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王城へ

 エンダーエルフをメル達に任せ、王城の庭を歩く。

 目の前の城は一部欠けているなど、酷いありさまだ。

 そして、今も何かが衝突する音が響いている。


 「一体、何が起こっているんだ?」


 最初来た時に見た綺麗な庭園は見る影もない。

 王城へと近づくたびに衝撃の余波がより感じられるようになる。


 「うん?あれは…………」


 警戒しながら、王城へと近づく斗和の目には黒い物体が横たわっていた。

 鈍い輝きを放っているその黒い物体は金属であることが分かる。

 よく見れば、鎧を着ている人間のようだ。


 「おい、大丈夫か!?」

 「うう」


 抱き起こす。

 黒い鉄仮面を被っており、顔は分からない。分かるのは男であるということだけ。

 そして、何かを呟いているようだ。

 耳を近づける。


 「やっと……う……でも…………か」

 「待ってろ」


 回復魔法を使う。

 あまり得意ではないが、ないよりましだろう。

 手に魔力を集めてその黒い鎧を着た人物向け回復魔法を使っていく。

 時々呻いていたが一体彼に何があったのか?

 後ろからも戦闘音が聞こえてくる。どうも、メル達もエンダーエルフ相手に頑張っているようだ。

 メル達のためにもここで立ち止まっていてはいけない。


 「誰かは知らないが、すまない。俺は行かなくちゃいけない」


 王城の外壁にの近くに運び仰向けに寝かせる。

 そのまま王城に向かおうと思うと、その黒い鎧の人物から以外な声が聞こえてきた。


 「と、斗和、だよな……」

 「その声どこかで」

 「俺だ、三嶋だよ。覚えているか?」

 「悠太なのか!?」


 その黒い鎧の人物はその黒い鉄仮面を脱ぎ、素顔を晒す。

 そこにはクラスメイトの悠太がいた。

 確かさらわれたと聞いていたのだが、どうもそれは本当だったらしい。

 黒い鎧からは禍々しい気配があり、一目でそれには呪いがかかっているのだろうなという勘が働いた。


 「この鎧か?これはメフィルが俺に強制的に着せたものだ。この鎧のせいで俺は操り人形さ」

 「やはり、でも今自由に動けているということは」

 「ああ、やっと解放されたようだ。ぼろぼろだがな」


 それから悠太は今までのことを話す。

 さらわれ体を改造され、強制的にレベル上げをさせられ、最終的にこの戦いで倒れ伏した。

 それは苦痛の連続だっただろう。

 実際、悠太は話しながら顔を顰めていた。


 「俺はもう、本当に俺なのか分からなくなった」


 そう言って顔を伏せる。


 「お前には同情する、が、俺もこの戦いを止めるために必死なんだ。今王城では何が起きているか教えてくれないか?」

 「この戦いを止めるだって?そんなの無理だ。あれは人間が関わっちゃいけないものなんだ」

 「一体何が起きているんだ?」


 口を閉じ、ゆっくりと口を開いた。


 「今、メフィルと人間族の神がこの世界の主導権をめぐって戦っている」

 「世界の主導権?」

 「ああ、勝った奴がこの世界の神になれるってことだ」

 「そんな、そんなことが可能なのか?」

 「見ないと信じないだろうが、あれは神と言われた方がしっくりとくる、化け物だ」


 それ以上喋るのを止め黙ってしまった。


 「俺は疲れた。もうどうにでもしてくれ、いっそ殺してくれ」

 「ならその剣で死ねばいい」


 少し動くぐらいには回復させたはずだ。

 それなら、近くに置いてある剣で自害でもすればいい。

 だが、それをしないということはまだ彼には生きる理由があるということ。


 「お前はまだ死ねないはずだ。それは俺には分からないが死のうと思えばもうすでに死んでいるはずだ」


 そう言い残し、その場から離れ王城へ向かう。

 後ろから泣くのをこらえるような声が聞こえてくる。

 斗和は振り返らなかった。






 王城は耐衝撃、耐魔法の魔法が掛けられているためとても頑丈な作りである。

 だがその王城が半分ほど潰えていた。

 そして、それを成したのが目の前の二人。


 「ははははは、まだまだ動けそうだな」

 「…………」


 片方、よく見ると第二王女であるメフィア・マルバーンの姿をしている者は高笑いしながら無茶苦茶な攻撃を繰り出していた。

 王城の瓦礫が一瞬の内に手の形を取ったと思うと、相手のメフィルを握りつぶそうと迫る。

 それをメフィルが破壊し尽くすまでに、火魔法での青い炎の槍、風魔法の不可視の刃、土魔法の棘が迫っている。

 それも息をつく暇もないほどで、メフィルは防戦一方だった。


 「おや、もう一人客が来たようだな」

 「!!」


 まだそこまで近づいていないのに、すぐに気が付かれた。

 隠れても意味が無さそうなので姿を現す。


 「ほう、転移者の一人か。それで何しに来たの?」


 メフィルも俺の存在に気が付いているだろうが、対処に全神経を使っているようだ。


 「俺はこの戦いを止めに来た」

 「ほう、じゃあお前がこのメフィルも私も倒すということか?」


 殺気を向けられたわけでもないのに体の震えが止まらない。

 本能から恐怖している。


 『あれは、確かに神だね。まさか神が地上にいるなんて』

 「本物、なのか?」


 キリンはあれは本物の神だと言った。

 神は下級の神でも絶対的、まずこの世界では一番の権限を持っているらしい。


 「あれ、何か混じっているね。うん?へー懐かしい力を感じると思ったら、なるほど」

 『気を付けて!!』


 キリンが神力を解放する。

 一気に恐怖による束縛から解放され、間一髪目の前の神からの攻撃を避けることができた。


 「あら、避けちゃうんだ。まあいいや、君の相手は面倒そうだからこっちから片付けようか」


 神力を解放してもまだ震えている体を押さえる。

 あれは勝てるような相手ではない。

 そう本能が叫ぶ。

 逃げろと訴えている。


 『トワ、これは君のせいじゃないよ。君はよくやったと思う、でも神には勝てないよ、たとえ神力を使えたとしても勝率はとてもとても低い。今から仲間と逃げた方がいいんじゃないか?』


 キリンの提案に乗りたい自分がいる。

 その甘い誘惑はとても魅力的だ。

 でも。


 「でも、逃げたところで、こいつは俺達を追いかけてくるだろ」

 『確かにそうだけど』

 「そ、それに勝率は低いだけで、無いわけじゃないんだよな」

 『でも、そんなの無いに等しいほどだよ』

 「それでも、それでも俺はこのリヒトと約束した」


 リヒトと約束した時を思い出す。


 「それに俺には守りたい人がいる」


 仲間である皆が思い浮かぶ。

 それが失われるなんて想像もしたくない。


 『はあ、言っても無駄なんだね』

 「そうさ、俺は彼女達を守るなら死力を尽くす」


 リーシャ、メル、ミア、コマチ、ダリル、フリジア。

 一緒に旅してきた仲間達。

 まだ戦っている仲間もいるだろう。それなのに俺一人諦める?


 「そんなのかっこ悪いだろ」

 『本当に人間は見栄っ張りだね、でもそこがいい。じゃあ一つだけ勝率を上げる方法があるよ、でも後には引けないけどその覚悟はある?』

 「ああ、あの神に勝てるなら」


 キリンがその方法を言う。

 それは確かに後戻りはできないな。

 だが、それで勝てるなら…………。

 大切な仲間達を守れるのなら、俺は――――。

 斗和は神を見上げ、意を決する。



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