龍人族の町へ
ドヴェルグタウンを立った斗和達は次の目的地へと向かう。
「本当に行くのかのう」
「もちろん、行くさ。これだけ他の国で異常事態が起きているんだ。なら、行くしかないよ」
「むぅ」
リーシャはあまり乗り気ではない。
それに対し、リーシャ以外は乗り気だ。
「楽しみだぜ」
「俺もリーシャさんと同じ種族だぜ。可愛い子はいるかな?」
日向達が話しているとおり、次に行くところはリーシャの故郷である龍人族の国だ。
リーシャが言うには国というより、一つの町らしい。
龍人族は数が少なく、希少な種族だ。会ったことがないまま死ぬ人もいるぐらい。
「しかし、まだ着かないのか?」
宗太が息を荒げながらも後ろから着いてくる。
限界そうだ。
「ちょっと休むか」
「すまない」
今俺達は龍人族の町へと向かうのに、山越えをしている。
ちょうどドヴェルグタウンのあるところから北上しているところだ。
「ふう、あついな」
フリジアはヘカトンから下りた。
それを見て、三人娘はいいなぁ、と見ている。
それをフリジアは中の温度がどうとか、湿度がどうとか説明していた。
ヘカトンは移動は楽なんだけど、車のようにエアコンがついてはいないのだろう。
北上しているのだが、季節のせいか高い気温は体力を削る。
「でも、私は自分の足で歩く方がいいな」
「ダリルは乗り物嫌いだもんな」
ダリルと旅をして思ったことだが、ダリルは乗り物に乗ると確実酔う。
なのでダリルと旅をし始めて歩きが多くなった。
まあ、ミアとかはこれも訓練だとか言って喜んでいたからいいんだけど。
俺達は結構歩いたり走ったりと旅をして慣れているが、クラスメイト達はこの山越えで多大な汗を掻いていた。
「てか、まだ着かないの?」
「まだじゃ、まだ後山を2個か3個くらいは越えねばいかんのう」
「「「ええぇぇぇ……」」」
三人娘達は露骨に嫌そうな顔をしていた。
宗太は顔面蒼白だ。
日向と充はまだ大丈夫らしく、まだ龍人族の女性の話をしている。
「というか、龍人族の人達はどういう生活をしているんですか?」
メルがリーシャに尋ねる。
「ほぼ自給自足じゃ。それでいて彼らは力が全てという種族じゃからのう、帰ると面倒なことが起きる予感しかしないのう」
「ぶっ叩いて従える?」
「まあ、コマチが言うとおりじゃな」
そうなのか。
結構物騒な種族なのかもしれない。
いきなり戦闘とかならないように、今回リーシャには頼らなければ。
それから10分ぐらいして、また歩き始める。
フリジアはヘカトンに乗り着いてきた。
歩き山を下り、また登る。
同じ種類の木が山の斜面に生えており、方向感覚などが狂わされる。
歩き始めて時間がどれくらい経ったかもあやふやだ。
「まだ、着かない、のか」
「リーシャ、龍人族の町はこの方向で会ってるよな」
「あってるはずじゃが」
「でも結構山を歩いてきたはずなんですが」
メルは後ろの風景と前の風景を見る。
後ろには俺達が歩いてきた山が見える。
そして、前にはまだ続く山々が。
「何か一生着かない気がしてきたんですけど」
「それな~」
「ちょっと、疲れたぁ」
三人娘達も長い時間歩いたために疲れが出始めている。
フリジアはヘカトンのコックピットを開けて涼んでいた。
一体いつ着くのだろうか?
そう思った時、リーシャが横で声を上げた。
「一生着かない…………そうじゃ、トワ。一生着かないのじゃ」
「うん?一生着かないってどういうことだ?」
「言葉通りこのままじゃ一生歩いても着きはしないのじゃ」
リーシャはこの道を知っている。
それは町で暮らしていた時に聞いたことがあった。
龍人族が珍しいといわれる理由の一つに、滅多に山から下りてこないということもあるが、それともう一つ龍人族の町に行けない結界が張られているのだ。
そのため、外から余所者が来るのを防いでいる。
その結界は今まで一度も破られたことが無いのだ。
それもそのはず、外から入りたかったら龍人族と仲良くならないといけない。
そのことを斗和達に伝えた。
「入る方法を思い出した」
「どうするんだ?」
「うむ、まずじゃがこの中で行けるのはトワと我だけじゃろう」
まず、行くために龍撃魔法を使えなくてはいけない。
その際に誰か一人背負っていたらその者も着いていけるだろうが、それでも斗和とリーシャ、他二人と四人しか入れない。
「この結界じゃが、龍撃魔法で壊すことができる、じゃが、壊してもすぐ元に戻るため入れるのは壊した本人ぐらいじゃ」
「じゃあ、俺達は入れないのか?」
「うそだろぉ、楽しみにしていたのにぃ」
「いや、入れんこともない。確か内から誘い込むことができたはずじゃ」
で、ここで龍人族の特性の話に戻るが。
龍人族は力こそ至上という種族だ、ゆえにもしも頼みごとをしようなら、始まるのは戦いだ。
それで勝てたらいいのだが。
「我でも龍人族の中では弱い方じゃからのう。まあ、今強くなってどうか分からんが」
「絶対戦わないといけないのか?」
「絶対じゃのう。では、我に勝ってみよ、と言っているのが目に浮かぶわ」
遠い目をしてリーシャは言う。
それが嫌でリーシャは飛び出したのかもしれないな。
だから、最初の方も行くのを渋っていた。
「でも、全員が行くにはするしかないよな」
「そうじゃのう、そこら辺にいる雑魚を相手した方がよっぽど楽じゃからのう。相手にするなら小作人が良いのう」
「分かった。じゃあ、入り方を教えてくれ」
リーシャは龍撃魔法を発動させる。
両腕を龍の物に変え、翼を生やした。
そして、高く飛び上がる。
俺もキリンに制御を任して、空へと飛びあがった。
「トワ、ここに結界がるのは分かるかのう」
「うん?」
『トワ、見えないと思うから、少し待ってね』
キリンが体の魔力を集め、目の前にレンズのようなものを作る。
そのレンズ越しに見ると、そこには透明の薄い膜が張っていた。
これが結界か。
「これを龍撃魔法で攻撃すれば破壊することができるのじゃ」
「少しやってみてもいいか?」
リーシャがいいと言ったので、その腕で殴ってみる。
バンッという音とともに、小さな穴が開いた。
だがこの穴では人一人入ることができない。なので、次は思いっきり殴ってみる。
次はぎりぎり一人入れるかな?ぐらいの穴ができた。
結構通るには力が必要そうだ。
「おお、さすがトワじゃのう」
だが、次の瞬間には穴はすっかり修繕されてしまう。
穴を開けたらすぐに入らないといけないようだ。
リーシャはコツを掴んでいるのか、すぐに俺と同じぐらいの穴を開けた。
「では、向かうとするかのう」
「ああ」
俺はもう一度思いっきり殴り、結界に穴を開ける。
そして、次は閉まらない内にその結界の中へと入っていった。
結界の中は変わらず山が続いているが、その山と山の間に建造物が見える。
よく見ると動く影も見えた。
「あそこが我の故郷――ヒイロじゃ」
「ここが」
俺はリーシャとともにその町へと降りて行った。




