儀式~バトルロワイヤル~2
老中による戦闘開始の掛け声によって、ステージにいる全員が動き出す。
俺以外全員が、矛先を俺に向け木剣を振るってきた。
「うおっ、あぶねぇ」
拳が振りかぶられる。
木剣が横一文字に振られる。
蹴りが飛んでくる。
それを必死に避けながら、一人また一人と着実にステージから蹴飛ばしていく。
「ちょこまかと」
「しぶとい」
この世界に来て諦めは悪くなったかもしれない。
今回もリーシャを諦めるわけにはいかないのだ。
なので、こいつらにも退場願おう。
「うあっ」
「がっ」
「まだまだ、来いよ」
数は減っているのだが、中にはとても強い奴が3人ほどいる。
そいつら3人は連携の取れた動きで俺の死角から攻撃を仕掛けていた。
『後ろから一人来たよ』
そのたびにキリンに教えてもらい、何とか対処できていた。
まだこのバトルロワイヤルで実力を見せるわけにもいかないので、その3人を除いた他の奴らを優先的に処理していく。
それから数分して――――。
「おしっ、これで後3人」
いかにも雰囲気からして強者のオーラを身にまとっている3人だけが残った。
それも一人はなぜか俺に殺気を向けている。
恨まれることなんてしてないのにな。
「やはり残るか」
「仕方ないね、俺達でここでドロップアウトさせてやらなくちゃな、面倒だ」
「殺す、すぐ殺す」
フーッフーッ、と三人目は話も通じないほど憤っている。
一体何が彼をそこまでにするんだろうか。
よく分からないが、倒すことには変わらないので戦闘に集中する。
「参る」
「いざ、尋常に勝負だぜ」
「殺す」
三人の内二人は左と右に分かれ、そして一人正面から切りかかってくる。
『右、左、正面』
キリンの指示通り向かってくる木剣をさばいていく。
数秒の差ではあるが、その数秒で避けれるか避けれないかが変わってくる。
そして、正面のやつは殺すしか言わない凶戦士かと思いきや、その剣術はしなやかかつ繊細な動きをしていた。
完全に怒りに呑まれているというわけでもないのだろう。
もし、怒りという感情によって剣を振っているだけなら簡単だったろうに。
ここはキリンの指示に従いながら逃げに徹していた。
「早く、倒れてくれよ」
「ふん」
「殺す」
「うるせぇ、おらぁ」
少し荒くなったが拳に風魔法を纏い、風の刃を拳の外側に固定する。
まるで爪のような感じになっている風の刃は木剣に傷をつけていく。
この魔法は切断するのに長けているはずだが、それでも木剣が切れないのは何か仕掛けがありそうだ。
両者どちらも決めてにかけ、戦闘は長引く。
「くそ、ちょっと魔力が心もとないな」
「我もまずいな」
「殺す」
長引く戦闘で魔力も多くを使い、俺もそこまで残っているわけではない。
それはあちら側も同じ。
ここまで長く戦闘を行ってきたが、それによって俺は有利となる。
「どうだ、準備はできたか?」
『ああ、データはばっちりとれたぜ。後はまかせな』
心強い言葉とともに、俺の体に違う意志を持った者が侵入した感触があり、そこで俺は体の操縦権を引き渡した。
俺の体を動かすにはキリン。
「お、この体いいね」
『あんまり無茶するなよ』
「大丈夫だって、逆に俺が動かした方が体に負荷はかからないさ」
「何一人でぶつぶつ言っているんだ?」
「いや、何でもない。さあ、かかってこいや」
絶対に俺はしないような挑発行為をし、特にその殺す殺す言う子に対し、不敵に笑った。
それが気に食わなかったのか、今まで連携hが取れてた動きから一人抜け出す。
それも連携を取るために抑えていた力を発揮して。
すさまじいほどの速さだった。
俺には何が起こったのかあまり分からないほど。
「くっ」
だが、そいつは切った後の格好のまま倒れてしまった。
蹴ってステージから降ろす。
「な、ぺシルの攻撃を避けた上、一撃入れやがった」
「こいつ化け物か」
「なぁに、動きが分かりゃあここまでの速度なら対応できるさ」
後の二人の内、一人落とせばそれで俺の二回戦へと進出確定だ。
さてどちらにするべきか。
相手の侍二人は後がないためか、連携を無視して自分の最大速度で攻撃を仕掛けてきた。
それも今までのように死角から狙うのではなく、真正面からの攻撃だ。
それこそキリンが負けることのない攻撃だ。
すぐにいなされ、拳を腹に入れる。
「ぐっ」
「げっ」
みぞおちと、肝臓の位置に拳をねじ込みその痛みに悶絶していた。
後はどちらかをステージの外に落とすだけだ。
「どうするよ」
『右でいいんじゃないか?』
特に理由はないが、右の方をステージから落とす。
わずかな抵抗もできずにそのままステージから落ちてしまった。
「勝負あり、そこまで」
老中が終わりを宣言した後、すぐに救護班が駆けつけて怪我人を運んでいく。
少しやりすぎたかもしれないが、まあ相手も汚い手を使ったんだから悪いとは思わない。
そこでキリンから俺へと主導権は渡された。
「ふう、やっぱり自分の体が落ち着く」
『久々にトワの体を動かせて楽しかったよ』
「俺は変な気分だったけどな」
前の時はあんまり覚えていないが、今回は鮮明に自分の体が乗っ取られるという体験をした。
あまりいいものじゃない。
だが、今回のようにキリンに操ってもらった方が良いこともあるので、そんなことも学べた戦いだったなぁ。
担架で運ばれながら、まだ俺を睨んでいる龍人族にとっては最悪だっただろうが。
そこで、一回戦目も終わったというので、休憩の時間に入った。
その休憩時間中にステージも直すらしいので、それまで町で昼食を食べてこようと思う。
「すごいすごい!!」
「トワさん、お疲れ様です」
「お疲れ」
「お疲れ様です!!」
ステージの置かれた場所から外に出ると、ミア達が俺を待っていた。
ダリルは興奮したようで凄かったと何回も言っている。
カヤさんも待っていてくれていたようで、おめでとうございます、と言ってくれる。
「おら、見たかよ。俺の強さを」
「くっそー、お前のせいでいっぱい狙われたじゃねぇかよ」
充と日向もちょうど出てきたところだった。
そっちにはクラスメイト達が待ってくれている。
「まあ、日向はしょうがないよ。あんなに群がれたら敵わないもん」
「それな~」
「ほら、元気だしなさい」
「ちぇっ」
三人娘にも励まされながら、俺達と昼食を食べに行く。
宗太は日向が負けたことによって余計に落ち込まないように、話を続ける努力をしていた。
まじ、保護者。
昼食はカヤさんおススメの店で決定し、各々席に座る。
なぜかカヤさんが俺の横に座った。
それをメル達は不思議そうな顔で見ている。
「さあ、座って座って。ここの料理はすごくおいしいから」
そんなメル達の様子に気づかずか、もしくは気づいても無視した様子で着席を急かした。
料理が運ばれてくる。
これはまた、正月とかで見そうな料理ばかりだ。
お腹が空いていることを忘れていたのか、今になってお腹が鳴りだす。
食事に挨拶を済ませて、さあ食べようというところで。
「ねぇ、聞きたいことがあるんだけど……」
横に座っているカヤさんから話しかけられた。




