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カヤさんの兄との戦い

 充の次の相手は城に使える侍の一人だった。

 だが、先ほどの戦いで結構消耗したのか顔色は優れない。

 少しふらつきもある。


 「なあ、降参しないか?」

 「降参などしない」


 とても具合が悪そうなのだが、降参する気はないらしい。

 それにしても、もし俺をこの儀式から落とそうと画策するなら、どうして万全の状態で挑ませないのだろう。

 不思議に思ったが、今は戦いに集中することにした。


 「では、始めっ」


 老中の声とともに相手の侍は刀を上段に構え襲い掛かってくるが、明らかにその動きは遅い。

 その振り下ろされた刀を避け、そのまま横腹を蹴った。


 「がはっ」


 ステージのぎりぎりまで吹き飛んだが、そこで耐えたようだ。

 すでに魔力は無いに等しいため、彼は剣の技術のみで勝負している。

 諦めないことはいいことだが、あまり頑張りすぎるのもよろしくない。

 斗和はすぐに勝負を決めにいく。


 「これで、終わりだっ」

 「くっ」


 追い打ちをかけるように、連続で拳を振るう。

 それを必死に避け、捌き躱しているが体はもう限界だった。

 鳩尾にクリーンヒット。

 急所を突かれた侍はよろよろとよろけ、そのまま白目を向いて倒れてしまった。


 「おい、早く来てくれ」


 勝負の終わりを告げ、彼は運ばれていく。

 それを見届け、次の対戦相手の動きを見る。

 次の対戦相手はどちらが勝ったとしてもやはり侍。

 それもさきほどと戦った侍とあまり力の差が無さそうな二人だ。

 ゆえに今回も泥沼な戦いが繰り広げられ、満身創痍の一人が勝った。


 『これは次も普通に勝てそうだね』

 「相手には悪いが、まあ、勝てそうだな」


 そして、最後に残っているのがやはりカヤさんの兄のところだ。

 またもカヤさんのお兄さんは、戦っている侍に対し遊んでいる。

 相手は遊ばれていることに関して怒っているようだが、それでもまるで歯が立たないので、その顔は悔しさに歪んでいた。

 数分後。

 最終的には相手が体力を使い果たしステージに倒れたため、勝者がカヤさんの兄となった。


 「では、次を始める」


 休みなくまたステージに上がる。

 これで勝てたら、残るは二人抜きで優勝だ。

 目の前には先ほどまで戦って満身創痍の者がようよう立っていた。


 「なあ、降参しないか?」

 「誰がするものか」


 やはり降参をする気など無いようだ。

 戦闘民族である龍人族にとって、降参は屈辱的なことなのかもしれない。

 そして、戦闘が始まる。

 が、やはり万全ではない彼の動きはとても遅くふらついており、これでは戦いもままならないのではないかと思う。

 それでも剣をこちらへと振ってきた。


 「すまない」


 俺は威力を押さえて、その背中を蹴った。

 その勢いで頭から地面へと激突し、そこで彼は限界が来たようだ。

 ぴくりとも動かない。


 「…………」

 「救護班来てくれ」


 そして、俺の三回戦は終わった。

 その後の四回戦は、二回戦や三回戦で戦った者よりも万全の状態だったが、何とか倒すことができた。

 今回、戦いが長引いたせいで、俺の方が魔力が減ってしまっている。

 それで次の相手がカヤさんのお兄さんときた。

 どれも余裕そうに勝っている彼のことだ、あまり消耗もしていないと思う。


 「では、両者前へ」


 ステージに上がり、カヤさんのお兄さんと対峙する。

 身長が頭一個分ぐらい高く、遠くからでは分からなかったが、その肉体はとても鍛えられていた。

 目を合わせる。

 その目には闘志が宿っていた。


 「それでは始め」


 始まった瞬間に俺はバックステップし、下がる。


 「なっ」


 だが、すでに目の前に木剣が迫ってきていた。

 回避する。

 が、次が振られる。

 避ける。

 そして、流れるように次の攻撃が来た。


 「おお、これも避けちまうのかぁ。あんちゃんまあまあ強いじゃないか」

 「こっちはぎりぎりですよ」


 流れるような連撃に、俺は動体視力と反射神経を頼りに避けていく。

 が、それも息が続けばの話だ。


 「がっ」


 つい息継ぎのために動きが緩慢となってしまい、避けれなかった。

 直撃した右手はじんじんと痛む。

 あれが木剣で良かった。もしも真剣なら俺の右手は切り落とされていた。


 「まあ、でもそれぐらいだよな、はぁ、がっかりだぜ」

 「まだまだ」


 次は俺が攻撃をする番だ。

 俺は拳を最速で振るう。途中変則的に蹴りを入れながら攻めるが、何でもないことのように避けられる。

 木剣で受け流したりはしない、ただ避けられていた。

 くそっ。

 魔法を使う。

 残りがあまりない魔力を使い、徒手空拳に魔法もプラスして攻める。


 「おっと、これはまずい」


 まずいという割にはまだ、顔には余裕が見て取れた。

 木剣を使って魔法が弾かれる。

 ただの木剣なのに魔法を弾くという離れ技を目の前で見せられる。

 やばい、もうすぐで魔力が切れそうだ。


 「もう限界がきてんじゃねぇのか、おい」

 「いや、まだまだいけるね」


 ただのはったりだ。

 魔力はもうすぐで切れそうだし、体力もあまり残っていない。

 残るは神力を使うだけだが、使うと彼にはばれてしまうだろう。

 それはあまり良いことではない。


 「じゃあ、次は俺の番だなぁあ」


 より速くより鋭く剣が瞬く。

 内もも、左手、肩、まるで同時に攻撃されたみたいだ。

 彼の連撃は続く。

 あまりに速く今のままでは避けることも受け流すことも難しい。

 掠る、当たる、刺さる。

 木剣なのに切られたところ、刺さったところから血が流れた。


 「くっ」

 「おらおら、何で本気を出さねぇんだ、面白くないぞ」


 本気、つまり神力を出していないということがばれているようだ。

 しかし、使うわけには。


 「おいおい、俺に負けたらリーシャは俺のもんになるんだぞ、それでいいのか?」

 「良く、ない」

 『仕方ないよ、もうばれてるんだし、ちょっと使っちゃおう』

 「いいのか?」

 『リーシャちゃんを連れ戻したいんでしょ、ほらやるからね』


 魔力とは違った力が全身を駆け巡る。

 右手は黒く染まり、鱗を形成していく。

 爪は固く恐ろしく鋭利なドラゴンの爪となる。

 そして、俺は引き延ばされた時間の中にいた。その世界で彼が驚いているのが分かる。

 しかし、その剣の速度は衰えず俺の右足を狙っていた。

 弾く。

 そして、殴った。


 「がはっ、やっぱ隠していたじゃねぇか。なんだその腕はよう」


 すでに元に戻っている腕を指し、笑っていた。

 とてもわくわくしている感じが伝わってくる。


 「おいおい、俺達とまさか同族だったのかあ?そんな鱗見たことねぇが」

 「…………」


 瞬間的に腕を切り替える。

 そのたびに時間は伸ばされ、その遅くなった世界で俺は攻撃をすることができた。

 何度も繰り返し、対処しきれない彼は傷が増えていく。


 「いてぇな、だが、少しは慣れてきたわ」


 時間を引き延ばす。そして、攻撃しようとした時。


 「なっ」


 弾いた木剣が、次の時にはまた目の前に戻っていた。

 避け、横腹を殴る。


 「ぶふっ、まだ遅いか」


 恐ろしい、戦いの中で彼の速度が増しているように思える。

 不敵な笑みを浮かべ、立っている彼は楽しそうだ。


 「早くかかってこいよ、もうすぐ掴めそうなんだ」



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