儀式後
シャガラが控室に着くと、そこでは斗和の治療が続けられていた。
未だ目を覚まさない斗和に対し、メルと亜里沙が回復魔法をかけていく。
「あれ、龍人族の殿様じゃん」
「ここに何のようですか?」
扉を開けたところにはクラスメイト達がいた。
彼らは我を訝しむ目で見てくる。
「我はそこのトワに用があるのだ」
「あいにくと、トワは寝てるよ。安静にしたいんで出てってくれませんか?」
斗和の近くにいる獣人族の少女が睨む。
そして、その横にいる鱗のある少女も睨んでいた。
シャガラは負けじと一歩部屋に入る。
そして、斗和が眠っているベッドの横へと進んだ。
クラスメイト達が止めようとしていたが、その手を弾く。
「父上、どうしてここにいるのじゃ!!」
シャガラが入ってきた扉からリーシャが登場する。
急いで来たのか、来ている着物は少し着崩れており、息も荒い。
その声を聞かず、シャガラは斗和の顔へと手を持っていく。
「止めないと、許さない」
コマチはその腕を掴む。
掴まれた腕は動かなかった。
「ええい、邪魔をするな。我は確認しなくてはいけないのだ。この者が――」
と言おうとした時、ドタバタと外から複数の足音が聞こえる。
その足音は確実にこちらへと向かって来ていた。
そして、到着。
それはシャガラを追いかけてきた家来、老中、大老だった。
「殿、ここに居りましたか」
「さあ、帰ってください。お仕事も溜まっております」
「私からこの者達に教えておきますから、ほら帰ってください」
老中の家来複数人に捕まえられて、連れていかれるシャガラ。
それを見て大老は呆れていた。
「お騒がせしましたな」
最後まで抵抗していたが、最終的には連れていかれた。
残った大老は話し出す。
「実はですな。その者が使った最後の技。それは通常龍人族しか使えないのです、それがなぜか人間族が使える。それに加え、我らの始祖である黒龍と同じ黒い鱗だったということが、我らの中で生まれ変わりなのでは、と思われまして」
その話を聞いて、クラスメイト達は違うと思った。
元々世界が違うところで生まれたのだ。
それは聞かされているリーシャ達も分かっているため、大老の意見を否定した。
「それは違うのじゃ」
「リーシャ様、なぜ違うと?」
「ふむ、それは言えんが、我が保証しよう」
「それは……証拠にもなりませんな。少しでいいのです、彼が起きたら伝えてください。生まれ変わりなのか、違うのかたしかめさせてくれ、と」
言うぐらいなら、と了承すると大老は帰って行ってしまう。
大老が帰ったのを確認すると、リーシャはすぐに斗和のそばへと侍り、その頭をなでる。
これで我と斗和の関係は国、種族に認められたのだ。
それが嬉しくて嬉しくてたまらない。
笑みを浮かべながら撫で続ける。
「トーワッ、フフ」
その様子を見ているメル、ダリル、ミアはジト目をしていた。
「くそっ、どうして我はこんな事をしているのか」
シャガラの前には決裁案件がたくさん積まれている。
その多くの巻物を処理するのが王としての役目なのだが、今はそんなことをしている場合ではないと思っていた。
「こんなことではありません。まだ来ますよ」
次々と文官達が積まれた巻物を持ってくるたびに眩暈がする。
終わることのない仕事に疲れも溜まる。
「では、私も溜まった仕事がありますのでさぼらずやってくださいませ」
そう言っ大老が老中を引き連れて部屋から出て行った。
殿様であるが、彼ら大老と老中には頭が上がらない。
殿様というのは最初武力によって選ばれるため、もちろん頭が足りない者がなることがある。
その場合教育が施されるのだ。
それをシャガラに対し、担当したのが大老である。
力ではない言葉で、地位で、周囲の環境で追い詰められ泣く泣く学んだのは未だに記憶に深く刻まれていた。
が、今その彼はおらず、いるのは格下の家来と文官のみ。
好機だ。
流石にもうあの者も起きたはずだし、ここは確認しなくては。
使命感に駆られ、家来達に止めるなというオーラを放ちながら、扉を開けた。
「どこに行こうとしているのですか?」
扉の前には机を置いて仕事をしている大老の姿があった。
「なぜ、こんなところで仕事をしているのだ?」
「あなた様が仕事をほっぽり出すのを防ぐためですな、で、どちらへ?」
「いや、少し厠へ行こうかな、と」
「そうですか、では私も着いていきましょうか」
ちっ。
この頑固じいさんは逃がすつもりがないらしい。
それから何度か抜け出せないか試すも、全て大老によって防がれるシャガラだった。
「う、うん?」
目を開けるとそこにはリーシャの顔がある。
その目は俺を見ていた。
「起きたかのう、婿殿」
「ああ、リーシャか。そうか、俺は勝ったのか?…………って婿?」
「そう婿殿じゃ、全龍人族が認める我が婿じゃ」
頭を動かすとそこには皆の姿があった。
寝ているのは分かるが、俺は今どういう状態なんだ?
また、リーシャの顔を見る。
「あ」
「くすぐったいぞ、トワ」
これ膝枕されているんだ。
分かった瞬間に恥ずかしくなる。
あ、暑い体が、顔が焼けるような暑さを感じる。
「あ、トワ。まだ立っちゃだめだよ」
ダリルが俺の頭を掴みその太ももの上へと頭を動かす。
次はダリルに膝枕される形になる。それも腕で起き上がれないようにロックされいている。
「あ、それは我の婿殿じゃぞ。我が膝枕するんじゃ」
「いやだ、私も膝枕するの。トワも私がいいよね?」
女性特有の体の柔らかさが後頭部から感じられ、より赤面する。
それからミア、コマチ、メルとなぜか順番に膝枕をされた。
それをフリジアただ一人だけ呆れた様子で見ているのだった。
「それでこれからなんだが……」
リーシャが連れていかれることは無くなったし、この国にはメフィルの魔の手も伸びていないようだ。
ならここにいる必要はもうない。
「それが、シャガラ殿様が斗和を調べたいんだって」
日向が発言する。
そのことに聞いてみると、どうもあのカヤさんのお兄さんと戦った時に使った黒龍化について、どうもシャガラ王は何か勘違いをしているだとか。
他のクラスメイトにも聞いてみたが、おおむね日向と言っていることは一緒だった。
「なんかのう、横で驚いている様子だったのう。トワは何か知らないのかのう」
「うーん、俺も分かんねぇ」
リーシャの親なので無碍にはしたくない。
まあ、儀式でのやり口はなかなか酷かったが。
「じゃあ、俺はその用事を終わらせてくるよ。その間旅をする準備をしてくれるか?」
「行かんでもいいのに……」
「まあ、娘も一緒に連れて行くんだから。挨拶もしたいしな」
そう言って、斗和は城へ向かった。




