勇者終了
2週間後に話を出すと言っていましたが、あまり日が空きすぎてもいけないと思ったので、投稿しました。
短いですがどうぞよろしくお願いします。
それからマルバーン王との謁見は淡々と進んだ。
マルバーン王は戦争の最前線へと行っていたらしく、王に付いていった兵士の一人が謁見の間で報告をしていた。
内容としては、吸血鬼族や悪魔族などの魔族と呼ばれる者達が内戦を終わらせ、協定を結んだという事や、エルフ族やドワーフ族などの妖精族は魔族との戦いに終止符を打つために力を蓄えているなどの情報を知ることができた。リーシャと同じ龍人族は相変わらず不干渉を続けているらしい。
「ご報告は以上です」
報告していた兵士は言い終え、自分の持ち場に戻る。
王が立ち上がった。
「今回も他種族と協定を結ぼうとしたのだが、それは無理だった。このままでは、いつ火の粉が降りかかろうと、我々人間だけで対処するのは難しい。だが、ここに勇者という救世主が現れた、彼らがきっと我らを救ってくれるだろう」
希望を持たせるため、勇者を目立たせ謁見は終了となった。
そして、斗和達が謁見の間から出ようとしていた時、斗和だけが王にここに居るように言われる。
一体自分に何の用なのだろうか、と疑問に思い王が話すのを待つ。
クラスメイトや騎士団の人達が謁見の間から居なくなったのを確認すると、王が口を開いた。
「勇者トワ。お前のステータスは聞かせてもらっているが、どうやら一般人とさほど変わりがないようだな」
「……」
話始めがステータスのことからで、予想外だったために受け答えができなかった。
王は続ける。
「それでなんだが、お前は勇者としてふさわしくないという意見が貴族や宰相の方からきていてな、反発もあり、儂も戦力になるとは思えん。なのではっきりと言うが、今からお前は勇者ではないことにする」
「は?」
「それは横暴じゃないのか」
言われたことに戸惑っている自分に対し、リーシャは王に対し直言する。
ミアも分かりにくいが、王を睨んでいるのだろう。顔を王に向けたままだった。
横を見ると、第一王子のリビル・マルバーンがやれやれと頭を横に振っている。
「所詮、君達の力じゃ、何の役にも立たないということが分かんないのかな」
リビルは小さな声で言ったのだろうが、数人しか居ないこの部屋でそのつぶやきは響き聞こえてくる。
確かに自分は非力で、この世界ではあまり戦力として役に立たないだろう。しかし、役に立たないからいらないと言われるのは、呼ばれたこちらとしてはあんまりだ。
「これは決定事項なので、覆すことはできない。勇者じゃないため王城には戻れないが、数日間は暮らせるよう金銭は与えてやろう。そのあとは、冒険者になるなり、商人になるなりしてどうにかして暮らせばいい」
もう話は終わりだというように、立ち上がりリビルと共に謁見の間の扉の方へ向かう。
そして、茫然としていた自分は反対の扉から入ってきた兵士に連れられて部屋へと戻された。