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充との戦い


 「ねぇ、聞きたいことがあるんだけど……」


 隣に座っているカヤさんは俺の方を見る。

 その顔は何か考えているようだった。


 「答えれなかったら言わなくてもいいの、トワ君の体に何か違う力が働いていない?」

 「違う力?」

 「そう、魔力とは違ったものが見えたというか」


 それはたぶんだが、キリンのことを言っているのだろうか。


 『あまり、僕のことは話さないでほしい。この世界ではいない存在だから』


 キリンは俺達の会話を聞き、伝えないでくれと拒否した。

 確かにあまりしゃべってもいいとは思えない。


 「ああ、それは俺でも分からないんだ?」

 「分からないってなんだよ?」


 その会話を聞いていたのか、遠くの席から日向が話しかけてくる。

 他のクラスメイトも気にしていたようで、会話に参加してきた。


 「え、やっぱり斗和君って何か強いなと思ったけど、何か違う力とか持ってたわけ?」

 「すごい力なんだね~」

 「それな~」

 「そうなのか、それは俺もちょっと確かめてみたい気がするが」


 俺の仲間達は知っていることだが、クラスメイト達は確かにキリンのことえお教えていない。

 俺の様子に仲間達も隠すことにしたことが分かり、話を合わせてくれる。


 「そうなの?それは気になるわね。あなたなら分かるんじゃない?」

 「分からない、何か強い力」


 コマチを魔法生命体だと見破っているカヤさんは、訊ねるがうまくコマチも話を合わせてくれた。

 カヤさんはふーん、と言って話題を変える。


 「そうだ、リーシャちゃんの姿は見てくれた?」

 「はい……」


 それはこの儀式が始まる前の時の登場のこと、おめかしをしたリーシャが姿を見せ、その美しい姿により一層渡さないという決意は強まった。

 勝って、リーシャを取り戻す。

 次の昼から行われるのは、トーナメント戦。

 あらかじめあちらがくじを引いて、トーナメント表がもうすぐで張り出されるはずだ。

 なので、少し早めに昼ご飯を食べ終えた。


 「ごちそうさまでした、ちょっとトーナメント表を見に行ってきます」

 「分かったわ、次も頑張ってね」


 他のクラスメイト達からも応援を受けて、会場の方へと向かった。

 会場ではすでにたくさんの人がトーナメント表を見に集まってきている。

 俺は儀式の参加者なので、その場所から離れ控室みたいな場所で確認した。


 「おいおい、これはまた」

 『明らかに不正っぽい臭いがぷんぷんするね』


 キリンも自分を通して見ているのか、その声は呆れているようだった。

 トーナメント表の第一回戦の相手は。


 「充とか」


 まさかの仲間と一回戦でぶつかるとは、まあこれは操作された結果だろう。

 まあ、負けるわけにはいかないので、誰であろうと本気で戦って勝つのみだ。

 相手は勇者としてチート能力を持っているので、戦いづらいことこの上ないが、もしも負けそうになったときは神力の余波を使うしかない。


 『その時は任せといて』

 「まあ、それを使わないことには越したことないんだけどな」


 神力の余波は、元の神力とは違いそれの分泌物なので、神力が減ることはない。

 が、その余波でさえ俺一人で使うことはできないからキリンの助けが必要だ。

 壁に貼られたトーナメント表を眺めていたら、他の者も次第にこの控室に入ってくる。

 ほぼほぼ侍達なのだが、中にはその侍に打ち勝った者もちらほらといる。

 そして、俺の一回戦の相手である充も来た。


 「お、どうした、俺なんか見ちゃって」

 「トーナメント表を見てみろよ」


 充は壁に貼られているトーナメント表を見る。

 そこに記載されている自分の名前を確認し、そしてその相手を確認した。


 「げ、最初にお前と戦うのかよ」

 「そうらしいな」

 「まじかぁ、これはやばいな」


 アピールできる時が……などとぶつぶつ言っている。


 「よし、なら全力でぶつかろうぜ。そういえば斗和とはまだ、本気で戦ったこと無かったろ」

 「確かにそうだな」

 「なら、いい機会だ。俺は本気を出す。お前も本気を出せよ」


 そう言って俺から離れていった。

 そして、離れた場所に座る。

 今から戦う相手であるため、これから俺を倒すための準備をするのだろう。

 このトーナメント戦は実際の武器の使用が可能とされている。

 殺すのがだめなのは変わりないが、刀や剣などの武器が使用されるとなると戦いはより一層危険なものになる。

 充も自分の愛剣を手入れしていた。

 他の参加者も刀を砥石で手入れしている者や、ウォーミングアップしている者もいる。

 俺は剣などは最近めっきり使わなくなった。なので、今回のトーナメント戦は慣れている魔法と拳で戦おう。

 一応の備えとして籠手は装備しておく。


 「よし、では集まったか?」


 皆が準備している中、この儀式の運営をしている侍が控室に入って来た。

 参加者は全員揃っているようで、これから一回戦が始まるようだ。


 「今回は一回戦を同時に行うことにした」


 最初の一回戦は同時に行い、次の二回戦目からは一組ずつ行われる旨、説明を受ける。

 もうすでにステージの用意はできているらしく、準備のできた人はステージへと向かってほしいと言われた。


 「まあ、俺はそんなに準備も無いし行くか」


 俺は充が来ていないのを確認して、自分のステージへと向かう。

 さきほどまでバトルロワイヤルが行われていたステージは片付けられ、そこにはバトルロワイヤルの時よりかは一回り小さいステージが何個も置かれていた。

 その一つに俺と充の名前が書かれたステージがある。

 張られた紙には「トワvsミツル」と書かれていた。


 「よし、ここだな」


 ステージに登ることはせず、相手である充を待つ。

 俺がステージに到着して数分が経ち、続々と他の参加者がステージの方へと来る。

 その中に充もいた。


 「遅くなったぜ」

 「ああ」

 「負けても恨みっこなしだぜ。その場合リーシャちゃんは……」

 「そっちこそ、負けて泣くなよ」


 リーシャを渡しはしない。

 それはクラスメイトであっても同じだ。

 これは俺の独占欲という薄汚いものだが、そう思ってもなお消えない。


 「では、全員揃ったな。では第一回戦を開始する」


 ステージへと上がり、互いに距離を取る。

 充は最初から二本の剣を構えた。

 それに対し、俺は拳を前へと構える。


 「それでは第一回戦、開始!!」


 ばっ、と飛び込んで来たのは充の剣だった。

 すでにその剣には雷の魔法が込められており、少しでもかすれば感電してしまう。

 最速で終わらそうと考えていた充だが、それは通用しなかった。


 「やっぱり強いな、斗和は」

 「危ねぇ」


 危機一髪寸でのところで避け、そのがら空きの胴へと右ストレートを打つ。

 充はその右ストレートに対し、もう一方の剣をステージへと突き刺し無理やり回避した。

 次は俺が攻める番だ。

 回避したところを追撃していく。

 連続で拳を振り、相手に攻撃をさせる隙を失くしていく作戦だ。

 俺は充の確かな能力を知らない。

 どのような技を使ってくるのか分からない以上、攻撃はさせてはいけないのだ。


 「くそ、早えな」

 「まだまだ、こんなもんじゃないぞ」


 より攻撃速度を早くする。

 ついには掠るようになってきた。


 「ちょ、まじ早いって」


 と言いながらも致命傷だけは避けきれているのは、さすがというしかない。

 このままではらちが明かない上に、まだスタミナは残しておきたいので、攻めるのをやめて距離を取った。


 「ふぅ」

 「おおお、危なかったな――――」


 そして、距離を取ってから風の弾丸を放つ。

 それは音もなく充へと飛んでいく。

 普通なら知覚されにくい攻撃なのだが、それを充は剣で切った。


 「おっと、そういうわけにもいかねぇぜ」

 「無理だったか」


 まあ、この程度でやられるわけはないと思っていたから当たり前だ。

 次々と風の弾丸を放っていく。

 時に跳弾させながら、違う方向から向かう。


 「おっと、次は魔法ってか。ま、これも俺には効かないね」


 彼の職業である魔法剣士は、魔法と剣技両方を極めんとする職業だ。

 この世界の人にとっては魔法と剣技という器用貧乏な職業であるとして、やはり純戦士や剣士などには剣技で負け、魔術師などには魔法で負けることが多い。

 ではそれをチートみたいな異世界人がなったとしたら。

 その職業の器用貧乏な部分は無くなってしまう。

 その全てで勝ってしまうのだ。


 「そして、ここから本番だぜ」


 充は剣を鞘はとしまう。

 そして、横に手を伸ばしたと思ったら、空間が割れ、中から刀の柄が現れた。

 禍々しい魔力を帯びたその刀を空間から引き抜く。

 これはやばそうだ。

 その刀に秘められた力が恐ろしいことは見たら分かる。


 「さあ、行くぜ」


 充はその刀から黒い物体を吐き出した。



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