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黒き絶望

 黒い森の中には黒い魔物がたくさんいる。

 そして、俺達を見たらすぐさま飛び掛かってくるのだ。


 「トワ、危ないっ」


 宗太が生み出したスライムで、攻撃をずらしてくれる。

 攻撃が当たったスライムは黒く変色して崩れ落ちた。

 俺は犠牲になったスライムを飛び越え、そのまま攻撃してきた魔物を焼き尽くす。

 こいつらの攻撃を喰らって日向と芽衣がダウンしてしまったため、わまり触らずに倒していく方針で進んでいく。

 最終的に気絶した日向を充が背負い、芽衣を宗太が背負う。

 そのため、戦いに参加できるのが亜里沙、美貴、フリジア、ミア、リーシャ、メル、コマチ、ダリルと俺である。

 その内、メルと亜里沙は回復魔法が得意なため日向と芽衣の手当に当たってもらっている。

 そのため実質はその二人を除いた人数で守りながら進んでいた。


 「とりゃ、おりゃ」


 木をなぎ倒しながらミアがクレイモアを振り回し、黒い魔物達を両断している。

 ヘカトンに乗ったフリジアも同じく切り刻んでいた。

 ダリルも不慣れながらメルに習った風魔法を使い、交戦中。

 そして、俺とリーシャが先頭を進んでいた。


 「リーシャ、大丈夫か?」

 「うむ、まだいけるのじゃ」


 森に入った瞬間、戦いの連続だった。

 戦闘を繰り返す内に魔力も体力も削られていく。

 そして、焦りと疲労からミスも目立ちだした。

 それにしてもまだマールズ王国には着かないのか?

 進行する速度は遅いとはいえ、結構な時間を歩いたと思う。

 それでも建造物一つ見えない。


 「ミア、危ないっ」

 「ごめん、ありがとう、トワ」


 ミアの後ろから襲い掛かるのを追い払う。

 風魔法の刃で前足を切り落とした。

 そして、ミアが止めをさす。


 「あれを見て」


 コマチが指さした方向を見る。

 そこには見たことのある建造物があった。

 マールズ国の塀だ。

 やっと着いた。

 逸る気持ちを抑え込み着実に距離を短くする。

 だが、近づくほど異変に気が付いた。それは、塀の中から全く人気を感じないのだ。


 「門が破られてる!!」

 「嘘だろ……」


 ダリルが駆け寄り、その門を見る。

 魔物によってこじ開けられたような跡があった。

 まさか、イール達は――――。

 周りにいる魔物達を拓けた門のところまでおびき寄せ、一気に殲滅する。

 木が生い茂った障害物が多いところより遥かに戦いやすくすぐに戦闘は終わった。

 急いで門の中へと入る。

 木で建てられた家は全て破壊され、唯一石造りでできた城でさえ何か大きなものに破壊されたように欠けていた。

 当然、中にも黒い魔物達がいる。


 「ギュワアアア」


 森にいた獣のような黒い魔物達の他に、虫のような見た目をした魔物もいるようだ。

 やはり、それらにも目はなく何かいろいろな物をくっつけたような見た目をしている。


 「襲ってくるぞ」


 休みなくまたも戦う。

 それから一息つく暇もなく黒い魔物達を潰していく。

 中には酸を飛ばしたり、魔法を使ったりと特殊な技を使う魔物もいた。

 戦闘開始してからどれくらい経っただろうか、近くから声が上がる。


 「ぐっ、が」


 後ろから声が聞こえ振り向くと、日向を背負っていた充が苦しんでいた。

 魔物は食い止めているため、充のところへは向かわしていない。


 『トワ、虫だ。小さい虫が飛んでる』


 よく見ると、上空に虫の集まりが出来ていた。

 その一部が少し下りてきている。


 「リーシャ!!」

 「ああ、任せろ、ガアアアア」


 口の先に魔法陣が出現し、そこから溢れんばかりの炎が噴き出る。

 炎は虫の集まりを焼いていく。

 全てを焼くことはできなかったが、残った虫を追っ払うことはできたようだ。

 すぐさま他の黒い魔物達を相手にしながら指示を出す。


 「亜里沙、メル、充を見てくれ」

 「分かったわ」

 「了解です」


 その間布陣を敷いて戦っている俺達は、小さな虫にも気を付けながら戦う。

 魔物の数は着実に減ってきている。

 もう少しでここにいる黒い魔物達は全滅するだろう。

 それから数十分ほどで魔物達の出現は無くなった。


 「それで充の状態はどうだ?」

 「だめね、一緒だわ」

 「回復魔法じゃ治せません。黒くなるのを遅くすることはできるんですが」


 腹を刺されたようで、腹が少しずつ黒く染まっていた。

 日向と芽衣も侵食が進んでいる。

 まずい。

 フリジアにヘカトンで日向と充を運んでもらう。

 急いで安心して休められる場所に向かわないと。


 「トワ、ここ死体がないよ」


 コマチが辺りを見渡して言う。

 そして、気が付いた。確かにここには戦闘した形跡もなければ死体や血痕などもない。

 もしかして。


 「どこかに全員で逃げたのか?」


 そう思えば、確かにこの状況にも納得ができる。

 そして、逃げるとしたら協定を取った獣人族の国――シャガラか、商売の国――ラーマのどちらかだろう。

 仲間にどちらへ逃げたのかを問う。


 「私はラーマだと思うな」


 すぐに答えたのはダリルだった。


 「何でだ?」

 「シャガラは大きな国だけど、この黒い魔物達の進行を止める高い壁なんてものはないよ。それに比べてラーマだったら高い塀があるよね。賢いイールもそっちに行ったと思うよ」

 「なるほど」


 シャガラは行ったことがないため、分からなかったが高い塀が無いのか。

 そして、それをイールは知っているとしたら逃げる先はラーマになるだろう。

 それにラーマだったら日向達も休めると思う。

 日向達を任せるとしても先にラーマへ行っときたい。


 「じゃあ、ラーマに行くことでいいか?」


 仲間達は賛成してくれたので、フリジアは日向と充を担いで、宗太は芽衣を背負って移動を開始する。

 その間も俺とリーシャは気を緩めずに黒い森へと入っていく。

 やはり、そこにはたくさんの魔物の気配がする。

 それもこちらに気が付いたようだ。


 「よし、俺達は先行して行く。任したぞキリン」


 エルフ達もいないことが分かったため、キリンの力を借りて龍撃魔法を用いる。

 魔物と共に木が燃える。

 燃え移らないように、メルによって真空状態を火元に作ってもらい消火してもらう。

 そうしながらラーマへと突き進む。

 気を使って押さえていた分、力を解放して魔物達を駆除していく。

 そして、全速力のまま森の中を走る。途中宗太の体力が限界に近かったため休みながらも、前より数倍の速度で進んでいく。

 森の出口が見えた。


 「出口か――――あ?」


 森を抜けるとそこは黒一色だった。

 その黒全てが動き、俺達を睥睨する。

 まだ終わったわけではないと。

 そこには数万もの数の黒い魔物の群れが居座っていた。

 見渡す限り地面が見えないくらい多くの黒い魔物達が突然現れた獲物に興味を示す。


 「くそっ」

 「これは厳しい」

 「まずいのう」


 絶望を感じながらも斗和は諦めない。

 自分の命を削ってでも、ここは通らないといけない。

 トワはキリンに頼んだ。


 「龍撃魔法、全開で頼む」



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