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始祖黒龍との決着

 荒れ狂う炎が辺りを破壊する。

 目を殴られた黒龍は殴った本人であるリーシャを追いかけまわしていた。

 その間に魔術師団は準備を進めている。


 「しつこいのう、ほれ」


 回避しながらも、もう一度次は左目の眼球目掛けて炎を飛ばす。

 しかし、そうそう二度も喰らわない。

 顔を振るって避け、お返しに口から広範囲の炎のブレスを吐いた。

 石畳の道が炎によって融解し、黒く染まる。

 リーシャもこの広範囲のブレスは流石に避けきれず、まともに喰らってしまった。


 「くっ、熱いのうっ」


 龍人族の服は特別に熱に強いように作られているが、その服でさえも先から燃え始めている。

 顔の前に出した腕も少しずつ火傷が広がっていた。


 「グガアアアア」

 「まだかのう」


 遠くでは魔術師団が準備を進めているのが見える。

 まだ、かかりそうだ。

 ブレスを止め、次はその巨体で押しつぶしに来た。

 すぐさま翼を生やし、空へと逃げる。

 そして、前よりか遅く黒龍も空へと舞いあがった。

 口から複数の火球が放たれ、それを何とか回避する。もしも翼の被膜が破れていなかったらすぐに追いつかれてやられていただろう。

 そこで、準備完了の光が放たれる。


 「よし、きた」


 すぐに急降下する。

 そして、黒龍もそれについて来た。

 このまま目的の場所まで連れていければ――――。


 「なっ」


 そこで盲目的にリーシャを追いかけていた黒龍が止まった。

 そして、どこか探しているように首を振っている。

 後少しで目的の場所なのに。

 これは気づいてしまったのかのう?


 「じゃが、ここまで来て諦めてもらったら困るのう」


 最大火力をお見舞いする。

 両手を黒龍へと向け、両手の前に魔力を凝縮させた。

 そして、その魔力は赤い炎に変化する。

 まだまだじゃ。

 熱量を上げる。すると、たちまち炎は青く澄んでいく。


 「ガア?」


 そして、黒龍はおもむろに魔術師団の方向を向いた。

 完全に気づいたようだ。

 自分を罠にはめようとしていることが分かったのか、離れようとしている。

 そうはさせん。

 青い炎から黒い炎へ。

 放つのは破壊へと導く炎。

 魔術師団に気を取られて逃げようとしている黒龍の背中に向かって放った。


 「喰らうのじゃ!!」


 黒い炎の塊はまっすぐに黒龍の背中を目指す。

 そして、もうすぐで当たる瞬間、黒龍はその黒い炎に気が付いた。

 もう遅いのじゃ。

 体を半分捻ってその黒い炎を確認したため、黒い炎は背中に当たらず、翼の付け根に当たる。

 バンッ。

 燃えるはずがないドラゴンの鱗、それも黒龍の鱗が黒い炎に包まれる。

 そして、バキッという音ともに片翼が捥げてしまった。


 「ギャオス」


 痛みに苦しんでいる黒龍。

 リーシャはその捥げた片翼を持って挑発する。


 「ふむ、これをこうやって」


 翼を広げたり閉じたりして黒龍に見せつけているのだ。

 それを見た黒龍は痛みなど忘れたかのように立ち上がり、リーシャを睨む。

 目が赤く充血するほど睨んでいる。

 さぞこの黒龍の中では恨みや怒りなどが増幅されていることだろう。

 そして、その翼を目的地に向け投げた。

 その飛んで行った翼を見て、そしてその目的地に向かうリーシャを見る。


 「…………」


 怒りからかすでに声も出さず、その強靭な前足と後ろ足でリーシャを追いかける。

 もうすでに黒龍はリーシャ以外何も目に入らなくなっていた。

 だから、罠もすんなりと発動することとなる。


 「引っかかったのう」


 黒龍の前足が地面に書かれた魔法陣に触れ、魔法が発動する。

 魔術師団と魔術師長が共同で作ったものは捕縛するための魔法。

 普通であればドラゴンなどの大型の魔物などには使ったりしないのだが、それを改良しまたいろいろと変化させた。

 すぐに魔法陣に触れた前足が動かなくなる。

 黒龍はそのせいでこけてしまう。

 動かなくなるのも一瞬のこと、すぐに治ったかと思うと次は魔法陣から黒い帯状の物が複数生え、黒龍を縛っていく。


 「ガアアアア」


 暴れてその黒い帯状の物を引きちぎるが、際限なくそれは魔法陣から生えて黒龍を縛る。

 そして、ミアはその頃合いを図り、隠れていた廃屋から飛び出した。

 黒龍の背中に飛び乗る。


 「一体どこに?」


 背中を見て逆鱗を探す。

 黒龍も動いているので、足場が安定しない。

 そのため探すにもすごく一苦労だ。


 「おとなしくするのじゃ」


 黒龍の顔に拳を打ち付けるリーシャ。

 それでも抵抗は変わらず激しい。


 「…………こ、これだ!?」


 翼と翼の肩甲骨の間、少し右よりにその鱗は合った。

 周りの黒い鱗と同じ黒い鱗だが、逆に生えており光の反射が違っていたため、見つけることができた。

 すぐさまクレイモアを背中から引き抜く。

 そして、逆鱗に向けて刺そうとした瞬間。


 「ガアアアア」


 更に暴れ出し、それに加えて火球を見境なく放ち始めた。

 それは背中にいるミアにも飛んできて、ミアの片腕を焼いた。


 「ぐうう、くっ」


 じゅうという音と焼ける匂いが鼻に来る。

 だが、手に持ったクレイモアは手放さなかった。

 片腕で持ち、そのクレイモアの柄を鱗に引っ掛けて逆鱗へと近づく。

 そして、逆鱗近くまで何とか来ることができた。


 「もう少し動きが止まってくれれば」


 一瞬でいい、一瞬動きが止まってくれたらクレイモアを刺すことができるだろう。

 ミアは周りを見る。

 未だ火球を至る所に放っているために、周りの地面にはクレーターが複数できていた。


 「ミア!!」


 呼ばれた気がする。

 片腕が焼かれた痛みに耐えながらその声がする方向を見ると、そこにリーシャが突っ立っていた。

 それも黒龍が見える位置に。

 そして、黒龍はそのリーシャに顔を向けたのだ。


 「今だ!!」


 動きが止まった。

 ミアはクレイモアを口にくわえ、片腕と両足で背中を駆けのぼる。

 そして、逆鱗のところへ着いた。


 「これで、終わりだ」


 黒龍がリーシャの火球を放ったのと、ミアが逆鱗にクレイモアを突き刺したタイミングは一緒だった。

 火球はリーシャに直撃せず、かすめてへちへと飛んでいく。

 そして、ミアはクレイモアによって何かを破壊した感触を感じた。


 「ガ」


 ぐるんっと黒龍は白目を向いて倒れる。

 そして、その倒れた衝撃で黒龍の上にいたミアは地面に落とされた。

 倒した。

 やっと倒したのだ。

 ミアは嬉しさを感じるとともに忘れていた腕の痛みがぶり返し、そのまま気を失った。


 「安らかに眠っておくれ、始祖よ」


 リーシャもすでに魔力の限界を超えての魔法行使によってそのまま仰向けに倒れてしまった。




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