知らぬ間の激闘の末
フードの男と再度相対して分かる。
やはり、この男の魔力量は桁違いで、またその雰囲気が他と全然違う。
まさに戦いのプロというしかない。
「しっ」
リーシャ向かって剣が振られる。
それを何とか回避するが、次にはもう一方の剣が迫ってきた。
ダリルが後ろから攻撃する。
が、地面からゴーレムの腕が生え、軌道をわずかばかりそらされてしまった。
三人という数の利を生かして戦っているはずだが、追い詰められているのはこちらの方だ。
「ダリルっ」
「分かりました」
メルがダリルを呼び、目で合図する。
その意味を読み取り、ミアはその場を離れた。
フードの男はそのやり取りから危険を察知する。
見えぬ風の刃がフードの男がいた場所で吹き荒れる。フードの男は回避するとともに、ダリルに向かって攻撃を開始していた。
「狙いどおり」
ダリルがにやっと笑ったかと思うと。
後方に回避していたダリルが空を蹴り、逆に接近。
思いっきり胸のあたりを殴り飛ばした。その衝撃で着ていたコートがはじけ飛ぶ。
「何が」
今までフードの中で隠されていた顔が晒される。
顔には金属で作られたお面があった。そして、体全体がそのお面と同じような素材でできた鎧を着ている。
コートは切れたが、その鎧は無傷のようだ。
「まだまだ、私も精進せねば」
ダリルは相手が驚いている隙にそこを離れ、次はリーシャがその男を殴った。
反応が遅れた男は吹き飛ばされる。
が、すぐに勢いを失くして立ち上がった。
「ふむ、なかなか妙な技を使いよる」
まだ余裕のある様子だ。
「我はまだ戦っていたいが、この作戦は失敗するわけにはいかん。本気を出させてもらう」
その男とリーシャ達の激戦が始まった。
その頃、斗和達は。
いつまで経っても来ない銀の魔物の襲撃に勝利ムードで染まっていた。
斗和も少し警戒のランクを下げる。
「終わったんだな」
「うん」
「なかなか強かったですね」
ミアはそれでもクレイモアで潰したり、切ったりと余裕な感じだったように思える。
「それにしても、これは一体誰の仕業なんだろうな?」
「分からない。ただドワーフということは確実じゃろうな」
後ろから声をかけられ、振り返るとそこにはデックさんがいた。
デックさんはお酒を飲んでいるようだ。
勝利したことでドワーフ達はお酒を飲んで祝っているらしい。
なんとも種族柄が出るというか。
死んでしまった仲間のヘカトンは無駄にせず、またリサイクルするらしく回収し、仲間の遺体はすでに埋葬済みだ。
「斗和も飲まんかね?」
「いや、結構です」
「そうかのう、おいしいんじゃが」
ドワーフのお酒はアルコール度数がとても高いと聞く。
俺が飲んでしまったらすぐに倒れてしまうだろう。
「うん?」
デックさんと話していたら、コマチが右を向いた。
気になり、俺とミア、デックさんもその方向を見ると遠くからこっちに向かってくる影が見える。
「あれは、五長老どもか」
さきほどまで宴会状態だった雰囲気が、しんと静まり返る。
こちらに向かって来ているというのは、何か用があるのだろう。
デックさんの目の前で五長老達は止まった。
「このたびの協力はご苦労だった」
「ああ」
「この際だから言っておくが、我らと手を組まないか?」
「それは断っておく。我らは貴様らみたいに戦争をしたいわけではない」
「そうか」
それだけ言い残し、彼らはドヴェルグタウンの入口へと向かって行った。
さて、俺達も帰りますか。
デックさん達はヘカトンに乗り、俺達の速度に合わせて付いてきてくれた。
そうやってドヴェルグタウンの入口に向かっている最中だった。進行方向で大きな音がなる。
それも何回も聞こえてきた。
これは、何の音だ?
「デックさん、これは一体」
「分からん、だが――――」
その時、今ままでで一番大きな音が鳴り響いた。
その音は爆発音のように聞こえる。
もしかしなくてもこれはドヴェルグタウンの入口から聞こえてきた音だ。
走る。
ドヴェルグタウンの入口にはメル達がいるため、心配だ。
その後をヘカトンに乗ったドワーフ達もついてきた。
そして、数分も経たずに入口に着く。
「一体、どうなっているんだ」
目に映った光景に驚く。
クラスメイト達は全員地面に倒れ伏し、メル達も例外なく倒れている。
そして、ドヴェルグタウンの入口にある大きな門が破壊されていた。
「おい、メル、ダリル、リーシャ、大丈夫か!?」
まず近くにいたメルのところに駆け寄り、その体を抱き起す。
まだ心臓は動いてる。
死んではいない様子で、ただ気絶しているだけのようだ。
コマチとミアが確認してくれたところ、リーシャもダリルも気絶しているだけだったらしい。
「おい、こっちの人間族も生きてるぞ」
どうもクラスメイト達も生きていたらしい。
一体、誰がこんなことをしたんだ。
残っている魔力残滓からコマチがたどったところ、リーシャ達を倒した人物はドヴェルグタウンの中へと入っていったらしい。
まずい、中には戦えない人達が。
デックさんもそのことに気が付いたのか中へと入っていく。
俺もリーシャ達を背負って追いかけた。
「う、嘘だろ」
そこは地獄だった。
ドヴェルグタウンの半分が天井の崩壊により潰れており、いつもは賑わっているはずの町は一つの明かりもついてはいない。
そして、生きている者の気配がないのだ。
「もしかしたら生き埋めになっている奴がいるかもしれねぇ、探せ」
デックさんが指示して、俺も加わり探す。
そこで出てきたのは死体の山だった。
見た時は口からひっという声が漏れた。赤く染まったドワーフ達が束ねられている。
あまりに惨い。
それを見たドワーフ達も言葉を失っていた。
「おい、おい、生きてるよな。返事をしてくれよ」
彼はその死体の山の下で埋もれていた女性のドワーフに声をかけていた。
どうも妻だったらしいそれは、すでに事切れておりただ上を見上げている。
友人、家族、彼女、妻、全てが失われていった瞬間だった。
「もしかしたら、まだいるかもしれない」
そういえば先に帰った五長老達がいないのも気になる。
その死体の山を放置するわけにもいかないので、それはデックさん達にお願いした。
俺達はその間、瓦礫を取り除いていく。
もしかすると何かが残っているかもしれない。
リーシャ達を無事だった宿屋のベットに寝かせて作業を開始する。
「ここは」
作業を開始して30分ほど経った頃、それは見つかった。
より地下へと繋がる階段。
確かここは牢屋へと繋がるところだった。
逆にここは中に空間が出来ているので崩壊から逃れることができたのかもしれない。
降りてみる。
中は真っ暗で何も見えず、魔法によって辺りを照らす。
牢屋の中にいる犯罪者達を見る。だが、彼らは上にいた死体の山と同じく何者かの手によって殺されていた。
ここにも生存者はいないか。
と思っていた時。
「あ、がはっ」
奥の方の牢屋で声が聞こえた。
急いでその声の聞こえた牢屋へと向かい、照らす。
そこには仰向けに倒れたドワーフの少女がいた。確か、この子は俺が戦った若者ドワーフのリーダーだったと思う。
「う、ううん。何だ?」
「おい、動けるか」
「ああ少し足をやられているっぽいって、お前はっ!!」
俺の顔を見るなり、手を使って距離を取った。
「何でここにいるんだ。っておいなんでこんなここは荒れているんだ」
「何にも知らないのか?」
「俺が知るかよ。足も使いもんにならねぇ、くそ」
ここはまだ瓦礫の下の空間であるため、崩れてきてもおかしくない。
すぐさま牢屋を破壊する。
固かったが何回か殴ったら壊せた。
「お、お前何してんだ。てか、これ壊せるなんて化け物か」
「肩を貸してやるから来い。ここは危ないから」
「だ、誰がお前の力なんて借りるか」
強気の発言とは裏腹に、今まで感じなかった足の痛みがきたのか、少し涙目となっている。
ミアはその様子に怒っていたが、それでも連れて行くことは変わらないらしい。
コマチは無関心だ。
「だいたい、てめぇのせいでこんなじめじめしたところに――――」
「分かった分かった、じゃあ、このじめじめしたところからおさらばしようか」
「あ、ちょ」
有無を言わせず背負う。
背負った時足に響いたのか、うっと声が漏れる。
「ちゃんと捕まっとけよ」
「な、うるせぇ。お前になんで助けられなくちゃいけねぇんだ」
「崩壊する危険があるからな。急いで出るぞ」
「おい、人の話を聞けよ」
そのまま階段を上がっていく。
そして、背負ったままデックさんがいるところまで向かった。




