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始祖黒龍との激戦

 龍人族の始祖と呼ばれる存在との戦いが始まった。

 魔術師長率いる魔術師団は上空を駆けるその黒きドラゴンへ魔法を放つ。

 が、しかし相手は空の王者、魔法は掠りもしない。

 そして、仕返しにと中程度の火球が降り注ぐ。


 「結界を張れ!!」


 中程度と言ってもそれはこの始祖が放つ火球基準でのこと。

 家丸ごとすっぽり入るぐらいの火球が何発も放たれた。

 間一髪結界が間に合う。


 「このままではじり貧です」

 「仕方ない、最後まで残しておきたかったが、この黒龍相手ではそうも言ってられないか」


 魔術師長は今まで枷となっていた魔道具を除ける。

 それは魔力の通りを弱くするというものだった。

 それを除けた瞬間、魔術師長の力は解放される。


 「まさか、そこまで魔力を持っているとはのう。驚きじゃ」


 それは人間族が持てる魔力の量を遥かに超えている。

 その魔力増加の反動で魔術師長は少し苦しそうだ。


 「確かに前探査する魔法でも似たようなのを見たのう」


 それはダリルを探す時に魔法を使った時。

 あの時も全力を出していなかったが、それでも膨大な魔力の行使が窺えた。

 空を飛ぶ黒龍はその変貌した魔術師長に警戒を強めるように、魔術師長の上を旋回している。どうも様子を伺っているようだ。

 魔術師長が指を上に差す。


 「落ちろ」


 がくんっ。

 その落ちろという一言で空にあった雲が消え去る。

 そして、飛んでいた黒龍が地に引き付けられるように少しずつ高度を落としていた。

 そこでリーシャは気づく。


 「まさか重力魔法かのう!?」


 重力魔法。

 まず誰も使おうとはしない魔法だ。

 それは膨大な魔力消費の癖にできることと言えば足止めのみで、あまりに使えない代物だから。

 だが、ここに恐ろしいほどの魔力タンクを持った魔術師がいたら、それは恐ろしい兵器となるだろう。黒龍は抵抗して、落下速度を落としているが、もし普通の人間族や獣人族、その他の種族にでも使ってしまえば呆気なく潰され死んでしまう。

 黒龍はもうすでに近づいている。


 「私の出番ですね!!」


 ミアが空中で必死に抵抗する黒龍向けて走る。


 「ああ、待ちなさい」

 「待つのじゃ」


 そこには重力魔法によって作られた力場がある。

 それは黒龍だけではなく、自分達にとっても有効なのだ。

 が、その忠告を聞かずにミアはその重力場に入ってしまった。


 「ぐっ、確かにこれは厳しいですが、しかし私には置く斬撃があります」


 自分の体重の何十倍ものGがかかっているはずなのだが、ゆっくりとミアはそのクレイモアを振り回し始めた。

 もう少しすれば黒龍にそのクレイモアの切っ先が当たる距離となる。

 それまでにミアはより多く斬撃をそこへ残す。


 「う、ん、少し慣れてきました」

 「うそだろ……」

 「流石、ミアじゃのう……」


 そこには通常の重力の何十倍となった世界でいつものように動くミアがいた。

 もうすでに何回クレイモアを振ったのか分からない。

 そして、次の一振りが限界数だった。


 「これで最後です」


 振った後、その重力場から逃れる。

 そして、始まったのは魔術師団による魔法一斉放射だ。

 リーシャも龍撃魔法での最大限の炎をぶつける。

 炎が舞い、氷が穿ち、雷は激しく、そして風が形を変え黒龍を襲う。

 一回目の一斉放射が終わり、土埃が舞う。

 そして、土埃が晴れてそこにはほぼほぼ無傷の黒龍がいた。


 「なっ」

 「私達の魔法が効かない!?」


 魔術師団の者達は自慢の魔法を使ったにもかかわらず傷の浅い黒龍に絶望する。

 黒龍はその様子にまるで笑っているようだった。

 そして、次はミアが設置した斬撃の場所まで降下する。

 最初の一太刀が入った音がした。

 それは鈍い鉄と鉄をぶつけたような音。

 その後も連続とその音が鳴り響く。

 黒龍の鱗はまるでその斬撃をものともしない。が、それは鱗だけで。


 「見ろ、翼の被膜が」


 翼の被膜が切り裂かれるのが見えた。

 少しだけ亀裂が入ったかと思うと、そこからズタズタに引き裂かれている。

 黒龍は叫び声を上げていた。

 その声により耳がやられる。

 が、初めて目に見えてダメージが入った。

 そのことに下がっていた士気が少し上がる。


 「すまないが、時間切れだ」


 そこで重力魔法を連続して使っていた魔術師長が限界を迎える。

 過剰な魔力の循環と消費に、体から放射熱が放たれた。

 魔術師長はよろよろと魔術師団の後ろへと退避する。

 重力の枷から解かれた黒龍は空へと再度羽ばたいた。

 翼の被膜は破れているが、ドラゴンは飛ぶことができる。それは翼に頼って飛んでいるわけではなく風魔法の応用によって飛んでいるからだ。

 しかし、翼は空での舵取りの役割を持っているため、どうしても速度は落ちてしまう。


 「グギャアア」


 怒っている。

 黒龍にとってもこれほど怒ったことは数回しかない。

 この虫けらどもを潰す。

 殺気で頭が満たされていく。


 「来るぞっ」


 黒龍は空を飛ぶのを止めた。

 その鋼鉄よりなお固い鱗でタックルを仕掛けてくる。

 ドコンッ。

 地面が揺れる。

 タックルした地面はえぐれていた。


 「まただ、結界」


 オーバーヒート中の魔術師長は苦しそうな表情で、魔術師団と共に黒龍から離れる。

 地面にタックルをし、着地した黒龍はそのまま口から中程度の炎を数発放つ。

 それを結界で防ぐ。

 ミアとリーシャは何とか避けていた。

 そして、その火球が飛ぶ中黒龍は結界目掛けてその体をぶつけた。

 ぶつかった瞬間にはじけ飛ぶ結界。

 その次にあるのは生身の魔術師達だ。


 「くそ、おらっ」


 魔術師長は痛む体に鞭を打ち、全力でもう一つ結界を割り込ませた。

 その結界は魔術師団全員が張ったものより強力らしく、破られていない。

 何度もぶつかる黒龍。その様子を見て、リーシャは疑問を抱く。


 「ふむ、おかしいのう。始祖様ではないようじゃ」

 「どういうこと?」

 「始祖様は我らと同じく言葉をしゃべれるはずじゃ。それにあれほど阿呆ではない」


 まず生きてはいないはずの黒龍がいる時点でおかしいのじゃが。

 とリーシャは言う。

 そして、十中八九王城にいる者が始祖を生き返らせたのだろうと思う。


 「始祖様の伝説を思い出したのじゃが、始祖様には弱点が存在する」

 「それは?」

 「逆鱗じゃ」


 逆鱗は肩甲骨の間に存在するとされている。

 それが本当かは分からないが、里に伝わっている話は実話を元にされているものばかりで、信ぴょう性は高い。

 そして、その逆鱗を見つけ攻撃できるとしたら――――。


 「ミア、お主に始祖様を弔うてほしい」

 「逆鱗を攻撃するってことですか?」

 「そうじゃ、逆鱗の下には始祖様の力の源である器官がある。そこを破壊すればたちまち死に至るのじゃ」


 話の中で始祖様はそれで殺されてしまった。

 人間族によって。

 もう魔術師長も限界が近いだろう。

 ミアには魔術師長と我で始祖様を止めるから逆鱗を攻撃してほしい旨、伝えた。


 「分かりました。任せてください」


 ミアはすぐさま了承する。

 一番危険である役目なのだが、何とも頼もしいことか。

 そうと決まれば善は急げ。

 リーシャは黒龍に近づき、その目を殴った。


 「ギャオ」


 流石に瞳はそこまで固くないようで、悶えている。


 「少し耳を貸せ」


 その間にリーシャは作戦を魔術師長に伝えた。


 「よし、分かった。協力しよう、どちらにしてもこちらは手も足も出ない」


 協力をこぎつけることができた。

 そして、目の痛みが治まった黒龍はリーシャを睨む。

 その目により一層どす黒い殺気をはらみ、リーシャがターゲットとなっているのが明確だった。

 まずはこちらに注意を引き付けることができた。

 後はどれほどこちらが耐えれるかだ。


 「任せたぞ、ミア」


 物陰に隠れて好機を待つミアに願った。



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