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龍神の鱗

 カヤさんのお兄さんとの戦いは激化する。

 ほぼ追えることのない速度で動く俺に対し、彼は勘によって動きを最速にしていた。

 恐るべきは自分の勘を完全に信じて動いていることだ。

 またその勘もほぼほぼ当たっている。


 「よし、何となくだが分かった」

 『こいつ化け物じゃね?』

 「ああ、マジで化け物だ」


 強くなったと言ってもやはり自分より強いものはごろごろといる。

 それが神の力を使ったとしても勝てそうにない者達が。


 「なあ、その何だ。速くなるモードは維持しておけるんだろ、何でしないんだ?」


 それに対しては何も答えない。

 やったとしたら混乱するだろう。

 人間族なのになぜ龍化できるのか、とか。そしてなぜ黒い鱗をしているのか、とかな。

 そうなってくると余計にめんどくさい展開になりそうなんでしない。

 その俺の態度に、明らかに表情を変える。


 「へー、意地でもしないつもりなのかよ。つまんねぇな、なら引き出してやるよ」

 「!!」


 裾の中を探り、そこから小刀を取り出す。

 それも普通の小刀ではなく、何か魔力が籠ったもので見るからに強力な魔道具だ。

 小刀が引かれ、刃が見える。

 その刃は赤く染まっていた。


 「さあ、本気出さないと死ぬぞ」


 小刀を持った彼は、その小刀で切りかかると思いきやそのまま投げてきた。

 とても速い速度だが今の状態でも全然避けられる。

 よし、これで――――。

 避けて目の前にいる彼を攻撃しようとした時、すでに目の前からは消えていた。


 「なっ」


 ザクッ。

 背中が熱い。

 すぐさま前へと転がる。

 そして、後方を見るとそこにはカヤさんのお兄さんがいた。

 一体いつの間に…………。

 背中からは血がどくどくと流れ始め、収まる様子がない。

 キリンが警告する。


 『やばい、魔力で血を止めようとしているけど、止められないよ』

 「まじ、かよ」


 まだ傷口が浅かったのが幸いだったが、もし深く刺されていたら数分ももたず出血で倒れてしまっていただろう。


 「ほらほら、本気出さないと死ぬって言っているだろう」


 また小刀を投げる。

 避けると、また後ろに立たれており次は右腕を切られた。

 出血箇所が増えていく。

 だが相手がどうやって俺の後ろに移動しているのかが分からない。

 一瞬による黒龍化を使っているのだが、投げた時には目の前にいるのだ。

 そして避けた瞬間に、すでに後ろへと移動している。

 間違いなくあの小刀の力に違いないのだが、一体どういうことなのか?


 「まだ本気をださねぇか。じゃあ、もういいや」


 次は懐から同じ小刀を三本出してきた。

 長さ形も全く同じなため、同じ魔道具だろう。

 合計四本を投げてきた。


 「くっ」


 避けるのも難しくなってきたが、まだ避けれる。

 そして、俺は四回違う部位を切られた。


 「いぎっ、くそまじできついな」

 「おいおい強情すぎねぇか。そんなもんでリーシャを娶ろうってか?はっ、無理だね」


 また投げてくる。切られる。

 それの繰り返しだ。だが、分かったことがある。

 投げた小刀の内最後に投げた小刀を持っており、他は地面に落ちているのだ。

 そして、切られるところは投げられた小刀の近く。

 それが意味していることは……。


 「小刀の位置に移動している?」

 「おお、やっと気が付いたか。まあ、もう遅いがな」


 すでに俺の体には無数の傷があり、その全てから血が流れ出ている。

 血が足りず、目の前がぼやけ始めてもいた。

 やばい。本当にこのままだと死ぬかもしれない。


 『もういい、使っちまおう。体ももう限界だ』

 「そうか、そうだな。じゃないとリーシャはこいつのものになってしまう」


 キリンが体の中にある神力を活性化させる。

 活性化させられた神力は体全体を周り、癒えるはずのない傷を癒し、そして両腕両足を黒い鱗で覆った。

 もはや、ドラゴンと人間のキメラのような姿となった斗和を見て彼は笑う。

 それでこそ戦いがいがある、と喜んでいた。


 「はっ」


 小刀が飛んでくる。

 それを引き延ばされた時間の中で一つずつ弾いた。

 弾かれた小刀はステージの外へと飛ばされていく。

 そして、その中の二番目に飛ばした小刀を彼は握っていた。


 「そこ」


 無防備な横顔に蹴りを入れる。

 ゴッという音を立てて蹴られた頭が衝撃で歪んでいるさまが見えた。

 そして、彼は吹き飛ばされる。


 「!?」


 何をされたのか分からない様子で、顔からステージの外へと飛ばされる。

 鼻と口から血を噴き出しながらもステージぎりぎりで小刀をステージに刺して止まった。


 「へっ、やるじゃねぇ、かっ」


 すでに彼は上空へと飛ばされていた。

 いつの間にか蹴られた腹部は尋常ではない痛みを発し、胃に入った物を残らず吐き出す。

 上る上る上る。

 気が付けばステージは小さくなっていた。

 そこで翼を生やし減速させる。


 「あいつはどこに――――」


 背中が蹴られた。

 次は急速に落ちていく。

 ステージがどんどんと大きくなっていき、そのままステージに激突した。

 全身が痛い。

 彼にとってそれは久しぶりのことだった。

 もうすでに動けないほどダメージを負っている。

 まさかここまでとは。


 「はぁはぁ、どうだ、これで満足かよ」

 「満足ってもんじゃねぇよ。大満足だぜ」


 そう言って彼は保っていた意識を手放す。

 それと同時に斗和は神力の負荷により、前のめりで倒れた。


 「しょ、勝者、斗和!!」


 すでに斗和は普通の人間の姿へと戻っている。

 その倒れた勝者に龍人族の観客達は歓声を送るのではなく、疑問を呈していた。

 なぜ人間族が我らの力を使えるのか?

 あの黒い鱗は一体?

 ただ観客席には疑問が渦巻いている。

 その中、観客席から飛び出したメル達とクラスメイト達は斗和を控室へと運んでいく。

 すぐさま、亜里沙とメルの二人がかりで治療が行われた。











 「何だあの少年は?」


 シャガラは驚愕を隠せずにいた。

 間違いなくさきほどの魔法は我ら龍人族の先祖返りの魔法――龍化である。

 しかし、それを成功させただけではなく、その龍の鱗に問題があった。


 「龍神の鱗」


 それは龍の起源と呼ばれている存在の鱗と同じ黒。

 黒というのは龍人族にとっては神聖な色である。龍という存在を作り上げた龍神様は黒龍であったとされており、黒い鱗を持つ者はそれの生まれ変わりだと信じられている。

 そして、奴からは先祖返りで用いる魔力の反応が無かった。

 別の力が働いているようで、それがまたある意味龍神様の存在を思い浮かべる。


 「よし、トワの勝ちじゃな」


 横で座っていた娘がガッツポーズをしているのを見て、思う。

 こやつは分かっているのだろうか。

 彼が龍神様の生まれ変わりであるかもしれないことを。

 無邪気に喜ぶ娘を見て、ため息をついた。

 分かっていないのだろうな、事の重大ささえも。

 この儀式が行われている場で彼が現れたのはもしかすると、神のいたずらなのかもしれない。


 「シャガラ様、儀式の終わりの宣告をお願いします」


 横に立っている大老が儀式を終えよと言ってくる。

 前へと出て宣言した。


 「これにて儀式の終わりを宣言する」


 宣言後、シャガラはリーシャを置いてけぼりにし走る。

 そこにいるであろうトワという男を問いただすため。

 シャガラは控室へと向かった。



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