ラーマに到着し……
「おい、やっと見えてきたぞ」
宗太が指を指した方向にはラーマの外壁が見える。
ラーマの近くまでこれたようだ。
傷を受けた箇所を確認してみると、黒い部分が少し広がっているがそれでも日向達よりかはましだ。
すでに体の半分ほどが黒く染まってしまっている。
「もう少しだ、皆頑張ってくれ」
ラーマの外壁の門の前につく。
固く閉ざされた門は、外からの侵入を完全に拒んでいた。
ドアを強く叩く。
「おーい。誰か入れてくれぇ!!」
強く叩いて大きな声で叫ぶが開く様子はない。
外壁の上の方を見ても誰も下を確認などしていなかった。
おかしい。
ここまで大きな声を出したら誰か確認するはずなのだが。
もう一度強く門を叩いた。
すると今回は反応がある。
門の中から何かが動く音が聞こえ、それは門すぐ内に集まってきているようだった。
そして、門が開かれ――――。
「ありが……あぶなっ」
門の隙間から俺の体向けて槍が突き出された。
動体視力と反射神経で避け、敵意がないことを告げる。
「俺は敵じゃない。ラーマ王と縁のある者だ」
それから今病人が3人いるから中に入れてほしいこと、などを端的に伝える。
向こう側で話し合う声が聞こえた。
「お前達は何者だ?」
「人間族の勇者とその一行だ。勇者の内3人が病で倒れた、助けてほしい」
「…………分かった、ではもう少し離れていろ」
言われたとおり離れた場所で門が開くのを待つ。
ゆっくりと開いていく門、そしてそこから姿を現したのは重装備の兵士達だった。
その目は警戒で満たされている。
「入れてはくれないのか?」
「信じることはできない。魔物じゃないという確証はないだろう?」
「え、じゃあ獣人族は?」
もし、俺達のように拒否されてしまっているならまだ危険な外で安住の地を探していることになる。
前へと一歩でた兵士の一人はダリルの質問に答えることはないようだ。
彼の手は腰元にある剣にかけられているため、少しでもこちらが動けばそれで戦うこととなるだろう。
何とか説得しなくては。
「ではどうすれば魔物ではないと信用してくれるんですか?」
「信用はできない。ここに入れるわけにはいかないのだ」
そして、彼は剣を抜いた。
城壁の上からは弓兵がこちらに矢を向けている。
一触即発の雰囲気が漂う。
もう、だめか…………。
諦めて戦わず逃げる方法を模索している中、門の内から違う声が聞こえてきた。
「外は危ないです」
「命令しているつもりか?」
「いえ、滅相もありません」
「では、私が言ったことに口答えするんじゃない」
その声は聞いたことがあった。
そして、門の隙間から見知った男性が登場する。
「やはり、人間族の勇者ではないか?」
「あれは魔物達が化けているかもしれません。私どもの後ろに」
多くの兵士に囲まれながら出てきたのはラーマ王本人だった。
ラーマ王は俺を見て、そして後ろの仲間達を見た。
「ふむ、見知らない顔もおるが魔物には見えん」
「ラーマ王、エルフへの手紙は届けました。エルフ族もここへ避難されていますか?」
「確かトワだったか、ああ、エルフと獣人族はラーマへと避難を済ませておる」
それを聞いて、安心する。
逃げ切れたのか。
「すみませんが、俺達も入れてもらえませんか?」
「少し待ってほしい。まずは君達の魔力を調べる」
そう言って門の中からもう一人男性が現れた。
それも見知った顔だ。
「魔術師長!!」
「そうだい、彼らは魔物か否か?」
「僕が調べたところ彼らは魔物じゃないですよ。上手く隠せていたなら分かりませんが」
「ははは、君がそういうなら本物なんだろう、入れてやれ」
「ですが」
「お前は我が魔術師長の言葉が信じれないのか?それと、トワ君、久しぶりだな」
「はい、久しぶりです」
俺達は、ラーマ王と魔術師長のおかげで中に入ることができた。
中に入ると町にはたくさんのテントが張られており、そこでエルフと獣人族達は暮らしているようだ。
見たことのあるような顔もいる。
「残念だが、全員屋根のある場所へ住まわせることはできなかった」
エルフと獣人族の中には暗い顔をしている者も少なくない。
それにしても、数が少ない。
エルフはあまり数が多くないとはいえ、それでも明らかに数が異常に少ない。
それは獣人族も同じだ。
ラーマ王が馬車を使わず歩きながら、町の様子を説明してくれる。
「気づいただろうが、獣人族、エルフともに助けられたのはほんの少しだ」
「他の人達は?」
「メルだったかな、想像したとおり他のエルフは助けられなかった」
そこでラーマ王は一つの大きなテントを指さした。
「あそこでは、そこの勇者達みたいになった人達が治療を受けている。まあ、治った事例は未だ聞かないが」
ラーマに案内され、日向達もここで治療を受けさせてもらえることとなった。
日向、充、芽衣をテントの中にあるベットへと寝かせる。
周りを見回すと黒くなる呪いにかかった者達で溢れていた。
そして、もうすぐで全身が黒く染まる者の周りには兵士の一人が立っている。
あれは一体?
「あれは介錯しているのだ。全身が黒く染まれば魔物化が始まってしまう、完全に魔物になる前に人間として死なせてあげる」
そう言って、黒く染まってしまった患者は首を剣で切り落とされてしまった。
首の断面から血液が出ず、そこからは黒い瘴気が漏れ出ていた。
「連れていけ」
首を切られた家族なのだろう。
兵士に抑えらえて、その者の最後を見ていた。
少女が母親に抱かれたまま震えている。
ここは地獄だった。
苦しさから嘆く声、そして最後にはこの場所で首を切り落とされる。
「で、では、日向達を助ける方法はないんですか!?」
宗太がラーマ王に掴みかかる勢いで近づいた。
ラーマ王は目を伏せる。
それはない、と言っているようなものだった。
「そんな…………」
「え、芽衣ちゃんはもう、助からないってこと?」
「そんな、そんなことって」
クラスメイト達は膝を地面に着いてしまった。
今も寝込んでいる日向達が助からない。
それは俺にとってもショックで、だからこそ治す方法をいろいろと試す。
「やっても無駄だ、思いつくことはいろいろやったが全て効果はなかった。勇者の回復魔法に期待していたが、それでも無理らしいな」
回復魔法はやはり効果はなく。
その他、ポーションなどのアイテムにしても回復の兆しは見えない。
「では、このまま死んでいくだけなのか?」
「治す以外で方法がないこともないが」
「それはどうすればいいんですか?」
「これを引き起こした本人をどうこうするしかなかろうな」
今も城ではそのことについて話し合われているらしかった。
そこで、斗和達にも参加してくれないか、と王から言われる。
「分かりました。行きます」
宗太と亜里沙、美貴はここで日向達を看病することにして、斗和達は王城へと向かった。




