへ歩いていく。
「あなたがダークエルフで、エルフに恨みを持っていることは分かっています」
「…………」
「実際見たわけではありませんが、ダークエルフへの仕打ちは酷かったと教えられてきました」
「…………」
「許してくれなどはいいません。でもこんなことは間違っていると思います」
「なぁ、あんた間違ってるって自覚ある?」
「え?」
ダークエルフはようようと頭を上げ、見下ろすメルを見る。
「何でダークエルフがそんな仕打ちを受ける羽目になったか知ってるか?」
「いえ、でも力が強いから危ないとか――――」
「そんな理由だけで殺したりするか、普通」
そう言われ、メルは確かに力が強いだけで殺されることはないんじゃないか、と思ってしまう。
ならなぜダークエルフ達は酷い仕打ちを受けるようになったのか。
それは目の前のダークエルフの口から告げられる。
「それはね、いっぱいいっぱい殺したからだよ。エルフの子供達をね」
「へ?」
そこでメルはまずい、と後ろへ下がろうとする。
しかしすでにそれは手遅れで。
ダークエルフが会話をしながらこっそりと準備していた特大の魔法が辺りを巻き込みながら広がる。
音もなく、見えない何かが辺りを飲み込んでいった。
「メル、危ない」
その魔法を最初に受けたのは近くにいたメル。
触れたところから血しぶきが上がる。
骨が砕ける、そして皮膚は切り裂かれた。
恐ろしい魔法はコマチまで及び、コマチはプレスを解いて回避する。
「ふぅ、やっと抜け出せた。ああ、優しくて良かったよ、ありがとう」
受けた傷が何事もなかったかのように消えて無くなる。
ダークエルフはにたぁと笑う。
「この話はエルフがすごく反応してくれるんだぁ。今回もいい反応が見れて面白かったなぁ」
直に喰らったメルは仰向けに倒れ動かない。
地面には血だまりができていた。
「それで、その甘ちゃん達は決まってこんな風に死んじゃうんだよね」
メルに近づき、その顔を踏む。
「おっと、そこのチビ。攻撃するなよ、したらこの娘の頭を踏む砕くからねぇ」
攻撃をしようとしていたコマチはその言葉で、集めていた魔力を霧散させる。
汚いやり口だが、それは効果的だ。
「そのまま立ってろよ」
そして、コマチに向け魔法が放たれた。
それは先ほどまで放っていた刃の形をしているものではなく、威力を抑えたもの。
そのままコマチの腹部に打撃を与えた。
「うぶっ」
「おい、起き上がれよ。じゃねぇと踏み砕くぞ」
メルはすくっと立ち上がる。
そして、次は頭部を魔法が直撃した。
そのままの勢いで頭部から地面に衝突する。
「ほらほら、早くしろよ」
立っては攻撃されるコマチ。
普通の者ならば死んでいるところ、コマチは耐えていた。
それは魔法生命体であるから魔力との親和性が強く、受けた魔法の威力を一部流すことができる。
だが、それは全部流すことができるわけではなく、着実にコマチにダメージは蓄積していった。
「あーあ、楽しかったけど。もういいや、じゃあ死んでね」
最後、先ほどまでの殺す気などない攻撃に比べ、威力が違った。
避けることはできる、できるが避けると足蹴にされているメルの頭が踏みつぶされてしまうだろう。
諦めて受け止めようとした時、声が聞こえた。
「避けて!!」
その声が聞こえてから、すぐコマチは回避行動に出る。
そして、声がした方向――ダークエルフの方へ駆ける。
「なっ、お前生きて……」
その声とともにダークエルフが吹き飛んだ。
やっぱり、さっきの声は聞き間違いではないらしい。
そこには完全復活を遂げたメルがいた。
「メル、大丈夫?」
「大丈夫。この通りだよ」
メルの切り裂かれていた腕などはその傷が嘘だったかのように無かった。
そして、砕けたはずの骨も修復されている。
吹き飛ばされたダークエルフに対し、メルは追い打ちする。
「お返しだよ」
それは紛れもないダークエルフが使い、メルを追い込んだ魔法の縮小版だった。
その魔法はダークエルフを捉え、そして命中する。
「ぐぎぃ、痛い痛い痛いぃ」
直撃した右足は切り裂かれ、その骨は砕かれる。
まったく同じ魔法を使ったメルは、その顔に疲労を浮かべていた。
「でもどうやって?」
「実はぼろぼろにやられたのは事実なんだけど、遅れて回復させる回復魔法を予め使ったんだ。で、発動してこの通りだよ」
「あの魔法は?」
「あれはね、ほら」
そう言って、痛みに落ちてくるダークエルフに向け、彼女と全く同じ無音不可視の攻撃を放った。
それも複数。
「ダークエルフって力がエルフより強いだけで、使う魔法が変わるわけじゃないんだ。だから私でも使えるかなって」
それはまさしく、先ほどアニメ魔法と言ってコマチが使っていたのと同じ行為だった。
驚きに目を見開くコマチ。
メルは笑っていた。
「彼女の魔法はちょうど私の魔法の次に行ってただけだったんだ。だから再現できた」
つまり、風魔法の応用であるということだ。
「ふざっけるな」
血だらけとなりながらも、ダークエルフはなお魔法を放とうとする。
が、メルの方が発動が早く、コマチにやったように腹部に打撃を食らわす。
それで終わらず次は頭部を、そして左足、右手、左手全てを魔法で撃ち抜く。
メルは静かに怒っているようだった。
「う、く、ゆる――――」
「その先は言わないで」
顎を打撃が撃ち抜く。
脳震盪が起こったようで、そのままふらふらと倒れてしまった。
「私はもう許さない。コマチにしたことは全て覚えてる」
そう言って、最後に止めとしてダークエルフが使った大技の縮小版を複数生成し、倒れている彼女向かって放った。
骨が砕ける音に混じって嘆く声が聞こえる。
メルはその声が聞こえてないふりをして、その場を離れた。




