呪いの居場所
ラーマの王城では会議が開かれていた。
主題はこの黒く染まる呪いのことについて。
この呪いは体が全て黒く染まってしまったら魔物化してしまうという、恐ろしい事実が判明している。
そこでラーマ王に大臣、魔術師長、騎士団長、有力貴族の面々、そして俺達が会議に出席していた。
「魔術師長、この呪いについて何か分かりましたか?」
大臣が魔術師長に尋ねる。
が、魔術師長は首を横に振った。
「まだ、何も分かってません。何も分からないんです、この世にあるような代物じゃない」
「それはどういうことだ?」
「私達魔術師が使う魔力とはまた違う力が働いているのかと」
その呪いは魔法でどうこうできるものではないらしい。
付け加えて、魔術師長はこの呪いにかかると早くて3日で魔物化が始まると告げた。
「ふむ、ではやはりこの呪いを生む出した本人をどうするしかないのかのう?」
「そうですね。呪いというのは主人無くして存在はできないはずですから」
「ではその呪いの本人は誰か分かったか?」
「はい。大まかな場所までは何とか絞り込めました」
「ほう」
そう言って、魔術師長は会議の長机の上に魔法で形作られた地図を展開した。
そこにはラーマを含めた他の国も移されている。
そして、ラーマに集中して赤い点が打たれており、他の地域でもまばらに赤い点が打たれている。
これは一体?
「これは、この呪い自体を現した地図です」
ということはラーマはすごい数の呪い感染者がいることになる。
地図上ではラーマ一体が真っ赤に染まっていた。
「では、このラーマの外にある赤い点も呪い感染者なのかな?」
「いえ、これは呪い本体です」
そこで俺達はここに来るまでに倒した黒い魔物達を思い浮かべる。
もしかして、あれが呪い本体だったのか。
話を聞いていると思い浮かべたとおり、黒い魔物達が呪い本体らしく、今世界中でその黒い魔物達が跋扈しているようだ。
そして、ラーマの他にもう一つ赤い点が集まっているところがある。
それは――――。
「人間族の国、マルバーン王国が怪しいと思われます」
「なんだと!?それではこの事態を起こしたのは人間族だというのか!?」
「いえ、そうではありません。人間族にこんな力はあるはずがないですから」
人間族である騎士団長が魔術師長に迫る。
その顔は怒りに染まっていた。
どうも人間族がこんなことをやったと疑われたことにご立腹のようだ。
だが、これは確かに人間族が出来そうなことではない。
もしでいているのなら、すでに戦争は人間族の勝ちとなっていただろう。
つまり、俺達が呼ばれることもないのだ。
「では、誰がこんなことをしたのだ?」
「それは分かりません。しかし、見ていてください」
そう言って魔術師長がマルバーン王国がある場所を示す。
そのあたりを見ていると、少し時間が経って赤い点が増えた。
それも一気に数十体という数だ。
「これがどうした?感染しているだけだろう」
「いえ、違います」
「増え方が異常だ…………」
「そのとおりです。トワ君」
ついぼそっとつぶやいたのが魔術師長にピックアップされてしまった。
視線が俺の方向に集中する。
「どういことですかな?」
有力貴族の代表を務める者が尋ねる。
「トワ君が言ったとおり増え方が異常なんだ。普通感染で増えていくなら続々と増えていくはずだ、けれどこれは一気に、そして定期的に増えている。まるで生み出しているかのように」
そう言われ、貴族達と騎士団長は地図をじっくりと見る。
そして、数分してまた一気に増えた。
「確かに、これはおかしいですな」
「そうだな」
貴族達も騎士団長もマルバーン王国が怪しいと理解する。
つまり、マルバーン王国には異常事態が起こっているということ。
「そして、このことからマルバーン王国にはこの事態を引き起こした張本人がいる、呪いの主が」
「では我ら騎士団によって息の根を止めてこよう」
そう言ってこの会議を抜けようとしていた騎士団長をラーマ王が止める。
「そう急くな。まだその敵の正体も分かっておらんのだぞ」
「す、すいません」
「はい、これほどのことを起こせる者。それは強大な力を持った者でしょう。そこで今回は我ら魔術師団、騎士団、そして他種族の戦士達による混合軍で向かいたいと思っています」
「他の者も入れるのか?」
「はい、それほど今回はまずいということです」
そして、魔術師長は俺の方を見た。
「トワ君は一緒に来てくれますか?」
「もちろんです。しかし、出発に関しては少し待ってもらってもいいですか?」
「はい、こちらにも準備はあります。猶予にして1日半ほどでしょうか?それ以上は待てません」
騎士団長は俺、そして仲間達を見て目を細くする。
「こいつらを連れて行くのか?」
「はい」
「そうか、それほど腕が立つというのか」
納得いっていない様子の騎士団長。
確かにどことも知れない者が一緒に行くとなると不安に思うことだ。
まして、騎士団長をしている身としては兵士の命を預かっている。
足手まといだった場合、仲間達の命まで脅かされるのを危惧しているのだろう。
「彼は強いですよ」
「そうか、お前が言うのならそうなのだろうな」
特にこのことについては反論なく、椅子に座った。
それから行軍する際の諸々の注意を聞く。
その中でもし仲間が攻撃を受け感染した場合、躊躇せず殺すことが念押しされた。
もし感染しても、この行軍では回復魔法が使える者達は最低限しか連れて行ってない。そのため、切り捨てるということだ。
行軍の速度を維持する上でも最適である。
「では、これで話し合いは終わりだ。各々準備をしてくれ」
そう言ってラーマ王は会議室を出て行ってしまった。
扉が閉まった瞬間、騎士団長が俺の方に近づいてくる。
「なんですか?」
「ふん、肝は据わっているようだな」
思いっきり殺気をぶつけていたが、そんなもので怯んだりはしない。
それで納得したのか騎士団長も部屋から出て行った。
有力貴族達も用が済んだので部屋を出ていく。
残ったのは魔術師長と斗和達だった。
「すいません、巻き込んでしまって」
「いえ、私達もこの事態を解決したいと思っていますから」
「トワさん達が向かってくれたら安心ですね。私達だけで行くとしたらこの存在に勝てるかどうか。良くて数人は生き残れるぐらいでしょうか」
それほど相手の力量が上ということだろう。
「それでは、私も準備がありますので」
そのまま魔術師長は部屋を出て行ってしまった。
俺達も無言のままその部屋を後にする。
そして、日向達が眠っているテントの方へと戻った。
「どうだった?」
日向達に付き添っている宗太がこちらを見る。
「それが――――」
会議でのことを耳元で伝えた。
あまりテントにいる他の者に聞かれると良くないので小さい声で会話する。
「と、なるとマルバーン王国に戻るということか?」
「ああ、それでなんだが宗太達はここに残ってほしいと思っている」
「何でだ」
「日向達を見ていてほしいというのもある」
宗太が俺の目を見通す。
数秒か見つめていた。
「そうか、分かった」
そのことを亜里沙と美貴にも伝え、了承してもらった。
そして、仲間達を見る。
「まさか、いつかのように危ないから待っていてほしいとか言うの?」
ダリルが睨んでくる。
「ああ、えっと…………」
「我は着いていくのじゃ」
「私も着いていきます」
リーシャとミアは俺の方へ近づき、その手を両方から握る。
「あ、私も」
ダリルも後ろから抱き着いてくる。
「わ、私も行きます」
メルが控えめに左腕を掴んだ。
「ん」
コマチがその小さい体を生かし、正面から体をよじ登ってきた。
最後残っているのはフリジアだ。
「私もここまで来たし、行くわよ」
そう言って俺の服を掴んだ。
「だが」
その次に言う言葉は止められる。
掴まれた体のところから強い思いが伝わってくる。
説得しても無駄だろうな。
「分かった、でも決して死なないでくれ」
無言の肯定を受け、俺達は旅の行軍するための準備を始めた。




